1. はじめに
近年、花粉症対策としてのスギ人工林の伐採ニーズが高まっている一方で、林業現場における深刻な人手不足が課題となっています。特に広島県の中山間地域では、高齢化と人口減少により、地域内だけでの労働力確保が困難な状況に直面しています。
このような背景から、林野庁では令和5年度より「地域間・産業間連携労働力確保事業」を開始しました。本事業は、地域を超えた労働力の確保や、他産業との連携による新たな担い手の育成を支援することで、林業の持続的な発展を目指すものです。
2. 概要
①補助金額と補助率
本事業では、連携の形態によって2つの支援メニューが用意されています。
一つ目は「地域間連携」です。これは、遠隔地の林業経営体から労働力を受け入れる際の費用を支援するもので、1経営体あたり最大200万円まで助成を受けることができます。補助率は対象経費の2分の1以内となっています。
二つ目は「産業間連携」です。農業や建設業など、他産業からの労働力を受け入れる際の安全講習等の費用を支援するもので、1経営体あたり最大100万円まで助成を受けることができます。こちらは対象経費の全額が補助されます。
②補助対象となる経費
【地域間連携】では、主に以下の経費が対象となります:
- 交通費:遠隔地から作業現場までの移動に要する費用です。公共交通機関を利用する場合は実費が、自家用車を使用する場合は1キロメートルあたり37円が支給されます。
- 宿泊費:都市部では1泊あたり10,900円、その他の地域では9,800円を上限として実費が支給されます。
- 日当:移動距離に応じて1日あたり1,100円から2,200円が支給されます。
【産業間連携】では、主に以下の経費が対象となります:
- 講習開催費:安全講習を自主開催する場合の講師謝金(時給7,900円)や会場費、教材費などです。
- 研修受講費:外部の研修会に参加する場合の受講料や教材費などです。
- 付帯経費:研修参加者の移動費や日当なども含まれます。
③補助対象者とその要件
本事業の対象となるのは、次のいずれかに該当する林業経営体です:
- 「認定事業主」として、林業労働力確保促進法に基づく都道府県知事の認定を受けている事業者
- 「選定経営体」として、都道府県知事から効率的かつ安定的な経営体として選定されている事業者
ただし、以下の要件を満たす必要があります:
- 令和6年度の事業計画において、スギ人工林伐採重点区域を含む市町村での事業が過半を占めていること。
- 地域間連携の場合、連携先との事業所間の距離が概ね60キロメートル以上あること。
- 産業間連携の場合、研修受講者が林業を本業としていない者であること。
3. 想定される活用事例
①地域が直面している問題点
備北地域森林組合(仮称)では、次のような課題を抱えています:
豊富な森林資源を有する当地域では、花粉症対策としてのスギ人工林伐採の需要が増加傾向にあります。しかし、人口減少と高齢化により、地域内での労働力確保が困難な状況が続いています。特に、夏季の下刈りや冬季の伐採作業など、繁忙期における人手不足が深刻です。
また、新規就業者の確保・育成も課題となっています。林業の専門知識や技術を持った人材が少なく、安全面での懸念から、未経験者の受入れにも慎重にならざるを得ない状況です。
②補助金による問題解決
本事業を活用することで、次のような取り組みが可能となります:
【地域間連携の活用例】
備北地域森林組合(仮称)では、冬季の伐採作業において、島根県の林業経営体から5名の熟練作業員を2週間受け入れることにしました。受入れにあたっては、以下の費用が助成対象となります:
- 宿泊費:9,800円/泊 × 13泊 × 5名 = 637,000円
- 交通費:37円/km × 100km × 10回 × 5名 = 185,000円
- 日当:2,200円/日 × 14日 × 5名 = 154,000円
合計976,000円の経費に対し、その1/2である488,000円が助成されることとなります。
【産業間連携の活用例】
農閑期を利用して地域の農業従事者10名を対象に、3日間の安全講習を実施する計画を立てました:
- 講師謝金:7,900円/時 × 6時間 × 3日 = 142,200円
- 会場費:30,000円 × 3日 = 90,000円
- 教材費:5,000円 × 10名 = 50,000円
