専任技術者とは、建設工事の施工に関する一定の資格または経験を有する技術者で、各営業所ごとに専任で配置される者を指します。ここでいう「専任」とは、その営業所に常勤し、専らその職務に従事することを要する状態を意味します。
専任技術者の役割
専任技術者の主な役割は、建設工事の適切な施工を技術面から支えることです。具体的には、以下のような業務を担います。
- 建設工事の計画
- 工事の管理
- 技術的な指導
専任技術者の要件
専任技術者の要件は、一般建設業と特定建設業で異なります。ここでは、それぞれの要件を詳しく解説します。
一般建設業の専任技術者要件
一般建設業の専任技術者は、許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し、次のいずれかに該当する者である必要があります。
- 学歴要件と実務経験の組み合わせ
- 高等学校、専門学校、中等教育学校の指定学科を卒業後、5年以上の実務経験を有する者
- 大学または高等専門学校の指定学科を卒業(専門職大学の指定学科前期課程修了を含む)後、3年以上の実務経験を有する者
- 実務経験のみ
- 10年以上の実務経験を有する者
- 同等以上の知識および技術または技能を有すると認められた者
- 指定学科に関し、旧実業学校卒業程度検定合格後5年以上、旧専門学校卒業程度検定合格後3年以上の実務経験を有する者
- 大学院を置く大学において指定学科に係る単位を優秀な成績で修了し、大学院に入学した後3年以上の実務経験を有する者
- 指定学科に関し、学校教育法第104条第7項の規定により学士の学位を授与された後3年の実務経験を有する者
- 専門学校の指定学科を卒業した後3年以上の実務経験を有する者で、専門士または高度専門士を称する者
- 国家資格保有者
- 所定の資格区分に該当する者
特定建設業の専任技術者要件
特定建設業の専任技術者は、許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し、次のいずれかに該当する者である必要があります。
- 国家資格保有者
- 所定の資格区分に該当する者
- 実務経験者
- 一般建設業の要件に該当し、かつ元請として4,500万円以上の工事について2年以上の指導監督的な実務経験を有する者
※ 平成6年12月28日前は3,000万円以上、昭和59年10月1日前は1,500万円以上の工事経験で可
- 一般建設業の要件に該当し、かつ元請として4,500万円以上の工事について2年以上の指導監督的な実務経験を有する者
- 国土交通大臣認定者
- 上記1または2に掲げる者と同等以上の能力を有すると認められた者
特に指定建設業(土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業)については、1または3に該当する者でなければなりません。
実務経験に関する詳細
「実務経験」とは、許可を受けようとする建設工事に関する技術上の経験を指します。具体的には以下のような経験が含まれます。
- 実際に建設工事の施工に携わった経験
- 建設工事の施工を指揮、監督した経験
- 建設工事の発注者側において設計に従事した経験
- 現場監督技術者としての経験
実務経験として認められないもの
- 工事現場の単なる雑務や事務の仕事に関する経験
- 一式工事の中から専門工事を抜き出した経験(電気通信工事を除く)
- 附帯工事の経験
実務経験の期間計算
- 当該一業種の建設工事に係る経験期間を積み上げて合計した期間を指します。
- 経験期間が重複している場合、他の業種として二重に計上することはできません。
ただし、以下の例外があります
- 平成28年5月31日までに「とび・土工工事業許可」で請け負った解体工事に係る実務経験期間は、平成28年6月1日以降、「とび・土工工事業」と「解体工事業」双方の実務経験期間として二重に計算できます。
- 電気工事および消防施設工事のうち、電気工事士免状、消防設備士免状等の交付を受けた者等でなければ直接従事できない工事に直接従事した経験については、それらの免状等の交付を受けた者等として従事した実務経験に限り経験期間に算入します。
- 建設リサイクル法施行(平成13年5月30日登録制度施行)後の解体工事に係る経験は、とび・土工工事業等許可または建設リサイクル法に基づく解体工事登録で請け負ったものに限り経験期間に算入します。
指導監督的実務経験
特定建設業の専任技術者要件の一つである「指導監督的実務経験」とは、建設工事の設計または施工の全般について、工事現場主任や工事現場監督のような指導的な立場で工事の技術面を総合的に指導・監督した経験を指します。
この経験には以下の制限があります。
- 発注者から直接請け負った建設工事に係るものに限られる
- 発注者側における経験は含まれない
- 下請負人として請け負った建設工事に係る実務経験は含まれない
専任技術者の兼任に関する規定
- 経営業務の管理に必要な「常勤役員等」と「専任技術者」との双方の基準を満たしている者は、同一営業所内において両者を一人で兼ねることが可能。
- 同一営業所内において、2以上の業種の許可を申請する場合、各基準を満たしている者は、複数の業種の専任技術者を兼ねることが可能。
- 専任技術者は、宅地建物取引士、管理建築士等 他の法令により専任性を要する者と兼ねることはできません。ただし、同一営業体で、かつ同一の営業所である場合は、両者を兼ねることができます。
- 他者の常勤職員、他の法人の清算人、国または地方公共団体の議会議員は、常勤性・専任性に欠けるため専任技術者としては認められません。
まとめ
以上が、専任技術者の要件についての詳細な説明です。建設業の許可を取得・維持するためには、適切な専任技術者を配置し、要件を満たしていることを確認することが不可欠です。要件は一般建設業と特定建設業で異なるうえ、実務経験や資格、指導監督的実務経験の有無などによって細かい規定があります。ぜひ上記を参考に、自社の許可要件を満たすための体制づくりを行ってください。
この記事の内容は、法令および関連資料をもとにまとめていますが、実際の許可申請の際は必ず公式情報をご確認ください。