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初心者向け 特定技能「造船・舶用工業分野」制度の解説

日本の造船・舶用工業分野では、人手不足を補うために在留資格「特定技能」によって外国人労働者の受入れが可能です。特定技能制度は、一定の技能や日本語能力を持つ外国人を即戦力として雇用できる制度で、2019年4月に創設されました。以下では「造船・舶用工業分野」における特定技能について、初心者の雇用主向けにポイントをわかりやすく整理して説明します。

目次

対象業務内容(どんな作業が含まれるか)

特定技能「造船・舶用工業分野」で認められる業務は、船舶やその関連設備を製造・整備する作業です。具体的には、業務内容が次の3つの区分に分かれています。

  • 造船区分 – 船舶本体の製造工程に従事(主な作業例:溶接、塗装、鉄工、とび作業、配管、船舶加工 など)。船の船体ブロックを組み立てたり、骨組みに溶接・塗装を行うような作業が該当します。
  • 舶用機械区分 – 船舶用のエンジンや機械部分の製造工程に従事(主な作業例:溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、配管、鋳造、金属プレス加工、強化プラスチック成形、機械保全、舶用機械加工 など)。大型エンジンの組立てや鋳造による部品製造、機械部品の仕上げ調整など多岐にわたります。
  • 舶用電気電子機器区分 – 船舶の電気・電子機器の製造工程に従事(主な作業例:機械加工、電気機器組立て、金属プレス加工、電子機器組立て、プリント配線板製造、配管、機器保全、船用電気電子機器加工 など)。配電盤や電子機器の組立て、プリント基板の製造や電気配線作業などが含まれます。

上記の主な作業は、監督者の指示を理解しつつ自ら判断して遂行する現場作業です。これらの関連業務として、図面の読解、作業工程の管理、検査(外観検査や寸法チェック等)、工具や機械の保守管理、部品の梱包・運搬、足場の組立て・解体、清掃など付随的な作業も行うことができます。ただし**管理監督的な業務(他の作業者を指揮・管理するポジション)**は含まれず、あくまで現場の作業者としての業務範囲になります。

試験の種類と概要(技能試験・日本語試験)

特定技能1号として採用するためには、技能試験と日本語試験の合格が必要です(技能実習2号修了者など一部免除あり)。試験の概要は以下の通りです。

  • 技能試験:造船・舶用工業分野に特化した「特定技能1号評価試験」に合格する必要があります。この試験は一般財団法人日本海事協会(ClassNK)が実施しており、溶接・塗装・鉄工・仕上げ・機械加工・電気機器組立ての6つの業務区分ごとに実施されます。受験者は自身の従事予定の作業区分について学科試験と実技試験を受け、合格基準(例:学科は60%以上正答など)を満たすことで技能水準を証明できます。なお、造船・舶用工業分野に関する技能実習2号を良好に修了した場合は、この技能試験が免除されます(修了職種が受入れ業務に対応している場合)。また代替基準として、国家検定である技能検定3級に合格している場合も技能試験合格と同等に扱われます。
  • 日本語試験:日常会話や職場での指示を理解できる基礎的な日本語能力が求められます。具体的には、日本語能力試験(JLPT)N4以上に合格、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A2レベル以上に合格していることが条件です。こちらも技能実習2号修了者であれば試験が免除され、日本語能力要件を満たしたものとみなされます。

試験受験資格として17歳以上であることなど年齢制限がありますが、多くの場合応募者は成人です。また試験は国内外で実施されており、合格証明をもって在留資格申請時に提出します。技能試験・日本語試験ともに難易度は決して低くないため、候補者の選抜時には事前にこれら試験の合格状況を確認することが重要です。

受け入れ条件(企業側の条件や支援体制)

特定技能外国人を受け入れる企業(特定技能所属機関)には、法律と主管官庁の定める受け入れ条件を満たすことが求められます。造船・舶用工業分野特有の条件と一般的な条件を整理すると、以下のポイントがあります。

