第四回 中小企業新事業進出促進補助金を三次市周辺の中小企業が活用するための実務ガイド
はじめに
広島県の三次市(みよしし)、庄原市(しょうばらし)、安芸高田市(あきたかたし)などでは、こんな悩みを抱えている事業者の方が少なくありません。
- 「既存事業だけでは伸びしろが見えにくい」
- 「設備投資に踏み切りたいが、資金負担が重い」
- 「新しい市場に挑戦したい」
こうした悩みが経営判断の中心に来やすい局面で、検討候補になるのが国の中小企業支援策である**「中小企業新事業進出促進補助金(通称:新事業進出補助金)」**です。
この補助金は、既存事業と異なる事業への前向きな挑戦を後押しするものです。新市場・高付加価値事業への進出を支援し、生産性向上と賃上げにつなげることを目的としています。
第四回公募要領の公開は中小企業庁が告知しており、公募要領や各種ガイド、電子申請の案内は独立行政法人中小企業基盤整備機構の専用サイトから確認できます。
本記事は、**第四回公募(公募要領公開:2026年3月27日)**を前提に、「広島県 補助金」「三次市 補助金」などで情報を探す方に向けて、制度の全体像と申請準備の要点を整理したものです。
ご注意ください: 公募要領やガイドは改訂されることがあるため、申請直前には必ず公式資料の最新版を確認してください。
制度の概要をひと目で押さえる
① 補助金額 ─ 従業員数に応じて上限が変わる
補助金額の下限は750万円です。上限は従業員数に応じて以下のように分かれます。
| 従業員数 | 通常の上限額 | 賃上げ特例適用時の上限額 |
|---|---|---|
| 20人以下 | 2,500万円 | 3,000万円 |
| 21〜50人 | 4,000万円 | 5,000万円 |
| 51〜100人 | 5,500万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 |
② 補助率
- 原則:1/2
- 地域別最低賃金引上げ特例の適用を受ける場合:2/3
③ 補助対象経費
機械装置・システム構築費、建物費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、広告宣伝・販売促進費が対象です。
④ 補助対象者
日本国内に本社および補助事業実施場所を有する中小企業等で、業種ごとの資本金や常勤従業員数の基準を満たすことが前提です。
なお、要件は公募開始日に満たしている必要があります。補助金対象となることだけを目的とした資本金・従業員数等の形式的な変更は対象外となり得る点に注意が必要です。
⑤ スケジュール
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 申請受付開始 | 2026年5月19日(火) |
| 申請期限 | 2026年6月19日(金)18:00(厳守) |
| 採択結果(予定) | 2026年9月頃 |
⑥ 申請要件 ─ 「新事業進出」+「成果目標」がセット
3〜5年の事業計画で、「新事業進出」と「成果目標」をセットで満たすイメージです。
新事業進出の要件
以下の3点を満たす必要があります。
- 製品・サービスの新規性
- 市場の新規性
- 新事業売上高要件 ─ 事業計画最終年度に、新製品等の売上高が総売上高の10%、または付加価値額が総付加価値額の15%を占める見込み等
成果目標
- 付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年平均成長率 4.0%以上
- 一人当たり給与支給総額の年平均成長率 3.5%以上
- 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上
- 一般事業主行動計画の公表
要注意: 賃上げ要件や事業場内最低賃金水準要件は、未達の場合に補助金返還の対象となり得ます。
賃上げ特例(上限額の引上げ)
上限額が引き上がる賃上げ特例の条件は次のとおりです。
- 一人当たり給与支給総額の年平均成長率を6.0%以上
- 事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げる計画
未達の場合は、「上限額引上げ分」の返還が求められ得ます。
地域別最低賃金引上げ特例(補助率2/3への引上げ)
2024年10月〜2025年9月の間に、主たる実施場所で雇用している従業員のうち「当該期間の地域別最低賃金以上かつ2025年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が30%以上である月が3か月以上あることが条件です。確認のために指定様式や賃金台帳の提出が求められます。
この特例を適用する場合は、基本要件から事業場内最低賃金水準要件(+30円)が除かれる扱いになります。
⑦ 公式サイト
補助金事務局URL: https://shinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp/
想定される活用事例
こんな課題を抱えていませんか?