合計282,200円の経費が全額助成対象となります。
4. 詳細な説明
①具体的な事業の進め方
備北地域森林組合(仮称)の事例では、事業開始前に以下のステップで計画を立てました:
まず、年間の作業計画を見直し、労働力が特に必要となる時期を特定しました。その結果、スギ人工林の伐採作業が集中する12月から1月にかけて、約5名の追加人員が必要であることが判明しました。
次に、連携先の選定を行いました。冬季に比較的作業量が少ない島根県の林業経営体と協議を行い、熟練作業員5名の派遣について合意を得ることができました。この際、作業員の技能レベルや、安全管理体制についても確認を行いました。
②補助率の具体的な計算方法
実際の経費計算では、以下のような積算を行います:
- 宿泊費の計算
宿泊施設の見積り:8,500円/泊
上限額:9,800円/泊
→ 8,500円×13泊×5名=552,500円(助成対象額)
- 交通費の計算
島根県から現場までの距離:85km
往復移動10回を想定
37円×85km×10回×5名=157,250円(助成対象額)
このように、実際の経費と上限額を比較しながら、助成対象額を算出していきます。
③必要な書類と準備の手順
交付申請に必要な書類は、大きく以下の3種類に分類されます:
- 事業者の資格証明
- 認定事業主または選定経営体であることを証明する書類
- 登記簿謄本等の事業者概要が分かる書類
- 事業計画関係
- 実施計画書(作業内容、実施時期、人員配置等)
- 収支計画書(経費の積算内訳)
- スギ人工林伐採重点区域での事業実施計画
- 実施体制関係
- 連携先との契約書または合意書
- 安全管理体制を示す書類
- 研修実施体制(産業間連携の場合)
④スケジュール管理のポイント
年間を通じた事業実施にあたり、以下のようなスケジュール管理が重要です:
4-6月
- 年間作業計画の策定
- 連携先との協議・調整
- 交付申請の準備
7-9月
- 交付決定の取得
- 具体的な受入準備
- 宿泊施設の確保
10-12月
- 連携事業の開始
- 進捗管理
- 必要に応じて計画変更
1-2月
- 事業の完了
- 実績報告書の作成
- 効果検証の実施
4. 詳細な説明
①具体的な事業の進め方
備北地域森林組合(仮称)の事例では、事業開始前に以下のステップで計画を立てました:
まず、年間の作業計画を見直し、労働力が特に必要となる時期を特定しました。その結果、スギ人工林の伐採作業が集中する12月から1月にかけて、約5名の追加人員が必要であることが判明しました。
次に、連携先の選定を行いました。冬季に比較的作業量が少ない島根県の林業経営体と協議を行い、熟練作業員5名の派遣について合意を得ることができました。この際、作業員の技能レベルや、安全管理体制についても確認を行いました。
②補助率の具体的な計算方法
実際の経費計算では、以下のような積算を行います:
- 宿泊費の計算
宿泊施設の見積り:8,500円/泊
上限額:9,800円/泊
→ 8,500円×13泊×5名=552,500円(助成対象額)
- 交通費の計算
島根県から現場までの距離:85km
往復移動10回を想定
37円×85km×10回×5名=157,250円(助成対象額)
このように、実際の経費と上限額を比較しながら、助成対象額を算出していきます。
③必要な書類と準備の手順
交付申請に必要な書類は、大きく以下の3種類に分類されます:
- 事業者の資格証明
- 認定事業主または選定経営体であることを証明する書類
- 登記簿謄本等の事業者概要が分かる書類
- 事業計画関係
- 実施計画書(作業内容、実施時期、人員配置等)
- 収支計画書(経費の積算内訳)
- スギ人工林伐採重点区域での事業実施計画
- 実施体制関係
- 連携先との契約書または合意書
- 安全管理体制を示す書類
- 研修実施体制(産業間連携の場合)
④スケジュール管理のポイント
年間を通じた事業実施にあたり、以下のようなスケジュール管理が重要です:
4-6月
- 年間作業計画の策定
- 連携先との協議・調整
- 交付申請の準備
7-9月
- 交付決定の取得
- 具体的な受入準備
- 宿泊施設の確保
10-12月
- 連携事業の開始
- 進捗管理
- 必要に応じて計画変更
1-2月
- 事業の完了
- 実績報告書の作成
- 効果検証の実施
5. 具体的な申請手順
