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外国人材と創る未来! 外食業の特定技能活用ガイド

目次

はじめに

レストランや居酒屋、ファストフード店などで働く人手が足りない――。そんな課題を解決するために生まれたのが、外食業分野における「特定技能」という在留資格制度です。この制度について、初めて知る方にも理解できるよう、丁寧にご説明していきます。


1. そもそも「特定技能」って何?

まず、特定技能とは、日本で働くための在留資格(ビザのようなもの)の一種です。

例えば、あなたが海外旅行に行くときにビザが必要なように、外国人が日本で働くためには適切な資格が必要です。特定技能は、日本の特定の業界で人手不足が深刻な場合に、一定の技能を持つ外国人材を受け入れるための制度なのです。

この制度は2019年に始まり、介護、建設、農業、そして外食業など、全16分野で実施されています。外食業は、私たちが日常的に利用する飲食店やレストランが該当する分野です。

出典:法務省「外食業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」


2. なぜ外食業界で外国人材が必要なの?

深刻化する人手不足

外食業界では、有効求人倍率(求人数÷求職者数)が非常に高い状況が続いています。2022年度のデータでは、以下のような数字が出ています:

  • 飲食店主・店長:7.11倍
  • 接客係(ホール担当など):5.06倍
  • 調理人:3.12倍

これは、求人が求職者の3倍以上あるという状態です。例えるなら、3人分の仕事があるのに1人しか働ける人がいない状況です。全業種平均の1.19倍と比べると、いかに人手不足が深刻かが分かります。

将来的にはもっと人が足りなくなる

2028年度には、外食業界で約25万3,000人が不足すると推計されています。これは東京ドーム約5個分の人数に相当する規模です。

生産性向上のために、セルフレジやタブレット注文システムなどのIT化を進めたり、働きやすい環境を整えて女性や高齢者の雇用を増やしたりしても、それだけでは人手不足を解消できない見込みです。

そこで、即戦力として働ける外国人材を最大5万3,000人(5年間)受け入れることになりました。

出典:農林水産省「外食業分野における外国人材の受入れについて」


3. 特定技能には「1号」と「2号」がある

特定技能には、1号2号という2つのレベルがあります。これは車の運転免許で言えば、普通免許と大型免許のような関係です。

特定技能1号:現場で働く即戦力

従事できる業務:

  • 飲食物の調理(食材の仕込み、加熱調理、盛り付けなど)
  • 接客(席への案内、注文対応、配膳、会計など)
  • 店舗管理(衛生管理、シフト管理、発注業務など)

必要な要件:

  • 技能試験:「外食業特定技能1号技能測定試験」に合格
  • 日本語試験:「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験N4以上」に合格

※技能実習2号を良好に修了した人は試験が免除されます。

**在留期間:**最長5年間

特定技能2号:現場をまとめるリーダー

従事できる業務:

  • 1号の業務すべて
  • 店舗経営(経営分析、経営管理、契約事務など)
  • 複数のスタッフを指導・監督しながら店舗全体を管理する業務

必要な要件:

  • 技能試験:「外食業特定技能2号技能測定試験」に合格
  • 日本語試験:「日本語能力試験N3以上」に合格
  • 実務経験:食品衛生法の営業許可を受けた飲食店で、複数のアルバイトや特定技能外国人を指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する者(副店長、サブマネージャーなど)として2年間の実務経験

**在留期間:**更新可能(実質的に制限なし)

特定技能2号は、いわば**「現場のリーダー」**として、店舗をトータルで管理できる人材です。

出典:法務省「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-外食業分野の基準について-」


4. どんな飲食店で働けるの?

