1. はじめに
広島県の中山間地域において、タクシーは地域住民の重要な移動手段として欠かせない存在となっています。特に三次市、庄原市、安芸高田市では、高齢者の通院や買い物の足として、タクシーが地域の生活インフラの一翼を担っています。
このような状況の中、LPガス価格の高騰は、地域のタクシー事業者にとって大きな経営課題となっています。この課題に対応するため、令和6年10月~11月期のタクシー事業者向けLPガス価格高騰対策補助金(第17期)の申請受付が開始されました。
2. 概要
まず、本補助金制度の基本的な仕組みについてご説明いたします。
補助金額については、タクシー1台あたりの補助額が日単位で設定されています。具体的には、1日あたりの標準的なLPガス使用量である14.2ℓに、期間ごとの支援単価を乗じて算出されます。これにより、事業者は実際の使用量を細かく証明する必要がなく、効率的な申請が可能となっています。
補助率は期間によって異なり、10月上旬は1ℓあたり8.7円、10月中旬から11月上旬は8.3円、11月中旬以降は11.1円と設定されています。この変動は、LPガス価格の市場動向を反映したものです。
補助対象となる期間は、令和6年10月1日から11月30日までの2ヶ月間です。この期間は、特に冬季に向けて燃料費負担が増加する時期に設定されており、事業者の経営支援として効果的なタイミングとなっています。
対象事業者は、道路運送法に基づいて一般乗用旅客自動車運送事業を営む全てのタクシー事業者です。これには法人タクシー、個人タクシー、そして福祉タクシーも含まれます。地域の多様な移動ニーズに応える全ての事業者を支援対象としています。
申請期限は令和6年12月10日から令和7年2月6日までと設定されています。この約2ヶ月間の申請期間は、事業者が適切に準備を整えられるよう配慮されています。
申請要件として重要なのは、事業許可を取得している事業者単位での申請が必要であり、申請は1回限りという点です。これは、公平かつ効率的な補助金配分を確保するための措置です。
3. 想定される活用事例
本補助金の具体的な活用方法について、地域の実情に即した事例をご紹介いたします。
まず、三次市を拠点とする〇〇交通株式会社(仮称)のケースをご説明します。同社は市内で15台のタクシーを運行していますが、特に冬季における燃料費の高騰が経営を圧迫していました。具体的には、高齢者の通院時の長距離送迎や、待機時の暖房使用によるLPガス消費が課題となっていました。本補助金の活用により、1台あたり日額約120円~150円の支援を受けることができ、2ヶ月間で約10万円程度の負担軽減が見込まれます。
次に、庄原市で営業する〇〇タクシー(仮称)の例です。同社は観光タクシーを主力事業としており、備北丘陵公園や比婆山への観光送迎を行っています。山間部の走行が多いため、燃料消費が一般的な市街地走行より多く、経営を圧迫する要因となっていました。本補助金により、燃料費の負担が軽減され、観光コースの維持が可能となります。
また、安芸高田市の〇〇タクシー(仮称)では、車いす対応車両5台を運行していますが、特殊設備による車両重量の増加で燃料消費が多くなっていました。補助金を活用することで、福祉輸送サービスの継続的な提供が可能となります。
4. 詳細な説明
本補助金の具体的な計算方法と適用について、詳しく解説いたします。
まず補助金額の算定についてです。補助金額は3つの期間に分けて計算されます。
第一期間(令和6年10月1日~10月2日)では、1ℓあたり8.7円の支援が行われます。タクシー1台の1日あたりの標準使用量14.2ℓに基づくと、この期間の日額支援額は約123円となります。
第二期間(令和6年10月3日~11月6日)は、1ℓあたり8.3円の支援となり、1日あたり約118円の支援が受けられます。
第三期間(令和6年11月7日~11月30日)では、支援額が1ℓあたり11.1円に増額され、1日あたり約158円の支援となります。
