建設業許可の要件:財産的基礎について

建設業

本日は、建設業許可取得の際に非常に重要となる「財産的基礎」について、詳しくご説明させていただきます。


財産的基礎で悩む事業者さまの声

「建設業許可を取得したいけど、財産的基礎って何なの?」 「うちの会社の財務状況で許可は取れるのかな…」 「一般建設業から特定建設業に切り替えたいけど、財産的基礎の要件が厳しそう…」

このような声をよく耳にします。特に広島県三次市、庄原市、安芸高田市のような地方都市では、大手企業と比べて財務基盤が弱い中小企業や個人事業主の方が多く、財産的基礎の要件に不安を感じる方が少なくありません。


財産的基礎とは何か?

財産的基礎とは、建設業を営むにあたって必要な「財産的な裏付け」のことを指します。建設業は工事の着手から完成、代金回収までに時間がかかり、その間の資金繰りが重要になります。そのため、建設業法では許可の要件として一定の財産的基礎を求めているのです。

一般建設業と特定建設業の財産的基礎の違い

一般建設業の財産的基礎要件

一般建設業の場合、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  1. 自己資本の額が500万円以上であること
  2. 500万円以上の資金を調達する能力があること

※ 過去の営業実績は、許可の更新時などに考慮される要素です。

特定建設業の財産的基礎要件

特定建設業の場合は、より厳しい基準が設けられています。以下の全ての要件を満たす必要があります。

  1. 欠損の額が資本金の額の20%を超えないこと
  2. 流動比率が75%以上であること
  3. 資本金の額が2,000万円以上であること
  4. 自己資本の額が4,000万円以上であること

なぜ財産的基礎が重要なのか?

財産的基礎が重要視される理由は主に以下の3点です。

  1. 工事の安定的な遂行 十分な資金力があれば、工事の途中で資金不足に陥るリスクが低くなります。
  2. 下請業者の保護 特に特定建設業の場合、多額の下請代金を支払う必要があるため、確実な支払能力が求められます。
  3. 発注者の信頼 財務基盤がしっかりしていることは、発注者からの信頼獲得にもつながります。

財産的基礎の具体的な計算方法

財産的基礎の要件を満たしているかどうかを判断するには、具体的な計算が必要になります。ここでは、特に重要な指標について解説します。

1. 自己資本額の計算

自己資本額は、貸借対照表上の純資産合計額で判断します。

  • 法人の場合:純資産合計額
  • 個人の場合:期首資本金 + 事業主借 + 事業主利益 – 事業主貸 + 各種引当金・準備金

個人の場合、上記のような計算式を用いるのは、「事業主借」は事業主個人から事業への借入であり、実質的には自己資本とみなされるため加算し、「事業主貸」は事業から事業主個人への貸付であり、自己資本から控除する必要があるためです。

2. 流動比率の計算

流動比率は以下の式で計算します。流動比率 = (流動資産 ÷ 流動負債) × 100

3. 欠損額の計算

欠損額は、貸借対照表上の繰越利益剰余金がマイナスの場合に計算します。繰越利益剰余金がプラスの場合は欠損はありません。欠損額 = |繰越利益剰余金のマイナス額| – (資本剰余金 + 利益準備金 + その他の利益剰余金)


広島県内の具体的な事例(架空の事例です)

以下は、広島県三次市、庄原市、安芸高田市の事業者を想定した架空の事例です。実在の企業とは一切関係ありません。数値は説明のために設定されたものであり、実際の企業の財務状況を表しているわけではありません。

事例1:三次建設株式会社(仮称)の場合

三次市で土木工事を中心に事業を展開する三次建設株式会社(仮称)は、特定建設業許可の取得を目指していました。

  • 資本金:2,500万円
  • 純資産:4,200万円
  • 流動資産:8,000万円
  • 流動負債:6,000万円
  • 繰越利益剰余金:200万円

