第13次「事業承継・M&A補助金」採択結果から読み解く制度概要と今後のポイント

第13次「事業承継・M&A補助金」採択結果から読み解く制度概要と今後のポイント

2026年1月15日、第13次公募となる「事業承継・M&A補助金」の採択結果が公表されました。本補助金は、中小企業の事業承継やM&Aを円滑に進め、新たな設備投資や経営統合(PMI)による成長を後押しするものです。今回は通常枠(事業承継促進枠)専門家活用枠M&A支援枠(PMI推進枠)の各枠について制度の詳細や第13次公募での採択動向を具体的に振り返り、さらに第14次以降の変更点やスケジュールなど今後の申請者が押さえるべきポイントを解説します。中小企業の経営者や支援専門家(行政書士・中小企業診断士等)の皆様に向け、専門的かつ実務的な視点でお届けします。

目次

事業承継・M&A補助金とは?制度概要と目的

「事業承継・M&A補助金」は、中小企業・小規模事業者等が事業承継やM&Aを契機に行う設備投資や経営資源の引継ぎ、統合後の経営統合(PMI)などの費用の一部を補助する制度です。単に事業を引き継ぐだけでなく、「承継・M&A後の新たなチャレンジ」を国が後押しする目的で設けられました。経営者の高齢化が進む中、円滑な事業承継がなされないと企業の蓄積したノウハウが失われ地域経済に悪影響を及ぼす懸念があります。そうした課題に対応するため、本補助金では事業承継計画の策定支援やM&A実務支援を通じて中小企業の円滑な世代交代と成長を促進しています。

本補助金は2024年度補正予算で従来の「事業承継・引継ぎ補助金」から制度拡充され、「事業承継・M&A補助金」に名称変更してリニューアルされました。補助上限額の引き上げや新たな支援枠の創設など大幅な見直しが行われ、より使いやすい制度へと進化しています。現在は**「事業承継促進枠(通常枠)」「専門家活用枠」「PMI推進枠(M&A支援枠)」「廃業・再チャレンジ枠」**の4つの枠で公募が行われており、それぞれ対象者や補助対象経費が異なります。(※このうち「廃業・再チャレンジ枠」は他枠との併用申請が可能な特別枠で、本記事では主に主要3枠にフォーカスします。)

では、第13次公募の結果を踏まえ、各支援枠の内容と採択実績を詳しく見ていきましょう。

第13次公募の採択結果概要

第13次公募の申請・採択件数: 第13次公募(受付期間: 2025年10月31日~11月28日)には合計481件の申請があり、そのうち293件が採択されました。採択率にすると全体で約61%程度となり、過去の公募と同様に半数強が採択される結果となりました。申請件数・採択件数の内訳は以下のとおりです:

  • 事業承継促進枠(通常枠): 申請182件 → 採択111件
  • 専門家活用枠: 申請267件 → 採択163件
  • PMI推進枠(M&A支援枠): 申請32件 → 採択19件

🔍 採択結果のポイント: 専門家活用枠が最も多くの申請を集め、全体の半数以上を占めました。一方、PMI推進枠(M&A支援枠)は申請・採択ともに件数が少なく、ニーズが限定的である様子がうかがえます。ただし採択率自体は各枠ともほぼ同水準(おおむね55~60%台)となっており、どの枠でも一定の競争がある状況です。つまり「出せば必ず通る補助金ではない」ため、次項で述べる各枠の要件に沿った周到な計画書作成が重要と言えます。

以下では、通常枠・専門家活用枠・M&A支援枠それぞれの補助内容・要件・補助率・13次採択実績を詳しく解説します。自社の事業承継/M&Aの形態に合わせて、どの枠に該当するか確認してみてください。

支援枠ごとの補助内容と要件(第13次公募)

通常枠(事業承継促進枠)

  • 対象: 今後5年以内に親族内承継または従業員承継(事業再生を伴うものを含む)を予定している中小企業。後継者は承継予定企業の役員・従業員として3年以上在籍しているか、または親族関係にあることが求められます。
  • 補助内容: 承継前の「事業磨き上げ」を支援します。具体的には、後継者が中心となって行う生産性向上につながる設備投資や新商品・新サービス開発等の取組が補助対象です。例えば老朽設備の更新による効率化やDX導入、後継者主導の新規事業展開に要する経費(外注費・委託費等)などが該当します。
  • 補助上限額・補助率: 上限額は最大800万円(一定の賃上げ要件※を達成した場合は1,000万円に引き上げ)。補助率は中小企業の場合1/2(小規模事業者は2/3)が適用されます。※賃上げ要件については後述。
  • 第13次採択実績: 採択件数111件(申請182件)。承継直前の設備投資ニーズは堅調で、全枠中2番目の採択数でした。製造業では設備更新、サービス業では店舗改修など、幅広い業種で活用されています(老舗企業が後継者の代で新設備導入するケース等が代表例)。

