
こんにちは。今日は、飲食料品製造業で働く外国人の方々を受け入れる「特定技能」という制度について、詳しくご説明します。これから社会に出る方や、業界で働き始めたばかりの方にも理解しやすいよう、比喩を交えながら丁寧に解説していきますね。
そもそも「特定技能」って何?制度の背景を知ろう
まず、この制度が生まれた背景からお話しします。
日本の食品製造業界は今、深刻な人手不足に直面しています。令和10年度には約21万人もの働き手が足りなくなると予測されているんです。これは例えるなら、10人で回していた工場を、7人で回さなければならない状態になるということです。
もちろん、業界も手をこまねいているわけではありません。ロボットやAI技術を導入したり、女性や高齢者が働きやすい環境を整えたりと、様々な努力をしています。実際、食品機械の国内販売額は過去7年間で14%も増加し、女性就業者の割合も53%と全製造業平均の28%を大きく上回っています。
しかし、それでもなお人手が足りない。なぜなら、食品製造の現場では目視による品質チェックや手作業による細かな加工が必要な工程も多く、完全に機械化することが難しいからです。また、2021年6月からは全ての食品製造業者に「HACCP(ハサップ)」という厳格な衛生管理システムの導入が義務付けられ、衛生管理の知識を持つ人材がさらに必要になりました。
そこで誕生したのが、「特定技能」という在留資格です。これは、一定の専門知識と技能を持った外国人の方々に、日本で働いてもらうための仕組みなんです。
特定技能には「1号」と「2号」がある!その違いとは?
特定技能には、「1号」と「2号」という2つのレベルがあります。これは車の運転免許で言えば、普通免許と大型免許のような関係だと考えてください。
特定技能1号:現場の即戦力として活躍
特定技能1号の方は、飲食料品(お酒を除く)の製造・加工、そして安全衛生の確保という業務に従事します。
具体的には何をするのでしょうか?「製造・加工」とは、原料の処理、加熱、殺菌、成形、乾燥といった食品を作り上げる一連の工程を指します。例えば、お弁当のおかずを作る工場で、材料を切ったり、炒めたり、盛り付けたりする作業ですね。
ただし注意が必要なのは、単なる選別や梱包だけの作業は「製造・加工」には当たらないということ。あくまでも食品を「作る」プロセスに関わる必要があるんです。
また、「安全衛生の確保」とは、使用する機械の安全確認や作業者の衛生管理など、職場の安全と食品の衛生を守る業務のことです。これは食品製造において非常に重要な役割ですね。
在留期間の上限は通算5年で、家族の帯同(一緒に日本に住むこと)は基本的に認められていません。
特定技能2号:熟練した技能でチームをまとめる管理者
一方、特定技能2号は、1号の業務に加えて「管理業務」も担当します。
これは、レストランで例えるなら、1号が「料理を作る料理人」だとすれば、2号は「料理人たちをまとめるシェフ」のような立場です。自分も料理をしながら、他のスタッフに指導し、全体の品質や納期、コストなどを管理するんです。
具体的には、衛生管理、品質管理、納期管理、コスト管理、従業員管理、原材料管理といった、工場長などの責任者の補佐役として働きます。そのため、企業は2号の方に「ライン長」や「班長」などの役職を与え、責任ある立場で業務に従事してもらうことが前提となっています。
特定技能2号になるには、技能試験に合格するだけでなく、2年以上の実務経験が必要です。この実務経験とは、「複数の従業員(2名以上)を指導しながら作業に従事し、工程を管理する」経験のこと。つまり、リーダーとして実際にチームを率いた経験が求められるんです。
特定技能2号には在留期間の上限がなく、条件を満たせば家族も一緒に日本で暮らすことができます。また、将来的には永住許可を申請することも可能です。
関連業務って何?付随的にできる仕事とは
特定技能外国人の方々は、メインの製造業務だけでなく、「関連業務」にも付随的に従事できます。
「付随的」とは、メインではないけれど、普段の仕事の流れの中で自然に発生する業務のこと。例えば、以下のような作業が含まれます:
- 原料の調達・受入れ:その日使う材料を倉庫から運んだり、届いた原料を受け取ったり
- 製品の納品:完成した製品をトラックに積み込んだり
- 清掃:作業場や機械を清潔に保つ
- 事業所の管理作業:工場内の整理整頓や備品の管理
ただし、ここで重要なのは**「付随的」という言葉**です。これらの関連業務だけを専門にやるのではなく、あくまでも製造・加工という主な仕事の一環として行うものなんです。
販売業務について:ケースバイケースの対応
ちょっと複雑なのが、販売業務についてのルールです。
街の小さなパン屋さんや和菓子屋さんのように、製造と販売が一体となっているお店では、お客様に商品を販売する業務にも付随的に従事できます。工房で作ったパンを店頭に並べたり、お客様に説明したりすることもOKというわけです。
しかし、総合スーパーマーケットや食品スーパーマーケットのバックヤードで食品製造をしている場合は、販売業務への従事は一切認められません。これは制度上、明確に禁止されているので注意が必要です。
どんな会社が外国人材を受け入れられるの?対象産業と条件
では、どのような企業が特定技能外国人を受け入れられるのでしょうか?