実際の申請手順について、三次広域森林組合(仮称)の具体例を基に説明します。
①事前準備と相談
三次広域森林組合(仮称)では、申請前に以下の準備を行いました:
まず、全林協事務局(TEL:03-3500-5034)に連絡し、事前相談を実施。自社の状況や計画について説明し、申請の可能性について確認を行いました。事務局からは、特に以下の点について確認がありました:
- スギ人工林伐採重点区域での事業実績の有無
- 認定事業主としての認定期限
- 過去の補助金受給実績
②必要書類の収集と作成
必要書類の準備は、以下の順序で進めていきました:
【基本書類の準備】
- 交付申請書(様式第1号)
- 誓約書(様式第8号)
- 登記簿謄本(写し)
- 認定事業主であることの証明書類
【計画書類の作成】
- 事業実施計画書
- 作業計画(月別の作業内容、人員配置)
- 実施体制図(責任者、連絡体制)
- 安全管理計画
- 収支計画書
- 経費の詳細な積算内訳
- 資金調達計画
③実施計画の詳細化
計画の詳細化にあたり、以下の点に特に注意を払いました:
【地域間連携の場合】
・受入時期:12月上旬~1月下旬
・受入人数:5名
・作業内容:スギ人工林の伐採作業
・宿泊施設:三次市内のビジネスホテル
・移動手段:作業現場までは社用車で送迎
【産業間連携の場合】
・研修時期:10月中旬(農閑期)
・参加者数:10名
・研修内容:チェーンソー等の安全講習
・実施場所:三次市林業研修センター(仮称)
・講師:自社の熟練技術者2名
④申請から交付決定まで
申請書類の提出後は、以下のような流れで手続きが進みました:
- 書類の提出(令和6年6月上旬)
- 提出方法:郵送(書留)
- 提出先:一般社団法人全国林業改良普及協会
- 書類審査(提出から約2週間)
- 不備の指摘を受け、追加資料の提出
- 実施計画の一部修正
- 交付決定通知(7月上旬)
- 交付決定額の確定
- 実施にあたっての条件の確認
- 事業開始準備
- 連携先との最終調整
- 具体的な実施スケジュールの確定
6. 事業実施上の注意点と記録の管理
①日常的な記録管理
三次広域森林組合(仮称)では、助成金の適切な執行を証明するため、以下のような記録管理を徹底しました:
【作業日報の記録】
毎日の作業終了時に、以下の項目を記録します:
・作業日:令和6年12月10日
・作業場所:三次市上田町スギ林(仮称)
・作業内容:スギ人工林伐採作業
・作業人員:地域間連携作業員3名、自社作業員2名
・作業進捗:伐採面積0.5ha完了
・安全確認事項:ヒヤリハット0件
【経費の管理】
支出の都度、以下の証拠書類を整理・保管します:
・宿泊費:宿泊施設の領収書
・交通費:高速道路利用票、給油レシート
・日当:受領書(署名付き)
・研修費:講師への謝金支払記録
②中間報告と進捗管理
事業の実施期間中は、以下のような進捗管理を行います:
【月次報告の作成】
・計画進捗率:90%(計画:20ha/実績:18ha)
・労働力確保状況:計画通り
・経費執行状況:予算消化率85%
・安全管理状況:事故0件
【課題への対応】
発生した課題とその対応策を記録:
課題1:悪天候による作業遅延
対応:作業計画の調整、応援人員の追加投入
課題2:宿泊施設の予約変更
対応:代替施設の確保、追加費用の予算調整
③実績報告の作成
事業完了後、以下の手順で実績報告を作成します:
- 実施内容の総括
- 当初計画との比較
- 目標達成状況の評価
- 効果の検証結果
- 経費の確定
- 支出内容の最終確認
- 証拠書類の整理
- 実績額の集計
- 報告書の作成
- 様式に沿った記載
- 添付書類の準備
- 写真等の整理
- 効果検証
- 労働力確保への貢献度
- 生産性向上の実績
- 地域への波及効果
④今後の展望
本事業を通じて得られた経験を、今後の事業展開に活かすために以下の検討を行います:
- 継続的な連携体制の構築
- 連携先との関係強化
- 年間を通じた作業計画の策定
- 安定的な労働力確保の仕組みづくり
- 人材育成への展開
- 研修プログラムの改善
- 技術継承の仕組みづくり
- 地域内での人材育成体制の確立
- 地域活性化への貢献
- 他産業との連携強化
- 地域の雇用創出
- 持続可能な林業経営モデルの確立
このように、本事業は単なる労働力確保の支援にとどまらず、地域林業の持続的な発展に向けた重要な契機となることが期待されます。