1. はじめに

広島県北部に位置する三次市、庄原市、安芸高田市は、中国山地の豊かな自然と歴史的な文化資産を有する地域です。三次市の備後神楽が醸し出す幽玄な世界観、庄原市の木江重要伝統的建造物群保存地区が伝える江戸期からの商家の佇まい、安芸高田市の歴史的な街並みが物語る戦国時代からの歴史など、それぞれの地域が独自の文化的価値を持っています。

このような豊かな文化的基盤を持つ地域において、現代アートは新たな視点で地域の価値を再発見し、表現する可能性を秘めています。公益財団法人アイスタイル芸術スポーツ振興財団による現代芸術振興助成は、そうした可能性を現実のものとするための重要な機会です。

2. 概要

①補助金額とその意義
②補助率の特徴と活用方法
③補助対象経費の範囲と実際の使途
④補助対象者の具体像と求められる要件
⑤申請期限とスケジュール管理
⑥申請要件の詳細と準備のポイント
①地域が直面する文化的課題
②補助金活用による具体的な問題解決
①具体的な補助金活用計画
②効果的な補助率の活用方法
③補助対象経費の実践的な活用法
④補助対象者に求められる具体的な活動内容
⑤申請期限に向けた具体的な準備計画
⑥申請要件の具体的な対応策
■助成団体

①補助金額とその意義

本助成制度では、1件あたり100万円までの助成金が用意されています。この金額設定の意義は、地方都市における中規模の芸術プロジェクトを実現可能にする点にあります。

例えば、三次市の旧家を活用した展示企画を考えた場合、以下のような費用配分が可能となります：

展示空間の整備（古民家の一時的な改修、照明設備の設置）：40万円
作品制作費（材料費、制作補助謝金）：30万円
広報・記録費用（カタログ制作、記録写真撮影）：30万円

この予算規模により、地域の文化資源を活かしながら、質の高い現代アート展示を実現することができます。

②補助率の特徴と活用方法

本助成金の特徴的な点は、活動に必要な経費の全額が補助対象となることです（上限100万円まで）。この全額補助という特徴は、特に地方都市で活動するアーティストや文化団体にとって大きな意味を持ちます。

通常、芸術活動への助成金は一定の自己負担を求められることが多いのですが、本助成金はその必要がありません。これにより、例えば庄原市の若手アーティスト集団が、自己資金の確保に時間を取られることなく、創造的な活動に専念することができます。

③補助対象経費の範囲と実際の使途

補助対象となる経費は、展示・制作活動に直接必要な費用です。安芸高田市のアートプロジェクトを例に、具体的な使途を見ていきましょう。

制作関連経費として認められるのは：
材料費（キャンバス、絵具、彫刻材料など）、制作機材のレンタル費用、制作補助者への謝金などです。例えば、地域の伝統工芸技術を現代アートに取り入れる際の、職人への技術指導謝金なども含まれます。

一方で、以下のような経費は対象外となります：
常勤スタッフの給与、事務所の家賃、光熱費などの経常的な経費です。これは、助成金を一過性のプロジェクトの実現に集中的に活用するという趣旨によるものです。

④補助対象者の具体像と求められる要件

補助対象者となるのは、現代アートの制作、展示または制作・展示双方に従事する個人または団体です。三次市を拠点に活動する「備北現代アート研究会（仮称）」を例に、具体的に見ていきましょう。

この研究会は、地域の古民家を活用した展示活動を2年以上継続して行っています。会の活動内容は以下の要件に合致しています：

営利を目的としない活動であること：入場料は必要経費のみを賄う程度に設定
国内における活動であること：地域密着型の展示活動を展開
活動状況と成果を適切に報告できること：過去の展示記録や来場者数の統計を保持

このように、地域に根ざした継続的な活動実績を持ち、適切な活動報告ができる体制を整えていることが重要です。

⑤申請期限とスケジュール管理

申請期間は2024年12月1日から2025年1月31日までです。この期間を有効に活用するため、庄原市の「木江アートプロジェクト実行委員会（仮称）」の例で、具体的な準備スケジュールを見てみましょう。

