
はじめに
令和7年度補正予算で創設された「食品産業省力化投資促進緊急対策事業」の一環として、「省力化技術導入支援事業」という補助金制度が始まっています。
これは食品製造業者向けの緊急支援策で、工場等の生産現場における労働力不足の解消や生産性向上を目指し、最新の省力化技術(AI・ロボット等)の導入を後押しするものです。
特に、広島県で食品製造業を営む中小企業の皆様にとって、国の補助金・助成金制度を活用して事業拡大や地域活性化につなげる絶好のチャンスと言えるでしょう。この記事では、この補助金制度の概要とポイントを分かりやすく解説し、具体的な活用イメージや申請手順について説明します。締切が迫っていますので、該当する食品製造業者様はぜひ参考にしてみてください。
概要
① 補助金額: 本補助金で支給される額は最大4,000万円(40百万円以内)です。企業が計画する設備投資額に応じて、その一部を上限額まで受け取ることができます。
② 補助率: 補助率は1/2以内(経費の50%まで)に設定されています。つまり、対象経費の半額を国が補助し、残り半分は事業者が自己負担する形になります。例えば対象経費が8,000万円の場合、最大限の補助を受ければ4,000万円が補助され、自己負担も4,000万円となります。
③ 補助対象経費: 補助の対象となる経費には、省力化に資する機械設備の購入費や設置費、導入に伴うシステム構築費、専門の技術者に支払うエンジニア費用などが含まれます。
要するに、新しい機械装置やそれを稼働させるためのシステム・人件費といった、導入に必要な経費が幅広くカバーされます。ただし注意点として、リース料やレンタル料は補助対象外です。設備は購入が条件であり、レンタルでは補助を受けられない点に留意しましょう。
④ 補助対象者: 本事業の対象となるのは食品製造事業者です。つまり、食品や飲料の製造・加工を行う企業が応募できます。業種や企業規模に明確な制限はなく、大企業から中小企業まで幅広く該当しますが、特に業界のモデルケースとなり得るような意欲的な食品製造業者が想定されています。
⑤ 申請期限: 公募期間(申請受付期間)は2025年12月16日(火)から2026年1月15日(木)17時までとなっています。応募書類は締切日の17時必着で提出しなければならず、時間厳守です。年末年始を跨ぐ短い募集期間ですので、実質的な準備期間は約1ヶ月弱しかありません。お正月休暇等で事務が滞りがちな時期でもありますから、余裕を持った行動が必要です。
⑥ 申請要件: 補助を受けるためには満たすべき要件があります。第一に、導入する設備やシステムがAI・ロボット等の新技術であること。
具体的には、その機械設備が販売開始後4年未満の新しい技術である必要があります。
古いモデルでは対象外となるため、最新の技術動向を踏まえた投資が求められます。第二に、その導入によって生産効率が従来比で3%以上向上する見込みであること。3%以上の効率アップという定量的な改善目標を示す必要があり、応募時に現状の生産指標と導入後の改善予測を算出しておくことが望ましいです。さらに、本事業は「業界内の省力化モデルとなる取組」を支援すると謳われており、補助金の採択にあたってはその取組が他社のモデルケースとなり得るかという点も重視されます。
⑦ 補助金事務局URL: 補助金の公式情報は農林水産省の公募ページに掲載されていますfood-industry-productivity-forum.maff.go.jp。申請要領や様式、Q&Aなど最新の資料はすべて公式サイトから入手可能です。(URL:農林水産省「令和7年度省力化技術導入支援事業 公募ページ」)
想定される活用事例
① 事業者様が従来から抱えておられる問題点: たとえば広島県三次市で食品加工業を営む「備北食品(仮称)」という中小企業を想定してみましょう。
従業員は高齢化が進み、人手不足により生産ラインの作業負担が過重になっていました。惣菜の製造ラインでは多くの工程を手作業に頼っており、生産効率が頭打ちである上に、従業員の確保も難しくなっています。
特に繁忙期には残業や臨時スタッフに頼らざるを得ず、人件費の増大やミス発生のリスクも抱えていました。このように人手不足と作業効率の低さが事業拡大のボトルネックとなり、売上拡大や新商品の開発にも消極的にならざるを得ない状況です。
地域の同業他社も似たような課題を抱えており、慢性的な労働力不足が食品製造業の共通の悩みとなっています。
② 補助金による具体的な問題解決イメージ:
そこで同社は、本補助金を活用して最新の省力化機械を導入する計画を立てました。
例えば、人手に頼っていた仕分け・包装工程に、AI搭載の画像認識システムとロボットアームを組み合わせた自動包装機を導入します。