対象となる産業分野
以下のような業種が対象です:
- 畜産食料品製造業、水産食料品製造業、野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品製造業
- 調味料製造業、糖類製造業、精穀・製粉業
- パン・菓子製造業、動植物油脂製造業
- めん類製造業、そう菜製造業、豆腐・油揚製造業
- 清涼飲料製造業、茶・コーヒー製造業、製氷業
- 菓子・パン小売業(製造小売)、食料品スーパーマーケット(ただし食品製造を行うものに限る)
逆に、お酒の製造、医薬品の製造、ペットフード製造などは対象外です。
受け入れ企業に課される6つの重要な条件
特定技能外国人を受け入れる企業(これを「特定技能所属機関」と呼びます)には、以下の条件が課されます:
1. 協議会への加入義務
「食品産業特定技能協議会」という組織の構成員にならなければなりません。これは、農林水産省、業界団体、登録支援機関などで構成される組織で、制度の適正な運用を図るためのものです。協議会に加入することで、最新の情報を得たり、他の企業と情報交換したりできます。
2. 協議会への協力義務
協議会が実施する調査や情報共有などの活動に、必要な協力をしなければなりません。例えば、受入れ状況に関するアンケートに回答したり、好事例を共有したりすることが求められます。
3. 農林水産省の調査への協力義務
農林水産省や委託を受けた機関が行う調査や指導に対して、必要な協力を行うことが義務付けられています。制度の透明性を確保し、不適切な受入れを防ぐための仕組みです。
4. 登録支援機関の選択に関する条件
もし外国人の支援業務を登録支援機関に委託する場合は、協議会の構成員となっており、かつ農林水産省に協力する登録支援機関に委託しなければなりません。これにより、支援の質を担保しているんです。
5. キャリアアッププランの提示
外国人を雇用する前に、その方が将来どのように成長していけるのか、どんなキャリアパスがあるのかを示した**「キャリアアッププラン」を書面で説明**する必要があります。
これは、単に労働力として受け入れるのではなく、一人の人材として成長を支援するという姿勢の表れです。例えば、「1年目は基本的な製造作業を習得、2年目は品質管理の知識を学び、3年目にはリーダー候補として育成」といった具体的な計画を示します。
6. 実務経験証明書の交付義務
特定技能外国人から求めがあった場合、実務経験を証明する書面を交付しなければなりません。これは、その方が将来、特定技能2号に移行したり、キャリアアップしたりする際に必要な証明書となります。
また、重要なポイントとして、労働者派遣による受入れは認められていません。つまり、派遣会社から派遣してもらうのではなく、企業が直接雇用する必要があるということです。
技能実習との関係:すでに日本で学んだ人は試験免除!