【10月】事前準備期間
実行委員会は、過去2年間の活動記録を整理し、ポートフォリオの作成を開始します。地域の歴史的建造物の所有者との調整も、この時期から始めています。

【11月】企画詳細の策定期間
展示計画の具体化、必要経費の詳細な積算、参加アーティストとの調整を行います。この時期に予算計画書のドラフトを作成することで、12月からの本申請に向けた準備が整います。

⑥申請要件の詳細と準備のポイント

申請要件を満たすためには、具体的な実績と計画の提示が必要です。安芸高田市の「神楽アート継承プロジェクト（仮称）」の事例を基に、ポイントを解説します。

このプロジェクトでは、伝統芸能である神楽の要素を現代アートとして再解釈する活動を行っています。申請に向けて、以下の要素を丁寧に準備しました：

活動実績の証明：
過去2年間の神楽公演でのインスタレーション作品の展示記録、地域メディアでの掲載記事、来場者アンケートの集計結果などをポートフォリオとしてまとめています。これらの資料は、活動の継続性と社会的意義を示す重要な証拠となります。

3. 想定される活用事例

①地域が直面する文化的課題

備北アートギャラリー（仮称）が直面している問題点について、具体的に見ていきましょう。この施設は、三次市の歴史的な町家を改装して作られた小規模な展示スペースです。

現在の主な課題：
施設運営面では、現代アート展示に必要な専門的な照明設備や温湿度管理システムが不十分な状態です。また、作品の搬入出に適した設備も整っていません。

人材面では、現代アート作品の取り扱いに精通したスタッフが不足しており、展示技術の向上が課題となっています。このため、繊細な現代アート作品の展示には制限が生じています。

②補助金活用による具体的な問題解決

「三次・庄原・安芸高田アート・プロジェクト2025（仮称）」として、これらの課題を解決する具体的な計画を見ていきましょう。

展示環境の整備：
本助成金を活用し、可動式の展示用照明システムを導入します。これにより、作品に応じた適切な照明環境を実現できます。また、デジタル温湿度計や空気清浄機を設置することで、作品保護に適した環境を整えることができます。必要な機材は以下の通りです：

「たとえば、三次の町家で行う『光と影のアートプロジェクト（仮称）』では、LEDスポットライト30台と調光システムを導入することで、伝統的な建築空間と現代アートの調和を図ることができます。これにより、建物の持つ歴史的な雰囲気を活かしながら、現代アート作品を効果的に展示することが可能となります」

人材育成と技術向上：
展示技術の向上のため、専門家を招いた研修プログラムを実施します。庄原市の木江地区では、古い商家を活用した展示のノウハウを学ぶワークショップを開催。参加者は実践的な技術を習得しながら、実際の展示作業に携わることができます。

「例えば、『木江町並みアートプロジェクト（仮称）』では、東京都内の美術館から学芸員を招き、3日間の集中研修を実施。古い建物での展示方法や作品の取り扱いについて、実践的な指導を受けることができます」

4. 詳細な説明

①具体的な補助金活用計画

100万円の助成金の使途について、「安芸高田アートフェスティバル（仮称）」の事例を基に、詳細な計画を見ていきましょう。

展示環境整備費用（45万円）：

可動式展示パネル（15万円）：伝統的な建物の壁面を傷つけることなく作品を展示できる専用パネルを製作
照明機材（20万円）：調光可能なLEDスポットライト20台とコントローラーの購入
空調関連機器（10万円）：作品保護用の除湿機と空気清浄機の購入

「これらの機材は、安芸高田市の歴史的建造物で開催される『伝統と革新の対話展（仮称）』で使用されます。江戸時代の建物内で現代アート作品を安全に展示するために必要不可欠な設備となります」

作品制作・展示費用（35万円）：
地域の若手アーティスト5名による新作制作の支援に充てられます。各作家には材料費として5万円、制作補助者への謝金として2万円が配分されます。