事業者様が従来から抱えておられる問題点として、以下のようなものが挙げられます。
- 需要の先細りや人手不足で、既存事業の単価・生産性が伸び悩んでいる
- 県外や新しい顧客層に向けた販路開拓に必要な投資(設備、システム、建物改修、販促)が、資金面で重くなっている
こうした課題は「中小企業 支援」「事業拡大 補助金」「地域 活性化 補助金」を検討する場面でも重なりやすく、設備投資の意思決定に直結します。制度上も、建物費を含め新事業に必要な機械装置・システム構築費などが幅広く補助対象になり得る点が、課題のボトルネックを外しやすい設計になっています。
事例1:食品加工業が自社ブランド化に挑戦するケース
たとえば「三次市 食品加工(仮称)」が、従来の下請け中心から脱し、地元素材を活かした高付加価値商品の自社ブランド化に挑戦する場合を考えてみましょう。
以下のような一連の投資をまとめて設計できます。
- 加工設備の導入 → 機械装置費
- 衛生対応のための改修 → 建物費
- ECや受発注に関するシステム整備 → システム構築費
- 展示会出展やWeb制作等 → 広告宣伝・販売促進費
なお、広告宣伝・販売促進費は、事業計画期間1年あたりの新製品等の売上見込み額(税抜)の5%が上限の考え方として示されているため、売上計画との整合性が計画品質のポイントになります。
事例2:金属加工業が新分野へ進出するケース
「庄原市 金属加工(仮称)」が、新たな顧客層・用途向けの部品分野へ進出する場合には、以下の経費を活用して設計・評価・知財整理を段階的に進める方針も取り得ます。
- 外注費 ─ 補助金額全体の10%が上限
- 専門家経費 ─ 上限100万円
ただし、単なる増産や小変更は新事業進出に該当しない例として整理されています。「自社にとっての新規性」と「市場の新規性」を客観データで説明できる形にしておくことが重要です。
概要の詳細解説
① 補助金額 ─ 投資規模の見極めがカギ
従業員数区分で上限が変わり、下限(750万円)もあるため、投資規模が小さすぎると制度に乗りません。逆に大きな投資を組む場合は、賃上げ特例の適用可否で上限が変わるため、賃金目標の達成可能性を現実的に見積もることが肝心です。
② 補助率 ─ 「後から精算」を前提に資金繰りを設計
補助率は原則1/2ですが、資金繰り上は**「補助金は後から精算される」と考えて準備するのが実務的**です。
2/3となる地域別最低賃金引上げ特例は、確認書類提出が前提です。適用すると事業場内最低賃金水準要件(+30円)が除かれる扱いになるため、どちらの要件設計が自社の実態に合うかを検討して選択します。
③ 補助対象経費 ─ 費目ごとの”線引き”に注意
補助対象経費は幅広い一方で、費目ごとに細かなルールがあります。
- 外注費: 補助金額全体の10%が上限。書面契約が必要
- 専門家経費: 上限100万円。謝金単価の目安も示されている
- クラウドサービス利用費: 補助事業専用に限られ、端末本体は対象外
- 広告宣伝・販売促進費: 上限の考え方(売上見込みの5%)が示されており、ウェブサイト構築費が一定額以上の場合は根拠資料の提出が求められる
いずれの費目も、実績報告まで見据えた設計が必要です。
④ 補助対象者 ─ 形式的な操作は要注意
業種別の資本金・常勤従業員数基準で整理され、該当性は決算書や労働者名簿等の添付書類で示します。
申請のためだけに形式的に基準を満たすような操作がある場合、申請時点に遡って対象外となり得る点は、地味ですが重要なコンプライアンス論点です。
⑤ 申請期限 ─ 前提手続きを”締切から逆算”する
申請期限に間に合わせるために最も大切なのは、前提手続きを”締切から逆算”することです。
- GビズIDプライムの発行: 原則1週間程度
- 一般事業主行動計画の公表手続き: 1〜2週間程度
遅れによる期限延長は認められない旨が注意喚起されています。早めの着手が安全です。
⑥ 申請要件 ─ 3つの軸で漏れなく確認
申請要件は、以下の3つに分けて漏れなく確認するのが安全です。
- (A) 新事業進出要件 ─ 新市場性・高付加価値性を客観データで説明する
- (B) 付加価値・賃上げ等の数値要件 ─ 達成可能性を現実的に見積もる
- (C) 行動計画公表等の手続き要件 ─ 手続きのリードタイムを確保する
審査では、新市場性・高付加価値性の客観的な説明に加え、事業の実現可能性や補助の必要性なども評価されます。必要に応じて口頭審査が行われる場合もあるため、早めに電子申請を完了し、追加対応の余力を残しておくことが実務上有利です。
具体的な申請手順
申請は電子申請のみで、紙では受け付けられません。大まかな流れは次のとおりです。
ステップ1:GビズIDプライムを取得する
発行に時間がかかるため、早めに着手してください。
ステップ2:一般事業主行動計画を策定・公表する
一般事業主行動計画は、厚生労働省の解説によれば、企業が仕事と子育ての両立支援等に取り組むための計画です。従業員101人以上の企業には策定・届出、公表・周知が義務付けられています。
ステップ3:事業計画を作成する
事業計画テンプレート等を用い、以下の要素を一貫したストーリーでまとめます。
- 既存事業の整理
- 補助事業の取組内容
- 新事業進出指針への該当性
- SWOT分析
- 競合分析
- 収益計画
- 補助対象予定経費
ステップ4:電子申請システムで応募する
公式サイトで示される流れに沿い、補助金情報の確認、事業計画の検討、必要に応じた支援機関への相談を経て、電子申請システムで応募申請を行います。
重要: 外部支援者の助言は可能ですが、申請者自身が責任を持って作成する必要があります。申請者以外が作成自体を行うことは認められていません。電子申請システムには代理申請の委任関係を管理する機能がない旨も明記されています。
添付書類について
決算書、労働者名簿、確定申告関係書類、納税証明書等が基本になります。特例や加点を希望する場合は、要件確認書や賃金台帳などが追加されます。
迷ったら、申請者属性別の添付書類一覧で自社に必要な組み合わせを確認し、ファイル形式や名称も含めて整えることが安全です。
まとめ
第四回中小企業新事業進出促進補助金は、最大9,000万円規模までの投資を後押しし得る「事業拡大 補助金」です。設備投資から販促までを一体で設計しやすいのが大きな特徴です。
一方で、新事業進出の定義、付加価値・賃上げ等の数値目標、行動計画の公表、特例適用時の返還ルールなど、要件が多岐にわたります。
まずは公式資料を読み込み、自社の計画が要件に合うかを丁寧に点検したうえで、**「補助金を活用して新市場に一歩踏み出す」**判断につなげてください。
補助金申請のサポートが必要な場合は、広島県三次市、庄原市、安芸高田市の行政書士へ相談できることも、ぜひ選択肢に入れてみてください。