  • 事業分野の適合:受け入れ企業は造船・舶用工業分野の事業者でなければなりません。具体的には、造船業の場合は造船法に基づく造船所の届出や登録を行っていること、舶用工業(船舶用の機械・部品製造等)の場合も関連する認定・登録を受けていることなど、国土交通省への必要な許認可・届出を備えた事業者である必要があります。簡単に言えば、船や船舶部品の製造・修繕を行う正式な企業であることが条件です。
  • 直接雇用の原則:特定技能外国人は派遣社員としてではなく、受け入れ企業の直接雇用で働かせる必要があります。造船・舶用工業分野では派遣形態での就労は認められておらず、雇用契約を結ぶ企業が実際の勤務先となります。また、特定技能はフルタイムの雇用が前提であり、安定した勤務時間と収入を確保する契約内容でなくてはなりません。
  • 適切な雇用契約と待遇:受け入れ企業は外国人と特定技能雇用契約を締結しますが、その内容は労働法規に適合しなければなりません。例えば、報酬額(給与)は日本人同等以上であること、最低賃金以上で各種手当や労働時間も日本の基準を満たすこと、社会保険への加入、残業代支給など適正な労働条件を保証する必要があります。また、有給休暇や労働安全などについても日本人社員と同様に扱う義務があります。契約期間も特定技能の在留期間に合わせて設定されます(通常1年以内で更新制)。
  • 企業の遵法性・安定性:受け入れ企業自体が適切な企業であることも条件です。具体的には、過去5年以内に入管法や労働法令違反で重大な処分を受けていないこと、外国人の失踪や不法就労に関与した経歴がないこと、倒産の恐れがなく安定経営であることなどが求められます。これは、不適切な業者による外国人の搾取やトラブルを防止するための要件です。違反歴については、暴力団との関係や不当な安価受注による劣悪な労働環境などもチェックされます。
  • 特定技能協議会への加入:造船・舶用工業分野では、受け入れ企業(および支援を委託する登録支援機関)は**「造船・舶用工業分野特定技能協議会」への加入が義務です。これは国土交通省所管の業界協議会で、受け入れ企業は外国人受入れ開始後4か月以内**に入会し、業界内での情報共有や適正な運用に協力する必要があります(※2024年6月以降は在留資格申請時に協議会加入済みである証明提出が必要とされました)。協議会では定期的な受入状況の報告や研修資料の提供などが行われ、企業はその運営に協力します。要は、業界全体で外国人材の適正な受入れを図るネットワークに参加することが求められるわけです。
  • 支援体制の確保:特定技能1号で外国人を受け入れる企業は、外国人への支援を行う義務があります。具体的には後述する「1号特定技能外国人支援計画」を策定し、入国後の生活・就労支援を適切に実施しなければなりません。企業内に外国人支援の担当者を置き、外国人が理解できる言語で各種案内・相談対応ができる体制を整えることが必要です。もし自社で対応が難しい場合は、法務省登録済みの登録支援機関に支援業務の全部または一部を委託することも可能です(委託した場合でも最終的な実施責任は企業にあります)。支援担当者や支援計画については入管への申請書類の一部となり、計画が不十分だと在留資格が許可されない場合もあります。

▶ 支援計画に基づく具体的支援内容: 支援計画には、法律で定められた10項目の義務的支援が含まれます。雇用主はこれらを確実に実行し、外国人労働者が日本で円滑に生活・就労できるようサポートしなければなりません。主な支援内容は以下の通りです。