ここで、もう一つの在留資格である**「技能実習」との関係**についてお話しします。
技能実習制度は、開発途上国の方々に日本の技術を学んでもらい、母国の発展に役立ててもらうという国際貢献の側面が強い制度です。一方、特定技能は、日本の人手不足を補うための制度という違いがあります。
実は、技能実習2号を良好に修了した方は、特定技能1号に移行する際、試験が免除されるという大きなメリットがあります。
技能試験の免除条件
飲食料品製造業に関連する特定の職種・作業の技能実習2号を良好に修了した方は、特定技能1号の技能測定試験が免除されます。
対象となる職種・作業には、以下のようなものがあります:
- 缶詰巻締
- 食鳥処理加工業
- 加熱性水産加工食品製造業、非加熱性水産加工食品製造業
- 牛豚食肉処理加工業、ハム・ソーセージ・ベーコン製造
- パン製造
- そう菜製造業
- 農産物漬物製造業
- 医療・福祉施設給食製造
これは、すでに日本で3年間しっかりと技能を学び、基準を満たした方であれば、即戦力として認めますという考え方に基づいています。
日本語試験の免除条件
さらに、職種を問わず、技能実習2号を良好に修了した方は、日本語試験も免除されます。
3年間日本で生活し、仕事をしてきた方であれば、日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力を持っていると判断されるためです。これはとても合理的な措置ですね。
特定技能になるにはどんな試験があるの?
技能実習を経由しない方が特定技能1号になるには、技能試験と日本語試験の両方に合格する必要があります。
技能測定試験について
「飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験」という試験で、飲食料品の製造・加工や安全衛生に関する知識と技能が問われます。
試験は一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)が実施しており、国内外で定期的に開催されています。令和7年度の試験スケジュールも公表されており、全国約10か所で実施される予定です。
試験勉強のために、学習用テキストが用意されており、試験問題はこのテキストの範囲から出題されます。また、労働安全に関する学習動画も公開されているので、受験を考えている方はぜひ活用してください。
日本語試験について
日本語能力については、以下のいずれかの試験に合格する必要があります:
- 国際交流基金 日本語基礎テスト(JFT-BASIC):日本語能力の基礎レベル(A2相当)を測定する試験
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上:より一般的に知られている日本語能力試験
N4レベルとは、「基本的な日本語を理解することができる」レベルです。具体的には、日常的な場面でゆっくり話される会話であればほぼ理解でき、基本的な語彙や漢字を使って書かれた文章を読めるレベルを指します。
特定技能2号へのステップアップ:さらなる高みへ
特定技能1号で経験を積んだ後、2号にステップアップすることも可能です。
特定技能2号になるための3つの条件
1. 技能測定試験の合格
「飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験」に合格する必要があります。この試験では、熟練した技能を持って自らの判断で適切に作業を行う能力が問われます。1号の試験よりもレベルが高く、管理業務に関する知識も求められます。
2. 管理等実務経験
2年以上の管理等実務経験が必要です。これは、飲食料品製造業分野において、「複数の従業員(2名以上)を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者」としての経験を指します。
例えば、ライン長や班長として、技能実習生やアルバイトスタッフなどに作業を指導し、製造工程の品質や進捗を管理してきた経験です。指導する相手は必ずしも同じ人物である必要はなく、シフトの都合などで一時的に指導対象がいない時間があっても問題ありません。
3. 役職の付与
企業側は、2号特定技能外国人に対して、実際に管理業務を担当できる役職(ライン長、班長、主任など)を命じる必要があります。
これは名目だけでなく、実際に工場長などの補佐として管理業務を行う立場に就くということです。
受入れ規模:5年間で最大13万9,000人
飲食料品製造業分野では、令和6年度からの5年間で、最大13万9,000人の特定技能1号外国人を受け入れることが計画されています。
この数字は、将来の人手不足予測(21万人)から、生産性向上による削減分(3万人)と国内人材確保による増加分(5万人)を差し引いた上で、さらに食品スーパーマーケットのバックヤード製造部門の不足分(9,000人)を加えた数です。