この機械は発売されて間もない最新モデルで、作業スピードが従来より大幅に向上し、生産効率を10%以上高めることが期待できます。また、これまでは2人がかりだった工程を機械1台で自動化できるため、従業員をより付加価値の高い業務に配置転換することが可能になります。
導入費用は8,000万円ほどかかりますが、補助金に採択されればその半分の4,000万円が補助されます。
自己負担が4,000万円に抑えられることで、銀行融資と併用すれば十分導入可能な投資額となりました。
結果、製造ラインのボトルネックが解消され、製品出荷量の増加と残業時間の削減を同時に実現。従業員の負担も軽減され、働き方改革にも寄与しました。
さらに、この成功事例は地域の他企業にも共有され、「うちもロボット導入で省力化に取り組んでみよう」という動きが庄原市や安芸高田市など周辺地域にも広がる可能性があります。補助金の活用によって生まれたモデルケースとして、地域全体の中小企業支援・活性化につながる好循環が期待できます。
概要で述べた内容の、詳細な説明
上記の概要で挙げた各項目について、もう少し踏み込んだ説明をしていきます。
① 補助金額(詳細説明): 補助金額は最大4,000万円までとなっています。これは1件あたりの上限額であり、企業ごとに最大で4,000万円の交付を受けられる可能性があるという意味です。ただし当然ながら、提出した計画にかかる実際の投資額に応じて算定されます。
例えば導入設備の総経費が2,000万円の場合、補助金はその1/2以内(最大1,000万円)にとどまりますし、総経費が1億円を超えるような大規模投資であっても4,000万円が支給上限です。また、予算には限りがあるため採択件数にも制約があります。令和7年度補正予算では省力化技術導入支援事業に**総額14億円(140百万円)が充てられており、この予算の範囲内で高得点の案件から順に採択される仕組みです。したがって、補助金額上限いっぱいの交付を受けるためにはそれ相応の規模と効果を持つ計画である必要があります。
② 補助率(詳細説明): 補助率が1/2以内と定められていることの意味について補足します。補助率1/2とは、対象経費の50%を上限に国が補助するということです。
言い換えると、残りの50%以上は事業者が自己資金や融資で負担しなければなりません。この自己負担分を用意できるかどうかが、実際に補助事業を遂行できるかのポイントになります。中小企業にとって数千万円規模の投資は大きな負担ですが、補助金のおかげで実質半額になることで挑戦しやすくなります。
ただし自己負担が必要とはいえ、投資対効果を考えれば、省力化による人件費削減や生産性向上で将来的に元が取れるケースも多いでしょう。なお、補助金は後払い(精算払い)となるのが通常で、まず事業者が全額立替えて事業を実施し、完了後に補助金分が支給される流れです。したがって、一時的にでも全額を賄う資金繰り計画が重要です。必要に応じて日本政策金融公庫や地元金融機関の融資制度と組み合わせて資金調達することも検討しましょう。
③ 補助対象経費(詳細説明):
補助対象経費として認められる範囲は広く、機械装置の購入費用および据付・設置にかかる費用が中核となります。
例えばロボットアームそのものの購入代金や、それを生産ラインに組み込むための装置取り付け工事費などが含まれます。加えて、導入する機械を動かすための制御システムの構築費や、ソフトウェア導入費も対象経費に含めることができます。さらには、導入プロジェクトを進める上で必要となる専門人材の人件費(エンジニア費用)も対象です。
例えば外部のシステムインテグレーターに開発を依頼したり、プログラミングや調整を行う技術者を期間限定で雇用する場合の費用も補助対象経費として計上できます。
ただし前述の通り、リース料・レンタル料は対象外です。
例えば最新機器をリース契約で導入する選択肢も考えられますが、その場合は補助金を活用できません。
必ず購入という形で取得し、自社の資産とする必要があります。
また、土地や建物の建設費用、汎用的な消耗品費など、直接設備導入に関係しない経費も補助対象外となる可能性があります。
補助対象経費の範囲は公募要領等で細かく定義されていますので、申請時には経費区分ごとにどの費目が認められるかを確認し、適切に見積もりを作成することが重要です。
④ 補助対象者(詳細説明): 本補助金の対象者は食品製造事業者です。
具体的には、農産品・水産品・畜産品を原料に食品や飲料を製造・加工する事業者が該当します。
法人形態は問いませんので、株式会社や有限会社はもちろん、個人事業主として食品加工を営んでいる場合や、生産者の組合・協同組織なども該当し得ます(公募要領で「食品製造事業者等」と記載されている場合、関連団体等も含まれることがあります)。