これらの支援額は、実際の使用量に関わらず一定の基準で計算されるため、事業者の事務負担を軽減する効果があります。
続いて、補助対象となる車両の条件について詳しくご説明いたします。
補助対象車両は、令和6年10月1日から11月30日までの期間に実際に稼働していたLPガス車両となります。ただし、この期間中の車両の状態によって、補助金の計算方法が変わってきます。
例えば、〇〇タクシー(仮称)のように期間中ずっと継続して営業している「通常車両」の場合は、全期間が補助対象となります。一方、庄原もみじタクシー(仮称)のように期間中に新規購入や他社からの転入による「増車」の場合は、実際に運行を開始した日からが補助対象期間となります。
また、車検や整備による一時的な運休期間がある場合は、その期間を除いて補助金が計算されます。これは、実際の営業実態に即した公平な支援を実現するための仕組みです。
5. 申請手順
申請手続きについて、過去の申請実績に応じた3つのパターンに分けて詳しくご説明いたします。
第一のパターンは、第14期から第16期まで全ての交付決定を受けている事業者の場合です。〇〇交通(仮称)のような継続的に申請している事業者が該当します。この場合、マイページでの簡易な手続きが可能です。具体的な手順としては、まずマイページにログインし、過去の申請情報を確認します。その後、システムが自動的に審査を行い、スムーズに手続きを完了することができます。
第二のパターンは、直近の第15期と第16期の交付決定を受けている事業者の場合です。この場合、ホームページで確認データを請求するか、メールで申請を行います。三次交通(仮称)のように、途中から申請を始めた事業者が該当します。
第三のパターンは、上記以外の新規申請事業者の場合です。〇〇交通(仮称)のような新規参入事業者がこれに該当します。この場合、まず事務局のホームページから申請書類をダウンロードし、必要事項を記入した後、メールまたはホームページを通じて申請を行います。
6. まとめ
本補助金制度は、広島県北部の中山間地域におけるタクシー事業者の経営を支援する重要な施策です。ここで、補助金活用のポイントを整理させていただきます。
まず、申請期限が令和7年2月6日16時までと定められていることに注意が必要です。特に年末年始をはさむ期間となるため、早めの準備と申請をお勧めします。申請に必要な書類の確認や、マイページ登録などの事前準備を計画的に進めることで、スムーズな申請が可能となります。
次に、補助金の効果的な活用方法についてです。例えば、三次市内で営業する〇〇交通(仮称)では、本補助金を活用することで、高齢者向けの定期巡回サービスの維持が可能となりました。また、庄原市の〇〇タクシー(仮称)では、補助金による経費削減分を乗務員の待遇改善に充てることで、サービス品質の向上につなげています。
実際の申請にあたっては、専門家のサポートを受けることをお勧めします。行政書士は、補助金申請の実務に精通しており、適切なアドバイスを提供できます。特に初めて申請される事業者の方は、申請書類の作成から提出までの一連の手続きについて、行政書士に相談することで安心して申請を進めることができます。
また、申請に関する不明点がございましたら、タクシー事業者に対する燃料価格激変緩和対策事業事務局(TEL:050-5538-1514)までお気軽にご相談ください。平日10:00から16:00の間、専門のスタッフが丁寧にご対応いたします。なお、年末年始(令和6年12月28日から令和7年1月5日)は休業となりますのでご注意ください。
最後に、本補助金は単なる経費支援にとどまらず、地域の公共交通を守り、住民の生活を支える重要な役割を果たしています。三次市、庄原市、安芸高田市のタクシー事業者の皆様には、この制度を有効活用していただき、持続可能な事業運営と地域社会への貢献を続けていただければと思います。
補助金の申請や活用方法について、さらに詳しい情報が必要な場合は、どうぞお気軽にお声かけ願います。皆様の事業の発展と、地域交通の維持・向上に、本補助金制度が少しでもお役に立てれば幸いです。