この場合、

  1. 資本金が2,000万円以上
  2. 純資産が4,000万円以上
  3. 流動比率が75%以上((8,000万円 ÷ 6,000万円) × 100 = 133.33%)
  4. 欠損がない(繰越利益剰余金がプラス)

となり、全ての要件を満たしているため、特定建設業許可を取得することができました。

事例2:庄原工業株式会社(仮称)の場合

庄原市で建築工事を手がける庄原工業株式会社(仮称)は、一般建設業許可の取得を目指していました。

  • 自己資本:450万円
  • 銀行融資枠:600万円

この場合、自己資本は500万円に満たないものの、500万円以上の資金調達能力があるため、一般建設業許可を取得することができました。

事例3:安芸高田建設株式会社(仮称)の場合

安芸高田市で舗装工事を専門とする安芸高田建設株式会社(仮称)は、特定建設業許可の取得を目指していましたが、財産的基礎の要件を満たすことができませんでした。

  • 資本金:1,800万円
  • 純資産:3,800万円
  • 流動比率:70%

そこで、当事務所のアドバイスを受け、以下の対策を講じました。

  1. 増資を行い、資本金を2,200万円に増額
  2. 役員からの借入を500万円増やし、純資産を4,300万円に増額
  3. 短期借入金の一部を長期借入金に切り替え、流動比率を80%に改善

これらの対策により、全ての要件を満たすことができ、無事に特定建設業許可を取得することができました。


財産的基礎を満たすための対策

財産的基礎の要件を満たすことが難しい場合、以下のような対策が考えられます。

  1. 増資 資本金を増やすことで、自己資本額を増加させることができます。
  2. 役員借入 役員からの借入金を増やすことで、純資産を増加させることができます。ただし、役員借入は税務上の影響や会社法上の手続きを考慮する必要があり、安易な借入は後々問題を引き起こす可能性があります。専門家と相談の上、慎重に検討することをお勧めします。
  3. 資産の見直し 遊休資産の売却や、固定資産の流動資産への転換などにより、流動比率を改善できる可能性があります。
  4. 負債の見直し 短期借入金を長期借入金に切り替えるなど、負債の構成を見直すことで流動比率を改善できます。
  5. 利益の蓄積 利益を内部留保として蓄積することで、自己資本を増やすことができます。

これらの対策を講じる際は、税務上の影響や会社法上の手続きなど、様々な側面を考慮する必要があります。専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。


専門家に相談するメリット

建設業許可における財産的基礎の要件を満たすことは、時として難しい課題となります。専門家に相談することで、以下のようなメリットがあります。

  1. 正確な現状分析 財務諸表を正確に分析し、現在の状況を把握することができます。
  2. 効果的な対策立案 各社の状況に応じた、最適な対策を提案することができます。
  3. スムーズな申請手続き 申請書類の作成から提出まで、スムーズに進めることができます。
  4. 時間とコストの節約 自社で対応する場合と比べ、大幅な時間短縮とコスト削減が可能です。
  5. トラブル回避 申請書類の不備や誤った解釈によるトラブルを未然に防ぐことができます。

まとめ

建設業許可における財産的基礎の要件は、一見複雑で難しく感じるかもしれません。しかし、正しい理解と適切な対策により、多くの場合で要件を満たすことが可能です。

広島県三次市、庄原市、安芸高田市の事業者の皆さま、建設業許可の取得や更新でお悩みの際は、ぜひ専門家にご相談ください。私たち行政書士が、皆さまの事業の発展をサポートいたします。


【お問い合わせ先】

行政書士高杉将寿事務所 電話:0824-55-6663

初回30分無料相談実施中!まずはお気軽にご連絡ください。

建設業許可の取得は、皆さまの事業拡大の大きな一歩となります。財産的基礎の要件で悩むことなく、新たな挑戦に踏み出しましょう。私たちが、全力でサポートいたします。

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