重要なのは、事業の実施主体としてふさわしいかという点です。本事業の趣旨では「業界内の省力化モデルとして牽引していくことが見込まれる」事業者と明記されており、単に自社内の効率化に留まらず、業界全体への波及効果が期待できる企業が望ましいとされています。
例えば、業界内で比較的規模が大きく影響力のある企業や、革新的な取組で他社の模範となりうる積極的な企業が念頭に置かれているでしょう。
ただし中小企業だから応募できないというわけでは決してなく、むしろ中小の食品製造業者でも優れた省力化モデルとなる取組を提案すれば採択のチャンスは十分あります。広島県内でも、例えば三次市・庄原市・安芸高田市といった地域の食品会社が積極的に応募し、地域から全国に発信できるような成功事例を生み出すことが期待されています。
なお、公募への応募にあたっては1事業者につき1件の応募が原則でしょう。同一の事業者が複数の案件を同時に申請するといったことは通常認められませんので、社内で計画をまとめ一本化して申請するようにしてください。
⑤ 申請期限(詳細説明):
公募期間は令和7年12月16日(火)から令和8年1月15日(木)17時00分までと定められています。
この期間内に申請書類を準備し、期限までに提出を完了しなければなりません。締切日は令和8年(2026年)1月15日の午後5時ちょうどで、時間厳守となっています(メールで提出する場合は17時までに送信完了し、先方サーバーに到着している必要があります)。
提出方法は原則電子メールによるオンライン提出とされています。やむを得ない事情でメール提出が難しい場合のみ、郵送・宅配便・持参での提出も許容されていますが、その場合も同じ締切日時までに担当部署へ必着で届ける必要があります。
年末年始(12月29日~1月3日頃)は官公庁もお休みとなるため、その間は質問問い合わせへの対応も止まります。実質的に新年明けてから締切まで営業日がわずかしかありません。よって、実務上の準備期間は非常にタイトです。余裕をもって12月中に主要な書類を作成し、年明け早々には最終チェックと提出を行うくらいのスケジュール感が求められるでしょう。また、締切間際になるとメールサーバーの不具合など予期せぬトラブルのリスクも高まります。可能な限り締切日の数日前までには提出を完了させることをお勧めします。
⑥ 申請要件(詳細説明):
申請要件は概要部分でも触れましたが、より詳細に確認します。まず技術面の要件として、導入する機械設備が販売開始4年未満の新技術であること、そしてその導入によって生産効率が3%以上向上する計画であることが必須です。
ここで言う「生産効率」とは、一般的には労働生産性(例えば人時当たりの生産量や、ライン当たりのスループットなど)を指すと考えられます。3%以上の向上という基準はハードルが低いようにも見えますが、補助事業として採択されるためにはできるだけ高い改善効果を示す方が有利でしょう。
申請時には、「現状では例えば1時間に100個生産できているが、新技術導入後は1時間に105個以上に増える見込み」等、具体的な数値で向上幅を示すことになります。その根拠として、設備メーカーが公表している性能データや、試算シミュレーション結果を用いると説得力が増すでしょう。
実際、公募要領の提出書類には「省力化実行計画」や「生産効率の向上計画」といった書類の作成が求められており、そこに定量的な目標値や達成見込みを記載する形式になっています。また書類上の要件として、所定の申請様式(課題提案書や計画書類、企業の決算書など)を整えて提出することが挙げられます。
様式は農林水産省の公募ページからダウンロード可能であり、WordやExcel形式で提供されています。
さらに事業者としての信用要件も暗黙的に存在します。例えば反社会的勢力ではないこと、公的助成金の交付停止措置を受けていないこと、暴力団排除に関する誓約など、他の公的補助金と同様の一般的な応募資格条件があります。これらは公募要領に記載されていますので、応募前に確認して問題がないかチェックしましょう。
加えて、本補助金はモデル事業を創出する目的があるため、採択された場合には事業完了後に実績報告や効果検証に協力することも求められます。他社の参考となるよう事例発表や情報共有に応じる姿勢も重要かもしれません。以上のように、申請要件をしっかり満たし、かつ書類上でそれを明確に示すことが採択のカギとなります。
具体的な申請手順
1. 公募情報の入手と計画立案: まずは農林水産省の公式ウェブサイトに掲載されている公募要領および申請様式を入手します。