専門家活用枠

  • 対象: M&A(事業再編・事業統合)を行う予定の中小企業が対象。売り手企業・買い手企業の双方で利用可能で、それぞれ「売り手支援類型」「買い手支援類型」に分かれます。
  • 補助内容: M&Aプロセスに必要な専門家費用等を支援します。具体的には、FA・M&A仲介会社や士業(専門家)への手数料、M&A時のデューデリジェンス(DD)費用、契約書作成費用、表明保証保険料などが補助対象経費です。※重要: 仲介手数料については国の「M&A支援機関」登録事業者への依頼分のみ補助対象となります。また買い手企業が本枠を利用するには財務・法務デューデリジェンスの実施が必須です。
  • 補助上限額・補助率: 上限額は基本600万円ですが、買い手企業の場合はDD費用として追加で最大200万円、売り手企業の場合は廃業費用として追加で最大150万円の「上乗せ枠」が設けられています。補助率は買い手企業: 2/3、売り手企業: 1/2(※一定の要件を満たす売り手の場合は2/3に引上げ)と設定されています。さらに、買い手支援類型では将来的に年商100億円規模を目指す高成長企業向けに「100億企業特例」が新設されており、この特例を満たす場合は補助上限額が最大2,000万円まで拡大されます(※内訳: 1,000万円までは通常補助率、1,000万円超~2,000万円部分は補助率1/3)。
  • 第13次採択実績: 採択件数163件(申請267件)。全枠中で最も採択件数が多く、M&A支援ニーズの高さが伺えます。特に買収側企業の利用が増加傾向にあります。仲介手数料やDD費用は高額になりやすいため、この補助金で費用負担を和らげてM&Aに踏み切るケースが多いようです。業種的には、後継者不在の製造業や地域の建設業のM&A、専門家(税理士・M&Aブローカーなど)が関与する案件が目立ちます。また一部では医療・介護分野のクリニックM&A等、サービス業の採択事例もみられます。

M&A支援枠(PMI推進枠)

  • 対象: M&Aにより株式や事業資産を譲り受けた(または譲り受け予定の)中小企業が対象です。M&A成立後の“統合フェーズ”を支援する枠で、補助内容に応じて「事業統合投資類型」と「PMI専門家活用類型」の2つに細分されています。
  • 補助内容:
    • 事業統合投資類型: M&A後のシナジー最大化を目的とする設備投資やシステム導入、改修工事等への支援。統合後の生産性向上に資する機械設備の導入、ITシステムの統合、店舗や工場の改装などが対象になります。
    • PMI専門家活用類型: 経営統合プロセス(PMI)で専門家を活用する費用を支援。具体的には、統合計画策定のコンサルティング費、PMO支援、人事制度やIT統合作業の専門家費用などが該当します。
      ※いずれの類型も、M&Aクロージング日から1年以内に実施する取組が対象であり、またM&A実行時に適切なDDを行っていることが要件とされています。専門家活用枠(買い手支援)との同時申請も可能で、統合後も引き続き専門家の力を借りられる仕組みです。
  • 補助上限額・補助率:
    • 事業統合投資類型: 上限額800万円(一定の賃上げ要件達成で1,000万円まで引上げ)、補助率1/2(小規模事業者は2/3)。比較的大型の設備投資にも対応できる水準です。
    • PMI専門家活用類型: 上限額150万円、補助率1/2。専門家へのコンサル費用支援としては十分な額ですが、投資枠と比べると小規模です(専門家費用のみをピンポイントで賄うイメージです)。
  • 第13次採択実績: 採択件数19件(申請32件)。採択数は他の枠に比べ少ないものの、初登場から間もない新設枠である点を踏まえると着実なスタートといえます。主な採択事例として、製造業での工場設備の統合投資、IT企業による買収後のシステム統合、人材サービス業でのM&A後の組織再編コンサル費用などが挙げられます。M&A自体のハードルが高いため利用者は限られますが、成約後の統合を支える重要な枠として今後の認知拡大が期待されます。