特定技能外国人が働けるのは、飲食サービス業を行っている事業所です。具体的には以下のような業態が該当します:

(1) その場で食べてもらうお店

レストラン、食堂、カフェ、居酒屋、ファストフード店など、お客様が店内で飲食する店舗。

(2) 持ち帰り専門店

テイクアウト専門のお弁当屋さんやデリバリー専門店など。

(3) 配達サービス

仕出し弁当、宅配ピザ、デリバリー専門店など、お客様の指定する場所に料理を届けるサービス。

(4) ケータリング・給食

イベント会場で調理・提供するケータリングサービスや、病院・福祉施設・学校などの給食サービス。

注意点:

  • ホテルや医療施設内の飲食部門でも働けます(飲食サービスが主でなくても可)
  • ただし、風俗営業性風俗関連特殊営業の店舗では働けません
  • お客様をもてなす「接待」行為も禁止されています

出典:法務省「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-外食業分野の基準について-」


5. 試験はどうやって受けるの?

技能試験

**実施機関:**一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)が実施しています。

試験内容:

  • 飲食物の調理に関する知識と技能
  • 接客に関する知識と技能
  • 店舗管理(衛生管理含む)に関する知識

試験場所:

  • 国内:全国10か所程度で実施
  • 海外:フィリピン、インドネシア、カンボジア、ミャンマー、ネパールなど複数の国で実施

学習方法:
一般社団法人日本フードサービス協会が作成した学習用テキストが無料で公開されています。試験のサンプル問題も農林水産省のウェブサイトで確認できます。

日本語試験

1号の場合:

  • 「国際交流基金日本語基礎テスト」または
  • 「日本語能力試験N4以上」

これは、基本的な日本語を理解し、日常会話ができるレベルです。

2号の場合:

  • 「日本語能力試験N3以上」

これは、日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できるレベルで、より高度なコミュニケーションが求められます。

出典:農林水産省「外食業分野における外国人材の受入れについて」


6. 受入れ機関(雇用する側)の条件は?

外国人材を受け入れる飲食店や企業には、以下の条件が課されます:

(1) 協議会への加入が必須

**「食品産業特定技能協議会」**という組織の構成員になる必要があります。この協議会は、農林水産省、業界団体、登録支援機関などで構成され、制度の適正な運用や情報共有を行う場です。

  • **入会のタイミング:**初めて特定技能外国人を受け入れる前
  • **会費:**当面の間、無料
  • **加入審査:**1~2カ月かかるため、計画的に申請が必要

(2) 風俗営業への従事禁止

特定技能外国人を風俗営業や性風俗関連特殊営業の店舗で働かせてはいけません。また、「接待」行為をさせることも禁止されています。

(3) キャリアアッププランの提示

雇用契約を結ぶ前に、どのようにスキルアップしていけるかというイメージを書面で説明する必要があります。これは、外国人材が将来のキャリアを描けるようにするための配慮です。

(4) 実務経験証明書の交付

特定技能外国人から求めがあれば、どのような業務を経験したかを証明する書面を交付する義務があります。

(5) 直接雇用のみ

派遣形態での雇用は認められません。飲食店が直接雇用する必要があります。

出典:法務省「外食業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」


7. 支援体制はどうなっているの?

特定技能1号の外国人には、1号特定技能外国人支援計画に基づいた支援が必要です。これは、日本での生活や仕事をスムーズに始められるようサポートする仕組みです。

主な支援内容

  • **入国前の支援:**事前のガイダンス、住居確保の支援
  • **入国後の支援:**空港への出迎え、生活オリエンテーション、日本語学習の機会提供
  • **日常生活の支援:**行政手続きの同行、相談・苦情への対応、日本人との交流促進

企業が自ら支援を行うことが難しい場合は、登録支援機関に委託することができます。ただし、委託先も協議会の構成員である必要があります。

相談窓口の設置

農林水産省は、外食業分野で働く外国人や受入れを希望する事業者向けに無料の相談窓口を設置しています:

  • **電話:**03-6630-8179(平日10:00~17:30)
  • **メール:**maff-gaikokujinzai@jtb.com

制度について分からないことがあれば、気軽に相談できます。

出典:農林水産省「外食業分野における外国人材の受入れについて」


8. 地域による偏りを防ぐ工夫

特定技能制度では、大都市圏に外国人材が集中しないよう配慮されています。

試験の実施場所を工夫

  • 国内試験は全国10か所程度で実施
  • 北陸、中四国など大都市圏以外でも試験を実施

地域の人手不足に応じた支援

人手不足が特に深刻な地域では、試験の開催場所や頻度を調整するなど、その地域で外国人材が働きやすくなるような支援が行われます。

観光地や地方都市でも、外国人材の力を借りて飲食サービスを充実させることができるのです。

出典:法務省「外食業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」


9. 衛生管理の重要性

2021年6月から、すべての飲食店に**HACCP(ハサップ)**に沿った衛生管理が義務化されました。

HACCPとは、食品の安全を守るための工程管理システムです。例えるなら、料理を作る過程で「この段階で細菌が増えやすい」「ここで温度管理が重要」といったポイントを把握し、継続的にチェック・記録する仕組みです。

特定技能外国人も、このHACCPを含む衛生管理の知識を持つ人材として期待されています。試験でも衛生管理に関する項目が含まれています。

出典:法務省「外食業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」


10. 処遇改善と労働環境の向上

外食業界では、人手不足を受けて給与の引き上げ働き方の改善が進んでいます。

給与水準の向上

2019年と2023年を比較すると、宿泊業・飲食サービス業の時間当たり給与額は14.2%増加しました。これは全産業平均の4.3%を大きく上回る伸び率です。

働きやすい環境づくり

  • 有給休暇の取得日数が増加(2017年:5.4日 → 2023年:6.7日)
  • 定年延長や再雇用制度の導入率が向上(2017年:85.4% → 2022年:91.7%)
  • 育児・介護に配慮した働き方の推進(地域限定正社員制度など)

外国人材も日本人と同等の労働条件で働くことが求められており、適切な処遇が保障されています。

出典:法務省「外食業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」


11. 受入れ事例:実際にどんな風に働いているの?

農林水産省のウェブサイトでは、特定技能外国人を受け入れた飲食店の事例が紹介されています。

例えば:

  • ファミリーレストランで調理と接客を担当し、店舗運営に欠かせない存在に
  • 地方の観光地にある旅館で、外国人観光客への対応でも活躍
  • 給食サービスで、献立作成や衛生管理にも携わる

特定技能外国人は、単なる労働力ではなく、チームの一員として評価され、キャリアアップの機会も与えられています。

出典:農林水産省「外食業分野における外国人材の受入れについて」


12. 2号試験に不合格でも在留期間延長のチャンス

2025年6月30日以降、特定技能2号の試験に不合格になった1号の外国人でも、一定の条件を満たせば最長1年間在留期間を延長できる措置が始まりました。

条件

  • 2号試験で合格基準点の8割以上を取得
  • 日本語能力試験N3以上に合格
  • 在留期間を超えることに相当の理由がある

これは、もう少しで2号に昇格できそうな外国人に、再チャレンジの機会を与えるための制度です。

出典:農林水産省「外食業分野における外国人材の受入れについて」


まとめ

外食業分野における特定技能制度は、人手不足という課題を解決しながら、外国人材にもキャリアの機会を提供するWin-Winの仕組みです。

ポイントのおさらい

  1. 特定技能1号は現場で働く即戦力、2号は店舗を管理するリーダー
  2. 試験に合格し、日本語能力も証明する必要がある
  3. レストラン、カフェ、給食など幅広い飲食サービス業で働ける
  4. 受入れ企業は協議会への加入や適切な支援が必要
  5. 大都市圏への集中を防ぎ、地域全体で外国人材を活用
  6. 給与水準の向上や働きやすい環境づくりが進んでいる

外食業界にとって、特定技能制度は未来への投資です。適切な受入れと支援を行うことで、外国人材は日本の飲食文化を支える大切なパートナーになります。

これから外食業で外国人材の受入れを検討している方、または制度について知りたい方は、ぜひ農林水産省や相談窓口を活用してみてください。


参考リンク:


以上、外食業分野における特定技能制度について、できるだけ分かりやすく解説しました。この制度が、外食業界と外国人材の双方にとって良い未来を築く一助となることを願っています。

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