「例えば、地域の伝統工芸である和紙を使用した立体作品の制作では、和紙製作者との協働に必要な経費や、専用の展示台制作費用として活用されます」

広報・記録費用（20万円）：
本プロジェクトの社会的意義を広く伝えるため、以下のような広報活動を展開します。

「プロジェクトの記録集『三市現代アートの軌跡（仮称）』の制作費として15万円を配分。残り5万円は写真・映像による記録費用に充てます。記録集は、三次市、庄原市、安芸高田市の図書館や教育機関に寄贈され、地域の文化資源として活用されます」

②効果的な補助率の活用方法

補助率100%という特徴を最大限に活用するため、「備北現代アート展（仮称）」では以下のような計画を立てています。

事前調査と企画立案：
まず、地域の文化資源と現代アートを結びつける可能性を探るため、三市の文化財調査を実施します。たとえば、三次市の酒蔵、庄原市の古民家、安芸高田市の神楽殿など、特徴的な建造物や文化施設を調査し、それぞれの場所に適した展示プランを策定します。

「三次市の酒蔵を活用した展示では、醸造の過程で生まれる音や香り、温度変化などを、現代アートの要素として取り入れることを計画しています。これにより、地域産業と芸術の新しい関係性を提示することができます」

予算の効率的な配分：
補助率100%を活かし、以下のような重点的な予算配分を行います。

展示環境の整備：
「庄原市の古民家での展示では、建物の構造を損なうことなく作品を展示するための特殊な取り付け具が必要です。これらの備品は、展示終了後も地域の文化施設で活用できるよう、汎用性の高いものを選定しています」

③補助対象経費の実践的な活用法

補助対象となる経費を最大限に活用するため、「安芸高田アートウィーク（仮称）」では、以下のような具体的な計画を立てています。

材料費の効果的な活用：
「地域の伝統工芸品である備後絣の技法を現代アートに取り入れる試みでは、職人との協働に必要な材料費として15万円を計上。藍染めの材料や織機のレンタル費用、試作品の制作費用などが含まれます」

承知いたしました。同じスタイルで続けさせていただきます。

展示関連費用の詳細：
会場となる歴史的建造物での展示に必要な費用を具体的に見ていきましょう。

「三次市の『町家アートギャラリー（仮称）』では、江戸時代の商家を活用します。建物の保護と作品の安全な展示を両立させるため、以下のような設備投資を行います：

専門的な展示用具の調達として、建物に負担をかけない専用の展示パネルシステムを導入します。これは、床から天井まで届く支柱と、そこに取り付ける可動式のパネルからなるシステムで、壁面を傷つけることなく作品を展示することができます。また、このシステムは解体して保管できるため、次回の展示にも活用可能です。」

広報・記録費用の活用：
プロジェクトの社会的意義を広く伝えるための広報活動も、補助対象経費として認められています。

「『庄原アートドキュメント（仮称）』として、展示の準備段階から、アーティストと地域住民との交流、作品の制作過程、展示の様子まで、一連の活動を記録した映像を制作します。この記録は、将来の同様のプロジェクトの参考資料となるだけでなく、地域の文化資産としても価値のあるものとなります」

④補助対象者に求められる具体的な活動内容

補助対象者として認められるために必要な活動実績について、具体例を交えて説明します。

活動実績の構築：
「安芸高田文化創造機構（仮称）」の例を見てみましょう。この団体は過去2年間、以下のような活動を継続的に行ってきました：

「毎月1回、地域の空き店舗を活用したアート展示を開催し、若手アーティストの発表機会を創出してきました。また、地域の小学校と連携し、児童たちが現代アートを体験できるワークショップも定期的に実施。これらの活動は地域の新聞やケーブルテレビでも取り上げられ、その社会的意義が認められています。」

⑤申請期限に向けた具体的な準備計画

申請期限（2024年12月1日〜2025年1月31日）に向けて、「三次現代アート研究会（仮称）」の準備スケジュールを例に、具体的な進め方を見ていきましょう。

10月の準備作業：
「10月第1週から第2週にかけて、過去2年間の活動記録を整理します。具体的には、三次市内の古民家で開催した『光の回廊プロジェクト（仮称）』や、地域の子どもたちとの協働による『未来の風景画（仮称）』など、代表的な企画の写真、新聞記事、来場者アンケートなどをデジタルデータ化し、活動実績を示す資料として取りまとめます。