(参考: 上記のほか「廃業・再チャレンジ枠」では、M&A不成立時や一部事業廃止時の廃業費用(在庫処分、原状回復等)に最大150万円(補助率2/3)の補助が受けられます。第13次公募では単独申請の採択例はほとんどありませんでしたが、他枠との併用により廃業費用の一部をカバーする活用が可能です。)

第13次公募における採択傾向

採択率と人気の支援枠

第13次公募では全体採択率がおおむね6割前後となり、前回までと同様に一定の競争率となりました。特に専門家活用枠は応募が最も多く、採択件数も最大の163件に上りました。これは近年、中小企業のM&Aニーズが高まっていることを反映しています。親族内に後継者がいない企業が第三者承継(M&A)を検討するケースが増え、仲介会社や専門家の支援費用を補助金で賄おうという動きが盛んなようです。一方、事業承継促進枠(通常枠)も111件と高水準の採択がありました。中小製造業などで後継者が事業承継を機に設備更新・新事業に乗り出す事例が多く、根強い人気があります。またPMI推進枠は19件と少なめですが、これはM&A後の統合支援という性質上、対象となる企業自体が限られるためと考えられます。

全枠を通じて採択率には大きな差はありませんでしたが、それでも不採択となった案件は約4割存在します。どの枠であっても、採択を勝ち取るには適切な要件充足と周到な準備が不可欠です。「応募すれば通る補助金ではない」点を肝に銘じ、しっかりと対策を講じましょう。

地域・業種による傾向

第13次公募の採択案件は全国の中小企業が対象となっており、特定の地域に偏る発表はされていません。おそらく首都圏・都市圏の企業からの応募が相対的に多い傾向はありますが、地方でも事業承継に熱心に取り組む企業は多く存在し、地域差よりも各企業の準備度合いや計画内容が採択可否を分けたと考えられます。業種別では、事業承継促進枠では製造業(部品製造業での設備更新など)や建設業(後継者による新分野進出)が目立ちます。また専門家活用枠では製造業・卸売業などのほか、最近はクリニックや介護施設等のM&A案件も採択例が増えているようです。サービス業でも地域の老舗旅館や小売店の第三者承継など、幅広い業種で活用されています。要は業種を問わず事業承継・M&Aの意思がある中小企業ならチャンスがある補助金と言えるでしょう。

不採択案件の傾向と審査上のポイント

不採択となった案件の傾向を推測すると、申請要件を満たしていない事業計画の内容が不十分なケースが多いと考えられます。例えば以下のような点がチェックされます。

  • 要件未充足: 後継者の在籍年数が足りない、M&A時にデューデリジェンスを実施していない、仲介会社が未登録業者である等、基本要件の不備は致命的です。申請前に公募要領の細部まで確認し、自社が全ての要件をクリアしているか専門家にチェックしてもらいましょう。
  • 計画の妥当性: 補助金は競争的な審査を経て交付されるため、事業計画の質が極めて重要です。審査では「本当に承継/M&Aを機に企業が成長・地域貢献するか」が問われます。例えば計画書に具体的な数値目標や市場分析が欠けている設備投資や専門家活用が事業の成長にどう繋がるかの説得力が弱い場合、採択は難しくなります。
  • 政策との整合性: 国が本補助金で重視しているのは「事業承継による生産性向上」や「地域経済への貢献」です。審査では、計画に地域の雇用維持・創出取引拡大など地域活性化の視点が盛り込まれているかが加点要素となります。単に自社の利益追求だけでなく、地域や取引先への波及効果をアピールしましょう。

審査上の加点ポイントとして昨今特に言われるのが**「賃上げ」の取組**です。第13次公募以降、すべての申請枠で自社の事業場内最低賃金を前年度比+30円以上引き上げる計画を表明すると審査で加点が得られる仕組みがあります。これは政府の方針である賃上げ促進策に呼応したもので、計画書で賃上げ実施を明記している企業は評価が高くなります。ただし採択後に約束した賃上げを実行しなかった場合、正当な理由がなければ他の補助金申請でペナルティ(18ヶ月間減点)を受ける措置もあります。したがって、無理のない範囲で賃上げ計画を盛り込み、従業員にも周知した上で確実に履行することが重要です。

以上より、不採択を避けるには形式要件の漏れをなくし質の高い事業計画書を作成することが肝要です。具体的には、「自社の強みと承継/M&A後のビジョンを明確にし、補助事業によって何を実現するか」を説得力ある形で記載しましょう。また必要書類(決算書3期分、履歴事項全部証明書など)も早めに準備し、不備のない申請を心がけてください。認定支援機関や専門コンサルタントの力も借りながら、万全の態勢で審査に臨みましょう。

