
宿泊業界で働く外国人の方へ:特定技能制度を分かりやすく解説
こんにちは。今回は、日本のホテルや旅館で働く外国人の方に関する制度について、できるだけ分かりやすくご説明します。「特定技能」という言葉を聞いたことはありますか? これは、日本で特定の分野において即戦力として働ける外国人の方を受け入れるための制度です。今回は、その中でも「宿泊分野」に焦点を当ててお話しします。
そもそも「特定技能」って何?
まず、制度の全体像から説明しましょう。日本では少子高齢化が進んでおり、働き手が不足しています。特に観光業界では、外国からのお客様が増えているのに、それに対応できる人材が足りないという状況が続いています。
例えば、2030年には訪日外国人旅行者が6,000万人になることを目指していますが、それを支えるホテルや旅館で働く人が足りません。具体的には、2024年現在で既に約2万人の人手不足があり、今後さらに深刻化して、2028年度には全国で約7万4,000人もの人手不足が見込まれています。
そこで、一定の技能と日本語能力を持つ外国人の方に日本で働いていただこう、という制度が「特定技能」です。これには「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つのレベルがあります。
特定技能1号と2号の違い
特定技能1号は、まさに「即戦力」として働ける方向けの資格です。ある程度の知識や経験があり、指導を受けながらホテルや旅館でさまざまな仕事ができる方が対象です。最大5年間日本で働くことができます。
特定技能2号は、さらに高度なレベルです。複数のスタッフを指導しながら、より責任のある仕事ができる「熟練した技能」を持つ方が対象です。こちらは在留期間の制限がなく、家族を日本に呼び寄せることもできます。
これを料理に例えるなら、1号は「レシピを見ながらしっかり料理が作れる人」、2号は「後輩に教えながらメニュー開発もできるベテランシェフ」といったイメージです。
宿泊分野でできる仕事
では、具体的にどんな仕事ができるのでしょうか?
特定技能1号の方ができる主な仕事
- フロント業務: チェックイン・チェックアウトの対応、周辺観光地の案内、ホテル発着ツアーの手配など
- 企画・広報業務: 特別プランの立案、館内案内チラシの作成、ホームページやSNSでの情報発信など
- 接客業務: 館内でのご案内、お客様からのお問い合わせ対応など
- レストランサービス業務: 注文対応、配膳・片付け、料理の下ごしらえ・盛り付けなど
これらの仕事に加えて、日本人スタッフが普段やっている関連業務(例えば、館内の売店での販売業務や備品の点検・交換など)にも付随的に関わることができます。ただし、そうした関連業務「だけ」をするのは認められていません。あくまで、上記の主な業務を中心に働くことが求められます。
特定技能2号の方ができる仕事
2号になると、上記の業務を複数のスタッフを指導しながら行います。つまり、チームリーダーや先輩として、後輩を育てながら働く立場になります。より責任のある、管理的な役割を担うことになります。
働くために必要な資格・条件
試験について
特定技能1号になるためには:
- 技能試験: 「宿泊分野特定技能1号評価試験」に合格する必要があります
- 日本語試験: 「日本語能力試験(N4以上)」または「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格する必要があります
ただし、宿泊職種の技能実習2号を良好に修了した方は、これらの試験が免除されます。技能実習で3年間しっかり学んだ方は、すでに十分な技能と日本語能力があると認められるためです。
特定技能2号になるためには:
- 技能試験: 「宿泊分野特定技能2号評価試験」に合格する必要があります
- 実務経験: 宿泊施設で複数の従業員を指導しながら、フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の業務に2年以上従事した実務経験が必要です
2号は単に試験に合格するだけでなく、実際に現場で後輩を指導した経験が求められるのです。
働く場所(受入れ機関)の条件
外国人の方を受け入れるホテルや旅館には、厳しい条件が定められています。これは、外国人の方が安心して働ける環境を確保するためです。
必ず満たすべき条件
- 正式な旅館・ホテルであること
- 旅館業法に基づく「旅館・ホテル営業」の許可を受けている施設である必要があります
- 簡易宿所や下宿は対象外です
- いわゆるラブホテルなど、風俗営業法で規制されている施設では働くことができません
- また、外国人の方に接待行為をさせることは禁止されています
