こんにちは。広島県三次市で行政書士を務めております高杉将寿と申します。本日は、2024年以降に施行された(または施行される)建設業法改正について、地域の建設業者の皆様に向けてわかりやすく解説させていただきます。
はじめに:建設業法改正で何が変わるのか?
「建設業法が改正されたらしいけど、うちの会社は何か対応しないといけないのかな?」 「新しい規制が増えるって聞いたけど、具体的にどんな内容なんだろう?」
このような疑問や不安を抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。確かに、法改正は私たち建設業者にとって大きな影響を与える可能性があります。しかし、正しい知識を持って適切に対応すれば、むしろビジネスチャンスにつながる可能性もあるのです。
今回の建設業法改正は、主に以下の3つの目的を持って行われました。
- 労働者の処遇改善(賃金引上げ)
- 資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
- 働き方改革と生産性向上(労働時間の適正化・現場管理の効率化)
これらの目的を達成するために、具体的にどのような変更が行われたのか、順を追って詳しく見ていきましょう。今回は、特に2024年以降に施行された、または施行される改正点に焦点を当てて解説します。
建設業法改正の詳細と専門的解説
1. 労働者の処遇改善(賃金引上げ)
建設業界では長年、他産業と比べて賃金が低いことが課題となっていました。今回の改正では、この問題に対処するため、以下の施策が導入されました。
(a) 労働者の処遇確保の努力義務化 建設業者には、労働者の処遇を確保するための努力義務が課されています。具体的には、適切な賃金水準の維持や労働環境の改善などが求められます。
(b) 公共工事設計労務単価の活用 中央建設業審議会が決定する「公共工事設計労務単価」は、公共工事の積算に用いられる労務費の基準です。この単価を参考に、適切な労務費を確保することが重要です。
(c) 不当に低い請負代金の禁止 不当に低い労務費や材料費による見積りや、そのような見積りの依頼が禁止されています。これにより、ダンピング受注や下請けいじめの防止が図られます。
(d) 受注者における原価割れ契約の禁止 受注者側も、通常必要と認められる原価を下回る金額での契約が禁止されています。これにより、健全な競争環境の整備が期待されます。
これらの施策により、建設業界全体の賃金水準の向上と、労働者の処遇改善が図られることが期待されています。
2. 資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
近年の資材価格の高騰は、建設業者にとって大きな課題となっています。この問題に対処するため、以下の施策が導入されました。
(a) 受注者の注文者に対するリスク情報の提供義務化 受注者は、契約前に資材高騰や主要な資材の著しい減少といった請負額に影響を及ぼす情報を、注文者に提供する義務が課されています。
(b) 請負代金の変更方法を契約書記載事項として明確化 資材が高騰した際の請負代金などの「変更方法」を、契約書の記載事項として明確化することが求められるようになりました。
(c) 資材高騰時の変更協議へ誠実に応じる努力義務・義務の新設 資材高騰が顕在化した場合、受注者が「変更方法」に従って工期や工事内容などに関する契約変更協議を申し出た時は、注文者が誠実に協議に応じる努力義務が課されました。
これらの施策により、資材高騰のリスクを受注者だけが負うのではなく、注文者と適切に分担することが可能になります。
3. 働き方改革と生産性向上(労働時間の適正化・現場管理の効率化)
建設業界の長時間労働の問題に対処するため、以下の施策が導入されました。
(a) 時間外労働の上限規制の適用(2024年4月1日より適用) 時間外労働の上限規制が建設業にも適用されました。これにより、長時間労働の是正が求められます。
(b) 現場技術者の専任義務の合理化 ICTを活用した遠隔管理が可能な場合、現場技術者の専任義務が緩和されます。これにより、技術者不足の解消と業務効率化が期待されます。
(c) 効率的な現場管理の努力義務化 国が現場管理の「指針」を作成し、多数の下請け業者に発注する特定建設業者や公共工事受注者に対して、効率的な現場管理を努力義務化しました。