第14次公募以降の変更点と今後のスケジュール

● 現時点での制度変更の有無: 2025年度補正(令和7年度補正)で大幅に拡充された本補助金ですが、第14次公募(次回公募)に向けて新たな大きな制度変更が公表されている情報はありません。基本的には現行の4枠体制・補助条件が継続される見込みです。つまり第12次公募で導入された**「PMI推進枠」新設や補助上限引上げ(最大1,000万円・特例2,000万円)といった改正内容がそのまま踏襲される形です。一方で、政府の中小企業支援策全般としては賃上げや人的投資へのインセンティブが強調されており、本補助金でも賃上げ要件の遵守計画的な人材育成などが引き続き重要視されるでしょう。要件が緩和される動きは今のところなく、むしろ「認定支援機関と連携してしっかり計画を作ること」**など質を確保する方向で運用されていくと考えられます。

● 公募スケジュール(第14次公募): 第13次公募の締切が2025年11月末だったことから、第14次公募の開始時期は早ければ2026年1月~3月頃になる可能性が高いと予想されています。実際、本記事執筆時点(2026年1月中旬)では次回公募の正式発表はまだですが、例年通りであれば年度内にもう1回募集が行われる公算が大きいです。最新の公募情報は公式サイト【shoukei-mahojokin.go.jp】や中小企業庁の公募案内ページで逐次確認するようにしましょう。公募開始から締切まで1ヶ月程度と短いので、事前に準備を整えておくことが肝心です。また電子申請に必要なGビズIDプライムアカウント取得は時間がかかる場合があるため、まだの方は今のうちにID取得を済ませておくことを強くお勧めします。

● 予算規模と今後の継続性: 本補助金は中小企業生産性革命推進事業の一環として国の予算措置もしっかり講じられています。令和6年度補正予算では、生産性向上支援(ものづくり補助金・持続化補助金・事業承継M&A補助金等)に総額3,400億円が充てられており、事業承継M&A補助金もその中で継続実施されます。さらに政府は「100億企業の創出」を掲げており、高成長企業への投資支援策を拡充しています。この流れから見ても、事業承継・M&A補助金の大型枠(100億特例など)は当面維持・強化されるでしょう。したがって、第14次以降も本補助金は十分な予算の下で継続実施される見込みであり、中小企業にとって貴重な追い風となり続けるはずです。

● 申請者が意識すべきポイントまとめ: 次回以降の公募に備えて、改めて重要ポイントを整理します。

  • 公式情報のチェック: 公募要領やFAQには毎回細かな変更やQ&A追加があります。申請前に必ず最新の公式公募要領を熟読し、不明点は事務局や専門家に確認してください。
  • 早めの準備: GビズID取得や必要書類の収集、事業計画書の骨子作成などは公募開始前から着手しましょう。特に計画書作成は自社だけで悩まず、認定支援機関(金融機関、商工会、士業等)に相談すると効果的です。
  • 要件遵守と加点要素: 基本要件(業歴、後継者要件、DD実施など)は絶対クリアしつつ、賃上げ+30円計画の表明など取れる加点は確実に取りに行きましょう。それが採択率アップに直結します。
  • 将来を見据えた計画: 単年度の設備投資だけでなく、承継後5~10年の成長ビジョンまで描いた事業計画は高く評価されます。「この補助金をテコに将来こう成長する」というストーリーを明確に示してください。

おわりに

事業承継・M&A補助金は、単なる資金支援ではなく**「承継やM&Aを機に企業が次の成長ステージへ踏み出す」ための後押しとなる制度です。第13次公募の結果を見ると、多くの中小企業がこの制度を活用して事業の革新に挑戦していることがわかります。特に昨今は事業承継=守りではなくM&Aも活用した攻めの投資**へと発想を転換する企業も増えており、本補助金の役割はますます重要です。

第14次以降も制度は継続し、公募の機会は巡ってきます。これから申請を検討する企業の皆様は、ぜひ早めに情報収集と準備を始めてください。「うちの規模では無理かも…」と敬遠せず、自社に合った支援枠を見極めてチャレンジすることが大切です。専門家の力も借りながら計画を練り上げれば、きっと採択への道は開けるはずです。

事業承継・M&A補助金を上手に活用し、次世代へのバトンタッチを成功させることで、自社の持続的発展と地域経済の活性化につなげていきましょう。今後の公募に向けて、皆様の健闘をお祈りいたします。

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