10月第3週からは、新規プロジェクトの企画立案に入ります。地域の文化財所有者や協力アーティストとの打ち合わせを行い、実現可能性の高い企画を練り上げていきます。」

11月の準備作業：
「11月前半は予算計画の策定に充てます。展示会場となる歴史的建造物の調査を行い、必要な設備や備品のリストアップ、費用の見積もりを取得します。同時に、参加アーティストとの個別面談を行い、作品プランや必要な制作費用について具体的な協議を進めます。

11月後半は申請書類の作成に入ります。特に重要なのは、プロジェクトの社会的意義と地域への貢献度を明確に示す部分です。例えば、地域の伝統工芸職人との協働による新しい表現の可能性や、空き家となっている歴史的建造物の活用による地域活性化など、具体的な効果を示せるよう、丁寧に記述していきます。」

⑥申請要件の具体的な対応策

申請要件を満たすための具体的な準備について、「庄原アートコレクティブ（仮称）」の例で見ていきましょう。

活動実績の証明方法：
「過去2年間の活動を時系列で整理し、各プロジェクトの具体的な成果を示すポートフォリオを作成します。例えば、2023年に実施した『木江町並みアートプロジェクト（仮称）』では、来場者数（延べ2,000人）、メディア掲載実績（地方紙3回、ケーブルTV2回）、地域住民の参加者数（ワークショップ参加50名）など、具体的な数字を示しながら活動の実績をまとめています。」

5. 申請手順の具体的な進め方

申請手順について、「安芸高田芸術共創センター（仮称）」の実例を基に、具体的な進め方を説明します。

第1段階：申請準備の具体的な手順
「申請の2ヶ月前から、以下のような準備を始めています。まず、センターのスタッフ全員で申請要項を読み合わせ、要件の確認と役割分担を行いました。例えば、過去の活動記録の整理は広報担当が、予算計画の作成は会計担当が、企画書の作成はキュレーターが担当するなど、それぞれの専門性を活かした分担を行っています。

具体的な準備作業として、2023年に実施した『神楽×現代アート展（仮称）』の記録写真のデジタル化、来場者アンケートの集計、会計資料の整理などを行いました。これらの資料は、活動実績を証明する重要な書類となります。」

第2段階：申請書類の作成プロセス
「申請書類の作成では、特に以下の点に注力しました。まず、助成申請書では、プロジェクトの独自性と地域への貢献度を具体的に示すことを心がけています。例えば、安芸高田市の伝統芸能である神楽の要素を現代アートとして再解釈する試みについて、以下のような記述を行いました：

『地域の神楽団体と現代アーティストが協働し、神楽面の制作技法を現代的に解釈した立体作品を制作します。この過程で、若手アーティストが伝統技法を学び、神楽師が現代アートの視点を取り入れることで、新しい文化的価値が生まれることが期待されます。』」

第3段階：提出前の最終確認
「提出前の2週間を最終確認期間として設定し、以下のようなチェックリストを作成しました：

申請書の記載内容が要項の要件を満たしているか
予算計画が補助対象経費の範囲内に収まっているか
添付書類（実績資料、写真等）が揃っているか
記入漏れや誤字脱字がないか

6. まとめ：本助成金の地域文化振興における意義

このように、本助成金は単なる資金援助を超えて、地域文化の新たな可能性を開くためのきっかけとなっています。申請を検討される方々には、地域の文化資源を丹念に見つめ直し、現代アートを通じた新しい価値創造の可能性を探っていただきたいと思います。

専門家への相談：
なお、申請書の作成や事業計画の立案にあたっては、各地域の行政書士への相談も推奨されます。特に、予算計画の策定や申請書類の形式的な要件については、専門家のアドバイスを受けることで、より充実した申請内容となることが期待できます。何かご不明な点等ございましたら、どうぞお気軽にお声かけ願います。

■助成団体

https://istyle-found.org/2025_support_art

公益財団法人　アイスタイル芸術スポーツ振興財団
〒107-6034
東京都港区赤坂1-12-32 アーク森ビル34階
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