公募要領には事業の詳細な趣旨や応募方法、評価の観点などが網羅されていますので、一読して全体像を把握しましょう。その上で、自社の課題と導入しようと考えている新技術について社内で検討し、どのような省力化効果が得られるかを洗い出します。
機械メーカーやシステムベンダーとも相談し、導入候補となる具体的な設備の仕様・価格・導入スケジュールを確認します。ここで重要なのは、「なぜその設備が必要なのか」「導入によってどれだけ効率が上がるのか」を明確にすることです。自社の現状課題(人手不足や生産ボトルネックの具体的内容)を整理し、それを新技術でどう解決するかという筋道を社内で合意しておきましょう。
2. 申請書類の作成:
次に、公式サイトからダウンロードした課題提案書(応募申請書)や各種計画書の作成に取りかかります。課題提案書には事業計画の概要を記載します。ポイントは、事業の目的・内容・期待される効果をわかりやすく説得力をもってまとめることです。省力化実行計画書には、導入する設備の概要とともに定量的な省力化目標(例:生産ラインのスループットを○%向上、作業員○人分の労力削減など)を記載し、その達成手段を説明します。
生産効率向上計画書では、具体的な効率指標(人時生産性や稼働率など)の現状値と目標値を示し、算出根拠を述べます。ここでは前述の3%以上向上という要件を満たしていることを明記します。また、新技術に関する証明書も提出が求められます。
これは導入予定の機械設備が最新技術であることを示す資料で、通常はメーカーが発行する製品カタログや仕様書、新製品であることを証明する文書などが該当します。メーカーに問い合わせて入手しておきましょう。
さらに、自社の直近の決算書(貸借対照表・損益計算書など)も添付します。財務状況は事業遂行能力の判断材料となるため、最新のものを用意します。
書類一式の作成には時間がかかるうえ、不備があると減点対象になり得ます。可能であれば行政書士など専門家のアドバイスを受けながら、不明点を潰し丁寧に書き上げることが望ましいです。
3. 提出とその後の流れ:
書類が完成したら、期限までに提出します。提出方法は原則電子メールです。指定されたメールアドレス(農林水産省担当部署の「kaizen@maff.go.jp」)宛てに、必要書類を添付して送信します。メールの件名や本文の記載方法についても公募要領に指示がありますので、それに従ってください。やむを得ずメール以外で提出する場合は、事前に問い合わせ先に連絡のうえ郵送・宅配便等で送付します。
提出後、農林水産省にて書類審査と評価が行われます。
提出された提案は、公募要領に定められた評価項目に沿って採点され、点数の高い案件から順に予算の範囲内で採択(補助金交付候補者の選定)となります。
審査期間中に、内容について追加質問や資料要求が来ることもあります。もし問い合わせがあった場合は速やかに対応し、必要な情報を提供しましょう。最終的な採択結果は、公募締切から数週間~1ヶ月程度後に発表される見込みです。採択された場合、交付申請・交付決定という手続きを経て正式に補助事業を開始できます。一方、不採択の場合も通知がありますので、次の機会への糧としてください。
なお、農林水産省のホームページ上には公募に関するQ&Aも随時更新で掲載されていますmaff.go.jp。応募者が疑問に感じやすいポイントについて回答が出ていますので、申請準備中に不明点があればQ&A資料をチェックしてみると良いでしょう。それでも解決しない場合や申請書作成に不安がある場合は、専門家への相談も検討してください。
まとめ
食品製造業の現場において、人手不足への対策と生産性向上は急務です。本稿で紹介した「省力化技術導入支援事業」は、最新技術の導入を通じてそうした課題解決を図る企業を国が強力に後押しする補助金制度です。三次市・庄原市・安芸高田市といった地域の企業でも、この国の補助金を活用することで設備投資のハードルを下げ、事業拡大や働き方改革に踏み出すことができます。
公募の締切が近いこともあり、関心のある事業者様は早急に検討を始めることが重要です。制度の詳細や最新情報は必ず農林水産省の公式サイトで確認し、要件を満たしているか慎重に見極めましょう。書類の準備には時間と労力がかかりますが、採択されれば最大で4,000万円もの補助金が受けられ、企業の省力化投資にとって大きな追い風となります。
自社だけで申請手続きを進めるのが難しい場合や不明点が多い場合には、専門家の力を借りることも有効です。補助金申請のサポートが必要な場合は、広島県に密着した行政書士に相談し、プロのサポートを受けることでスムーズな申請と採択の可能性向上につなげましょう。
行政書士など専門家は多数の補助金申請支援の経験があり、書類作成や手続きのポイントについて適切なアドバイスを提供してくれます。ぜひ遠慮なくお近くの行政書士にお気軽にご相談ください。