(d) 施工体制台帳の提出義務の合理化 ICTの活用で施工体制を確認することができれば、公共工事発注者への施工体制台帳の提出が省略可能になりました。
これらの施策により、建設現場の生産性向上と労働時間の適正化が図られることが期待されています。
建設業法改正への対応:具体的な想定例
では、これらの改正にどのように対応すればよいのでしょうか。広島県内の建設会社の事例を想定して、具体的に見ていきましょう。
①三次市の事例:三次建設株式会社(仮称)の場合
三次建設株式会社は、従業員50名の中堅建設会社です。今回の法改正を受けて、以下の対応を行いました。
- 労務費の見直し:公共工事設計労務単価を参考に、全従業員の給与体系を見直しました。
- 契約書の改訂:資材高騰時の対応方法を明記した新しい契約書フォーマットを作成しました。
- ICT導入:現場管理のためのタブレット端末とクラウドシステムを導入し、遠隔での現場確認を可能にしました。これにより、現場への移動時間が削減され、月平均で1人あたり10時間の残業時間削減につながりました。
②庄原市の事例:庄原工務店(仮称)の場合
庄原工務店は、従業員10名の小規模建設会社です。限られた経営資源の中で、以下のような対応を行いました。
- 労務費の見直し:全従業員との個別面談を行い、給与体系の見直しを行いました。
- 見積書の改訂:資材費の変動を考慮した新しい見積書フォーマットを作成しました。
- 工程管理の効率化:無料のプロジェクト管理アプリを導入し、工程管理の効率化を図りました。
③安芸高田市の事例:安芸高田建設(仮称)の場合
安芸高田建設は、従業員30名の建設会社です。今回の法改正を機に、以下のような取り組みを行いました。
- 労務費の見直し:業界団体の指針を参考に、給与体系の全面的な見直しを行いました。
- 契約書・見積書の改訂:弁護士と相談の上、新しい契約書・見積書フォーマットを作成しました。
- 現場管理システムの導入:クラウド型の現場管理システムを導入し、リアルタイムでの進捗管理を可能にしました。
建設業法改正への対応:行政書士にご相談ください
ここまで、建設業法改正の概要と具体的な対応例をご紹介してきました。しかし、実際の対応となると、個々の会社の状況に応じて細かな調整が必要になります。そこで、専門家である行政書士にご相談いただくことをおすすめします。
行政書士にご相談いただくメリットは以下の通りです:
- 法改正の詳細な解説:最新の法改正情報を熟知した専門家が、御社の状況に合わせて具体的なアドバイスを提供します。
- 書類作成のサポート:新しい契約書や見積書のフォーマット作成、各種申請書類の作成をサポートします。
- トラブル予防:法改正に伴う潜在的なリスクを事前に把握し、トラブルを未然に防ぐための対策を提案します。ただし、法的紛争が発生した場合の対応は弁護士の領域となります。
- 効率的な対応:専門家のアドバイスにより、無駄のない効率的な法改正対応が可能になります。
- 最新情報の提供:今後の法改正動向についても、最新の情報をタイムリーに提供します。
まとめ:建設業法改正を前向きなチャンスに
2024年以降の建設業法改正は、一見すると対応に苦慮する内容に思えるかもしれません。しかし、この改正は建設業界全体の健全化と発展を目指すものであり、適切に対応することで、むしろビジネスチャンスにつながる可能性があります。
労働者の処遇改善により人材確保が容易になる、資材高騰リスクの適切な分担により安定した経営が可能になる、ICT活用により生産性が向上する―――これらはすべて、御社の競争力強化につながる要素です。
ぜひ、この法改正を前向きに捉え、御社の更なる発展のきっかけとしていただければと思います。そして、その過程でお困りのことがあれば、どうぞお気軽に当事務所にご相談ください。
私たち行政書士は、地域に根ざした専門家として、皆様の事業の発展を全力でサポートいたします。
建設業法改正に関する情報源
今回の記事を作成するにあたり、以下の情報を参考にしました。
- 国土交通省ウェブサイト:建設業法関連情報
- 厚生労働省ウェブサイト:働き方改革関連情報
- 中小企業庁ウェブサイト:中小企業向け支援情報
これらの情報源は、常に最新の情報が掲載されているため、必要に応じて参照することをお勧めします。
行政書士にご相談ください
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