つまり、あらゆる努力を尽くしてもなお足りない部分を、特定技能外国人の方々に補っていただくという考え方なんです。
この数字は上限であり、実際の受入れ人数は労働市場の状況に応じて調整されます。有効求人倍率などの指標を見ながら、必要に応じて在留資格認定証明書の交付を一時停止したり、再開したりする仕組みになっています。
地域への配慮:大都市集中を防ぐ工夫
制度設計においては、特定技能外国人が大都市圏に過度に集中しないよう、様々な配慮がなされています。
全国各地での試験実施
技能測定試験は、大都市だけでなく地方も含めて全国約10か所で実施されます。これにより、地方の企業でも外国人材を確保しやすくなっています。
地域の実情に応じた支援
農林水産省は、協議会での議論を踏まえ、特に人手不足が顕著な地域においては、その地域での試験開催場所や頻度を調整するなど、柔軟な対応を行います。
食品製造業は地域経済において非常に重要な役割を担っています。経済センサスによれば、食品製造業の事業所数は製造業の中で金属製品製造業に次いで多く、就業者数は第1位です。また、三大都市圏とそれ以外の地域で就業者数に大きな偏りがなく、地方においても主要産業となっているんです。
外国人の方々への支援体制:安心して働ける環境づくり
特定技能外国人の方々が安心して働き、生活できるよう、充実した支援体制が整えられています。
1号特定技能外国人支援計画
受入れ企業または登録支援機関は、「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、以下のような支援を行います:
- 入国前の生活ガイダンス(日本での生活ルールや働き方について説明)
- 住居確保の支援(アパート探しのお手伝い)
- 銀行口座開設、携帯電話契約などの生活に必要な手続きの支援
- 日本語学習の機会提供
- 日本人との交流促進
- 転職支援(必要な場合)
- 定期的な面談(困りごとがないか確認)
これらの支援は、外国人の方が言語や文化の違いに戸惑うことなく、スムーズに日本での生活をスタートできるよう設計されています。
無料相談窓口の設置
農林水産省は、特定技能制度に関する無料相談窓口を設置しています:
- 受入れ機関・登録支援機関向け窓口:03-6630-8179
- 外国人材向け窓口(通訳対応あり):03-6628-8605
- 受付時間:10:00~17:30(土日・祝日・年末年始を除く)
- メールアドレス:maff-gaikokujinzai@jtb.com
制度についての疑問や困りごとがあれば、いつでも相談できる体制が整っているんです。
食品産業特定技能協議会:みんなで制度を支える仕組み
最後に、「食品産業特定技能協議会」について説明します。
この協議会は、農林水産省、関係業界団体、登録支援機関、その他の関係者で構成される組織で、以下のような役割を担っています:
- 制度や情報の周知:最新の制度改正や運用方針について、構成員に情報を提供
- 法令遵守の啓発:適正な受入れを促進するための啓発活動
- 地域ごとの人手不足状況の把握:各地域の実情を把握し、必要な対応を検討
- 構成員間の連携強化:好事例の共有や課題解決のための協力体制づくり
飲食料品製造業分野と外食業分野が共同で設置しており、両分野の受入れ機関は必ず加入しなければなりません。また、これら2分野の受入れ機関を全部支援する登録支援機関も、加入が義務付けられています。
協議会は、制度の透明性を確保し、外国人材が適切に受け入れられ、活躍できる環境を作るための重要な役割を果たしているんです。
まとめ:共生社会の実現に向けて
飲食料品製造業分野における特定技能制度は、単に人手不足を補うだけの仕組みではありません。
それは、日本と外国の方々が共に働き、共に成長し、共に社会を支えていく「共生社会」を実現するための大切な一歩なんです。
外国人材の方々は、専門的な技能を持ち、日本の食品製造業の品質と安全を支える重要な担い手です。そして、彼らがキャリアアップし、やりがいを持って働ける環境を整えることは、企業にとっても、日本社会にとっても、大きなプラスになります。
これから社会人として働き始める皆さん、あるいはすでに食品製造業で働いている皆さんが、この制度を理解し、外国人の同僚と良好な関係を築いていくことが、これからの日本の食品産業を支える力になるのではないでしょうか。
制度の詳細については、農林水産省や法務省のウェブサイト、そして無料相談窓口を活用してください。疑問があれば、いつでも専門家に相談できる体制が整っています。
みんなで力を合わせて、より良い職場環境、より良い社会を作っていきましょう!
参考リンク集


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