  • 事前ガイダンス(入国前の事前説明):来日前に労働条件や遵守すべきルール等を母国語で説明します。契約内容や仕事内容、日本での生活上の注意点(法律を犯さないように等)を理解してもらいます。
  • 出入国時の送迎:来日時の空港出迎えや帰国時の見送りを行います。特に入国直後は不安になりやすいため、空港から宿舎までの移動を企業側でサポートします。
  • 住居の確保・契約支援:日本での住まい探しを支援することが義務付けられています。具体的には、社員寮の提供やアパート賃貸契約の仲介、連帯保証人の手配補助などを行います。これにより外国人労働者が安全な生活拠点を確保できるようにします。
  • 生活オリエンテーション:入国後早期に、日本での生活一般に関する講習を行います。例えば、ゴミの出し方、交通ルール、病院の利用方法、災害時の対応、日常マナーなどを説明します。少なくとも8時間程度の時間をかけ、外国人が日本社会に早く馴染めるよう支援します。
  • 行政手続きへの同行:市区町村役場での住民登録や健康保険・年金の加入手続き、銀行口座開設などに社員が同行サポートします。言葉の壁がある中で公的手続きをスムーズに行えるよう支援するものです。
  • 日本語学習の機会提供:更なる日本語習得のため、勉強の機会を提供・斡旋します。例えば日本語教室の紹介や学習教材情報の提供、勤務シフトの調整による受講支援など、言語能力向上を後押しします。
  • 相談・苦情対応:外国人労働者が職場や生活で困ったときに相談できる窓口を設けます。母国語で相談可能な体制を整え、いじめや差別、ハラスメントなどの苦情があれば迅速に対処します。
  • 日本人との交流促進:地域のイベント参加や社内交流会などを通じて、日本人との交流機会を促す支援も行います。これにより孤立を防ぎ、地域社会の一員として生活できるようになります。
  • 転職支援:やむを得ず契約が途中終了する場合(会社都合の解雇や契約満了等)、同じ分野の他社への転職活動を支援する義務があります。具体的にはハローワークに同行したり求人情報を提供したりして、本人が引き続き就労を希望する場合は次の受入先探しを手助けします。
  • 定期的な面談と行政への報告:少なくとも3か月に1回以上、定期面談を実施して就労状況や生活状況を把握し、必要に応じて助言します。また、入管庁への定期報告(四半期ごとの就労状況報告など)や、支援状況に関する届出を適宜行います。これら報告義務も法令で定められており、怠ると受入れ継続に支障が生じます。

以上のように、企業側には外国人が安心して働ける環境を用意する責任があります。支援計画の策定と実行は多少手間がかかりますが、登録支援機関に委託することで負担軽減も可能です。いずれにせよ、企業は単に働き手を受け入れるだけでなく、生活面も含めたサポート役を担う点を十分認識しておきましょう。

在留資格の期間と更新、永住・家族帯同の可否

在留期間: 特定技能1号の在留期間は最長でも通算5年と定められています。一度に与えられる在留期間は4か月、6か月、または1年(通常1年が一般的)であり、必要に応じて更新を繰り返して最長5年間まで在留できます。例えば初回1年の在留資格が許可された場合、契約更新とともに入管で在留延長申請を行い、問題なければさらに1年、といった形で合計5年まで延長が可能です。ただし特定技能1号として5年を超えて在留することはできません。5年満了時点で在留期間を延長するには、特定技能2号への移行等が必要となります。

一方、特定技能2号(より熟練した技能が必要な区分)に移行できれば在留期間の上限はなくなります。特定技能2号は1回の在留期間が最長3年(他に1年または6か月)まで付与され、更新回数にも制限がありません。造船・舶用工業分野は建設分野とともに特定技能2号への移行が認められる分野であり、将来的に外国人が長期就労しやすい枠組みが用意されています。2026年4月より本分野での特定技能2号評価試験の実施が予定されており、所定の試験(または技能検定1級相当)に合格すれば2号への移行が可能となります。2号に移行した外国人は、事実上在留期限の制約なく働き続けることが可能です。

永住権取得の可否: 特定技能の在留資格自体は永住権(日本での永久定住資格)ではありません。特定技能1号はあくまで一時的な就労ビザであり、5年経過後は在留できなくなるため、この資格のみで長期居住することはできません。特定技能2号に移行すれば在留継続は可能ですが、それでも自動的に永住許可が与えられるわけではありません。永住権を申請するには、原則10年以上の継続在留(うち就労資格で5年以上など)の要件や独立生計要件、素行善良要件などを満たす必要があります。特定技能2号で長期間在留し、これら条件を満たせば将来的に永住申請の道は開けますが、特定技能という資格そのものに永住権取得の優遇があるわけではない点に注意が必要です。

家族の帯同: 特定技能1号の大きな制約として、家族(配偶者や子ども)を日本に呼び寄せて帯同することは基本的に認められていません。特定技能1号の在留資格では**「家族滞在」ビザが原則許可されず**、単身での来日が前提となります。したがって、既婚者であっても配偶者や扶養児童を日本に呼ぶことはできず、5年の就労期間中は家族と離れて暮らすケースが多くなります。例外的に、日本で出生した子どもの在留特別許可等が認められる場合もありますが、一般には帯同不可と考えてください。