- 直接雇用であること
- 派遣社員としての受入れは認められていません
- ホテルや旅館が直接雇用する形でなければなりません
- これは、雇用の安定と適切な労働環境を確保するためです
- 協議会への参加
- 国土交通省が設置する「宿泊分野特定技能協議会」の構成員になる義務があります
- これは、外国人の方の受入れを適正に行い、業界全体で情報共有するための組織です
- 2024年6月15日からは、初めて外国人の方を受け入れる場合でも、申請の時点で協議会の構成員になっている必要があります
- 調査や指導への協力
- 国土交通省や協議会が行う調査や指導に協力する義務があります
- これを拒否すると、外国人の方を受け入れ続けることができなくなります
- 実務経験証明書の交付
- 外国人の方から求められたら、実務経験を証明する書面を交付する義務があります
- これは、将来特定技能2号に進むときなどに必要な書類です
受入れ人数の上限
この制度では、無制限に受け入れられるわけではありません。2024年度から2028年度までの5年間で、最大2万3,000人を受け入れる計画になっています。
この数字は、どのように決まったのでしょうか? まず、2028年度には7万4,000人の人手不足が見込まれています。しかし、その不足をすべて外国人の方で補うのではなく、まず次のような努力をします:
- 生産性向上: マルチタスク化の推進、スマートチェックイン、清掃ロボット、配膳ロボットなどの導入により、4%程度(約2万4,000人分)の省人化を図る
- 国内人材確保: 賃上げ、労働環境の改善、女性・高齢者・若者などの就業促進により、約2万7,000人を確保
それでもなお不足する約2万3,000人を、特定技能外国人の方で補うという計画です。つまり、機械化や働きやすい環境づくりを進めながら、それでも足りない部分を外国人の方の力で補うという考え方です。
生活支援について
特定技能1号の方には、生活を支援する仕組みもあります。受け入れるホテルや旅館、または登録支援機関が、以下のような支援を行います:
- 日本での生活オリエンテーション
- 住居確保の支援
- 生活に必要な契約の支援
- 日本語学習の機会提供
- 相談・苦情対応
- 日本人との交流促進
- 非自発的な離職時の転職支援
これらは、外国から来た方が日本での生活にスムーズに適応できるよう、きめ細かくサポートする仕組みです。
地域バランスへの配慮
観光は地方創生にもつながる重要な産業です。外国人観光客が東京、大阪、京都だけでなく、日本各地を訪れるようになっています。そのため、特定技能外国人の方が大都市圏だけに集中しないよう、以下のような取り組みが行われています:
- 地方自治体における相談窓口の設置
- ハローワークによる地域の就職支援
- 協議会を通じた地域別の人手不足状況の把握
- 各地域の魅力や受入れ環境についての情報発信支援
地方の素晴らしい温泉旅館や観光地でも、外国人の方が活躍できる環境を整えようとしています。
安全・安心への配慮
外国人の方を受け入れるにあたっては、治安への影響も考慮されています。国土交通省は関係機関と連携して、問題が発生していないか常に把握し、必要に応じて対策を講じる体制を整えています。
また、もし深刻な治安上の問題が生じるおそれがある場合には、受入れを一時停止する措置も定められています。これは、日本で暮らす皆さんの安全と、外国人の方の権利の両方を守るための仕組みです。
まとめ:共に成長する制度を目指して
特定技能制度は、単に人手不足を補うだけの制度ではありません。日本の宿泊業界が直面している課題を、日本人と外国人が協力して解決し、共に成長していくための仕組みです。
外国人の方には、日本のおもてなしの心を学び、高い技能を身につけていただく。そして日本側は、外国人の方が安心して働き、生活できる環境を整える。お互いを尊重し、支え合う関係を築くことが、この制度の本質です。
観光立国を目指す日本にとって、世界中から来るお客様をお迎えするホテルや旅館は、まさに日本の顔です。そこで働く外国人の方は、国際的な視点と経験を持つ貴重な人材として、日本の観光業界の未来を担う存在になるでしょう。
この制度を通じて、多様性のある職場、魅力的なキャリアパス、そして相互理解と成長の機会が生まれることを期待しています。
参考情報
- 詳しい情報は法務省のウェブサイトや国土交通省観光庁のウェブサイトをご覧ください
- 分からないことがあれば、国土交通省(観光庁)や最寄りの出入国在留管理局にお問い合わせください


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