建設業者様のための人材開発支援助成金 完全活用ガイド

~技能実習の費用負担を軽減し、人材育成を加速させる~

目次

  1. 序章:本ガイドの目的と活用方法
    1. はじめに
    2. 本ガイドの特徴
    3. ご利用にあたって
  2. 第1章:助成金制度の基礎知識
    1. 1-1. 制度の目的と概要
    2. 1-2. 助成金活用のメリット
  3. 第2章:助成金の対象となる条件
    1. 2-1. 対象となる事業主の要件
    2. 2-2. 実習実施に関する要件
  4. 第3章:対象となる技能実習と助成内容
    1. 3-1. 需要の高い対象講習
    2. 3-2. 助成額の詳細説明
  5. 第4章:地域別の助成金活用イメージ
    1. 4-1. 三次市エリアでの活用想定例

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序章:本ガイドの目的と活用方法

はじめに

中国山地に位置する三次市、庄原市、安芸高田市では、インフラ整備や住宅建設、防災・減災工事など、地域の安全と発展を支える建設需要が続いています。その一方で、熟練技能者の高齢化や若手育成の課題に直面している企業も少なくありません。

本ガイドでは、このような課題解決に役立つ「人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)」について、広島県北部の地域特性を踏まえながら、具体的な活用方法をご説明いたします。

本ガイドの特徴

  1. 三次市、庄原市、安芸高田市の地域特性を考慮した解説
  2. 実践的な活用イメージと具体的な手続き方法の紹介
  3. 2024年度の最新制度に基づく情報提供

ご利用にあたって

本ガイドは2024年度の制度内容に基づいています。助成金の申請にあたっては、必ず管轄の労働局で最新の情報をご確認ください。

第1章:助成金制度の基礎知識

1-1. 制度の目的と概要

人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)は、建設業における人材育成を経済的に支援する制度です。具体的には、技能実習の受講費用と実習期間中の賃金の一部が助成されます。

建設事業主等に対する助成金

1-2. 助成金活用のメリット

この助成金を活用することで、以下のようなメリットが得られます。

【経済的なメリット】
技能実習にかかる費用の最大75%が助成されることで、人材育成の経済的負担が大幅に軽減されます。例えば、1人あたり30,000円の講習費用の場合、最大22,500円の助成を受けることができます。

【人材育成面のメリット】
必要な資格取得や技能向上を計画的に進めることができ、若手からベテランまで、体系的な人材育成が可能になります。

【安全管理面のメリット】
作業主任者や特別教育修了者を適切に配置することで、現場の安全管理体制を強化できます。

第2章:助成金の対象となる条件

2-1. 対象となる事業主の要件

広島県北部の建設業者の中で、以下の条件を満たす事業主が対象となります。

【企業規模に関する要件】
次のいずれかに該当する必要があります。

  • 資本金の額または出資の総額が3億円以下
  • 常時雇用する労働者数が300人以下

【事業運営に関する要件】

  • 建設事業として雇用保険料率18.5/1,000が適用されていること
  • 雇用管理責任者を選任していること

2-2. 実習実施に関する要件

【受講者に関する要件】

  • 雇用保険の被保険者であること
  • 所定労働時間内に実習を受講すること
  • 通常の賃金が支払われること

【実習の実施方法】

  • 事業主からの業務命令として実施すること
  • 所定の講習機関で受講すること

第3章:対象となる技能実習と助成内容

3-1. 需要の高い対象講習

地域の建設現場のニーズに応じた主な対象講習をご紹介します。

【土木・建築工事関連】

  • 足場の組立て等作業主任者技能講習
  • フルハーネス型墜落制止用器具特別教育
  • 低圧電気取扱業務特別教育

地域特性として、三次市では高速道路網の整備、庄原市では土砂災害対策工事、安芸高田市では河川改修工事など、各地域の工事特性に応じた技能講習のニーズがあります。

【解体・リフォーム関連】

  • 石綿取扱い作業従事者特別教育
  • 粉じん作業特別教育
  • 自由研削といし取替試運転作業者特別教育

特に、地域の空き家対策や公共施設の改修工事に関連する技能講習の需要が高まっています。

【安全衛生関連】

  • 酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育
  • 巻上げ機運転特別教育

中山間地域での工事や地下工事において、これらの安全教育が重要となっています。

3-2. 助成額の詳細説明

【経費助成の内容】
企業規模によって助成率が異なります。

従業員20人以下の企業:

  • 講習費用の75%が助成
  • 1人あたり上限10万円

従業員21人以上の企業:

  • 35歳未満の従業員:講習費用の70%
  • 35歳以上の従業員:講習費用の45%

【賃金助成の内容】
実習期間中の賃金の一部が助成されます。

従業員20人以下の企業:

  • 1人1日あたり8,550円
  • 建設キャリアアップシステム技能者登録者は9,405円

従業員21人以上の企業:

  • 1人1日あたり7,600円
  • 建設キャリアアップシステム技能者登録者は8,360円

【追加助成について】
賃金アップや資格手当を導入した場合:

  • 20人以下の企業:1日あたり2,000円追加
  • 21人以上の企業:1日あたり1,750円追加

第4章:地域別の助成金活用イメージ

4-1. 三次市エリアでの活用想定例

【活用想定例1:三次工業団地周辺の総合建設会社の場合】
高速道路網の整備や工業団地での建設需要に対応する「みよし中央建設」(仮称、従業員15名)での活用例をご紹介します。

想定される人材育成プラン:

  • 新規採用の若手技能者3名への基礎資格取得支援
  • 現場監督候補2名への作業主任者資格取得支援

助成金活用のシミュレーション:

  1. 基礎資格取得(3名)
  • フルハーネス型墜落制止用器具特別教育
  • 足場の組立て等特別教育
    講習費用:30,000円/人 × 3名 = 90,000円
    経費助成(75%):67,500円
    賃金助成:9,405円 × 2日 × 3名 = 56,430円
  1. 作業主任者資格(2名)
    講習費用:50,000円/人 × 2名 = 100,000円
    経費助成(75%):75,000円
    賃金助成:9,405円 × 3日 × 2名 = 56,430円

年間の想定助成総額:255,360円

このケースでは、新入社員の早期戦力化と現場管理体制の強化を、経済的負担を抑えながら実現できます。

4-2. 庄原市エリアでの活用想定例

【想定例2:比婆山麓の土木工事会社の場合】
中山間地域での防災工事や道路整備を手がける「ひば土木」(仮称、従業員22名)での活用例です。

想定される人材育成プラン:

  • 若手・中堅作業員5名の技能向上
  • 災害対策工事に対応できる技能者の育成

助成金活用のシミュレーション:

  1. 技能講習(5名)
  • 地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習
  • 酸素欠乏・硫化水素危険作業特別教育
    講習費用:45,000円/人 × 5名 = 225,000円
    経費助成(70%):157,500円
    賃金助成:8,360円 × 4日 × 5名 = 167,200円

年間の想定助成総額:324,700円

このケースでは、地域特有の地質条件や気象条件に対応できる技能者の育成を効率的に進められます。

4-3. 安芸高田市エリアでの活用想定例

【想定例3:八千代町の専門工事会社の場合】
住宅リフォームと空き家解体を専門とする「あきたかた住建」(仮称、従業員12名)での活用例です。

想定される人材育成プラン:

  • 解体工事チーム4名の専門資格取得
  • 設備工事担当2名の電気取扱資格取得

助成金活用のシミュレーション:

  1. 解体工事関連(4名)
  • 石綿取扱い作業従事者特別教育
  • 粉じん作業特別教育
    講習費用:25,000円/人 × 4名 = 100,000円
    経費助成(75%):75,000円
    賃金助成:9,405円 × 2日 × 4名 = 75,240円
  1. 電気取扱関連(2名)
  • 低圧電気取扱業務特別教育
    講習費用:20,000円/人 × 2名 = 40,000円
    経費助成(75%):30,000円
    賃金助成:9,405円 × 1日 × 2名 = 18,810円