これに対し、特定技能2号に移行した場合は条件付きで家族の帯同が可能になります。特定技能2号の在留資格を持つ外国人は、その配偶者と未成年の実子に限り「家族滞在」の在留資格で日本に呼び寄せることが許されます。家族帯同には、技能2号の外国人本人が十分な収入を得て家族を養えること等の要件がありますが、概ね日本人の家族と同様の在留が認められるようになります。つまり、将来的に優秀な技能者として特定技能2号を取得すれば家族と日本で暮らすことも可能となるわけです。

まとめると、現段階(特定技能1号)では永住も家族帯同もできないものの、特定技能2号へのステップアップによって長期定着や家族帯同の道が開ける仕組みになっています。雇用主としては、受け入れ当初から「5年で帰国ありき」ではなく、本人の適性次第では2号への移行や将来的な定着も視野に入れ、キャリアアップ支援を検討する価値があるでしょう。

雇用主が知っておくべき注意点

最後に、特定技能外国人を受け入れるにあたり雇用主が留意すべきポイントをまとめます。法律上の禁止事項や運用面の注意を押さえて、適正な受け入れを行いましょう。

  • 保証金・違約金の禁止:特定技能外国人との契約で、保証金を預けさせたり、途中で辞めた場合の違約金を科すことは禁止されています。これは労働者の自由な意思を拘束し搾取する行為につながるため、契約条項にそのような取り決めを絶対に入れてはいけません。受け入れ時の事前ガイダンスにおいても、「保証金・違約金は禁止」であることを外国人に説明する義務があります。万が一違反が発覚すれば受入れ資格の取消し等の厳しい処分対象となるので注意してください。
  • 業務範囲の遵守:特定技能外国人には従事できる業務範囲が決まっており、契約書の職務内容にも明記します。造船・舶用工業分野では前述のように溶接や塗装など製造現場の作業に限られ、それ以外の雑用や他分野の仕事をさせることはできません。特に資格外活動に当たるような業務(例:工場とは無関係の清掃業務や、他業種の手伝いなど)を行わせると入管法違反となります。配置転換する場合も、当初の技能試験等で証明された分野・業務範囲内で行う必要があります。例えば「溶接」の技能で採用した人に、全く経験のない電気配線作業ばかりさせる、といったことがないようにしましょう。
  • 安全管理と教育:造船現場は高所作業や重量物の移動など危険も伴うため、労働安全衛生法に基づく安全教育や保護具の支給は必須です。日本人と同様に、安全帯の使用や作業前の安全講習を徹底してください。言葉の壁が原因で事故が起きないよう、多言語の安全マニュアルを用意したり、指示を平易な日本語で伝える工夫も大切です。特定技能外国人も労災保険の適用対象ですので、万一の事故時には適切に対処する義務があります。
  • 受入れ後の各種手続き:特定技能外国人を雇用開始・終了した際には、関係機関への届出が必要です。新規受入れ時は管轄ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」を行い、在留資格変更後には入管への受入報告書提出も求められます。契約が終了した場合(退職・解雇など)も14日以内に入管へ届出を行わねばなりません。また、先述の協議会や行政への定期報告も忘れずに実施しましょう。こうした事務手続きの漏れは違反とみなされる可能性があります。
  • 転職・離職時の対応:特定技能外国人は他社への転職が可能であり、雇用主が一方的に拘束することはできません。仮に人員整理等で雇用を継続できなくなった場合、前述の支援義務に従い次の受入先探しを支援する義務があります。逆に本人が自主退職するケースもありえますが、在留期間内であれば同業他社へ移籍可能なため、企業側は日頃から誠実に接して定着を図ることが大切です。なお、転職に伴う在留資格の変更手続きは本人と新たな受入れ企業が行いますが、旧雇用主も入管への通知など責任を果たしましょう。

以上が、特定技能「造船・舶用工業分野」に関する概要と留意点です。特定技能制度は、人材確保に悩む造船業界にとって貴重な戦力を得られる制度ですが、適切な運用と労務管理があってこそメリットが生きるものです。公式に定められたルールに基づき、外国人労働者が安心・安全に働ける環境を整備して受け入れを進めてください。日本の産業を支える仲間として迎え入れることで、企業にも本人にも有益な雇用関係を築いていきましょう。

参考資料: 出入国在留管理庁「特定技能(造船・舶用工業分野)」公式情報、国土交通省・法務省公表資料など。

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