年間の想定助成総額:199,050円

このケースでは、空き家対策事業に必要な専門的な技能取得を、計画的に進めることができます。

第5章:助成金申請の実務ガイド

5-1. 申請の準備から受給までの流れ

【Step 1:事前確認(実習実施1ヶ月前まで)】
まず、に連絡し、以下の点を確認します。

  • 企業の受給資格
  • 希望する講習の対象可否
  • 必要書類の確認

【Step 2:実習計画の策定】
受講させる従業員と講習内容を決定し、以下の点を検討します。

  • 講習日程の選定
  • 受講者の選定
  • 代替要員の手配

【Step 3:講習の申込み(実習実施2週間前まで)】
中小建設業特別教育協会への手続きを行います。

  • 受講申込書の提出
  • 受講料の支払い
  • 受講案内の受領

【Step 4:計画届の要否確認】
講習内容によっては計画届が必要となります。

  • 通常の講習:原則不要
  • オンライン講習:要提出(講習日の1週間前まで)

【Step 5:講習の受講】

  • 出席確認の徹底
  • 修了証の保管
  • 受講記録の作成

【Step 6:支給申請(講習終了後2ヶ月以内)】
必要書類を準備し、申請を行います。

5-2. 申請に必要な書類と作成のポイント

【基本書類】

  1. 支給申請書
  • 正確な企業情報の記入
  • 受講者情報の漏れのない記載
  • 代表者印の押印
  1. 事業所確認書類
  • 建設業許可証の写し
  • 登記簿謄本(写し可)
  • 雇用保険適用事業所設置届の写し
  1. 受講者関係書類
  • 雇用保険被保険者資格確認通知書
  • 受講者名簿
  • 修了証の写し

【経費関係書類】

  1. 受講料関係
  • 受講料の領収書(原本)
  • 振込明細書の写し
  • 講習カリキュラム
  1. 賃金関係
  • 賃金台帳の写し
  • 出勤簿の写し
  • 賃金支払い証明

5-3. 申請時の注意点

【書類作成時の留意点】

  1. 記載内容の整合性確認
  • 各書類間での情報の一致
  • 金額の正確な記入
  • 日付の整合性
  1. 添付書類の確認
  • 必要書類の漏れ防止
  • 原本と写しの区別
  • 有効期限の確認
  1. 申請期限の管理
  • 提出期限の確認
  • 余裕を持った準備
  • 提出方法の確認

第6章:効果的な助成金活用のポイント

6-1. 活用効果を最大化するためのアドバイス

  1. 計画的な人材育成との連動
  • 年間の工事計画との整合
  • 従業員のキャリアパスとの連動
  • 段階的な資格取得計画
  1. 経費削減効果の最大化
  • 複数の講習の組み合わせ
  • 追加助成の活用
  • 効率的な受講スケジュール
  1. 企業価値の向上への活用
  • 安全管理体制の強化
  • 技術力の向上
  • 受注機会の拡大

6-2. よくある質問と回答

Q1:申請が通らないケースの主な理由は?
A1:以下のような場合に不支給となることがあります。

  • 申請期限を過ぎての提出
  • 必要書類の不備
  • 受給要件を満たしていない

Q2:追加助成の要件とは?
A2:以下のいずれかの取り組みが必要です。

  • 賃金アップの実施
  • 資格手当の新設
  • 手当の増額

Q3:受講料の支払方法に制限は?
A3:原則として銀行振込とし、証明書類が必要です。

おわりに

本ガイドでご紹介した助成金制度が、広島県北部の建設業者の皆様にとってお役に立てますと幸いに存じます。なお、有償での申請支援は社会保険労務士の先生のみが行えます。ご必要の場合は、ご紹介させていただくことも可能でございます。建設業の皆様のご発展に、本制度が有効活用されることを願っております。

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