広島県三次市・庄原市・安芸高田市の事業承継支援制度について
広島県の三次市、庄原市、安芸高田市における事業承継支援のための補助金制度について、より詳しく具体的に解説いたします。これらの地域では、事業承継を円滑に進めるためのさまざまな支援制度が用意されています。
三次市の事業承継支援制度
三次市では、「三次市事業承継支援事業補助金」という制度が設けられています。この補助金は、まちのにぎわいの維持や円滑な事業承継によって事業価値を次世代に引き継ぎ、事業活動の活性化を図ることを目的としています。
補助対象事業
この補助金の対象となる事業は以下の通りです:
- 事業承継のために行うインターネット環境整備
- 広告宣伝費
- 事業所の増改築等施設整備
- 事業承継のために行う相談会等の開催経費(三次商工会議所、三次広域商工会に限る)
ただし、広告料に係る印刷物の制作業者は市内に本店を有する広告・印刷関連業者とする必要があります。また、増改築等施設整備に係る施工業者も市内に本店を有する事業者である必要があります。増改築等施設整備については、備品や什器等に要する経費は除外されます。
補助対象者
この補助金の対象となるのは、納期限の到来した市税・料を完納している方で、以下のいずれかに該当する方です:
- 市内に本店を有する法人の代表者または個人(中小企業基本法第2条に規定する中小企業者)で、市内で5年以上事業を営んでいる事業の承継を行う先代経営者または後継者(三次商工会議所または三次広域商工会で事業承継のための支援を受けている者に限る)
- 三次商工会議所または三次広域商工会
ただし、以下の場合は補助の対象外となります:
- 事業承継しようとする事業が、風俗営業等の規制および業務の適正化等に関する法律の適用を受ける事業である場合または公序良俗に反する事業である場合
- 営業日数が週4日未満の場合
- 市外に本店を有する事業者のチェーン店、支店等を事業承継する場合
- 国、県、市または公益財団法人等から同一事業に対する助成を受けている場合
補助金額と補助率
- 増改築等施設整備等:1補助対象者当たり100万円
- 相談会等の開催:1補助対象者当たり10万円
補助率は補助対象経費の2分の1以内となっています。ただし、消費税および地方消費税相当額は除外され、算出した額に千円未満の端数がある場合は切り捨てられます。
申請の流れ
- まず、事業承継を行う事業者であることの認定を受ける必要があります。認定申請書に必要書類を添付して提出します。
- 認定後、補助金の交付申請を行います。交付申請書に必要書類を添付して提出します。
庄原市の事業承継支援制度
庄原市では、「庄原市経営継承促進事業補助金」という制度が設けられています。この補助金は、第三者から農業経営を継承する際に必要な経費の一部を助成するものです。
補助対象者
以下の1から4のすべてに該当する者が対象となります:
- 市内に居住し、市内で農業を営む認定農業者又は認定就農者
- 第三者から農業経営を継承をする者
- 申請者及びその世帯員全員が補助金の交付申請時に納付すべき納期限の到来した市税及び料を完納していること
- 過去に本補助金の交付を受けていない者
補助対象事業
第三者継承によって取得した施設、設備の改良若しくは改修事業、又は果樹等の改植に関する事業が対象となります。
補助額
事業の実施に要した経費の2分の1(千円未満切り捨て)が補助されます。上限額は100万円です。
申請方法
申請については、農政課(本館4階)の窓口でご相談ください。
安芸高田市の事業承継支援制度
安芸高田市では、「安芸高田市事業承継ネットワーク会議」を設立し、オール安芸高田で事業承継を応援しています。
個別相談会
毎月第3火曜日に、事業承継個別相談会を実施しています。広島県事業承継引継ぎ支援センターのコーディネーターが相談に対応します。場所は安芸高田市商工会です。
専門家派遣
事業承継を適切に実施するために、専門家を無料で派遣します。専門家の例としては、弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、行政書士、中小企業診断士などがあります。
事業承継・M&A補助金(国の制度)
令和6年度補正予算による事業承継・M&A補助金の変更点についても触れておきます。この補助金は、中小企業の事業承継やM&Aを支援するための制度です。
名称の変更
「事業承継・引継ぎ補助金」から「事業承継・M&A補助金」へと名称が変更されました。これにより、この補助金が企業の合併や買収を支援するものであることが明確になりました。
PMI推進枠の新設
M&A後の統合プロセス(PMI)を支援するための新しい枠組みが設けられました。補助上限は800~1,000万円(一定の賃上げを実施する場合)となっています。
補助上限額の引き上げ
既存の枠組みにおいても補助上限額が引き上げられました。例えば、事業承継促進枠(旧経営革新枠)では、変更前の600万円から800~1,000万円に引き上げられています。
補助率の調整
補助率が事業者の状況に応じて調整されました。例えば、事業承継促進枠では、小規模事業者の場合、補助率が2/3(約66.7%)に引き上げられています。
対象となる取り組みの拡大
補助金の対象となる取り組みの範囲が拡大されました。M&A重視の取り組み強化、デジタル化・DXの推進、人材育成・確保の支援などが新たに対象となりました。
事業承継税制
事業承継では、後継者が経営者から自社株式や事業用資産を取得することに伴い、贈与税や相続税が発生する場合があります。これらの納税猶予や免除制度などを活用して、スムーズな事業承継を支援します。
特例事業承継税制
後継者が相続や贈与によって取得した自社株式等について、後継者の事業継続などを要件として相続税・贈与税の納税が猶予・免除されます。また子や親族に限らず、親族外承継においても適用できます。
事業承継税制を適用すれば自社株式にかかる相続税の80%を猶予することができます。また、贈与税については年間110万円までの贈与が非課税となります。
事業承継・集約・活性化支援資金
日本政策金融公庫では、事業承継を行う中小企業向けに「事業承継・集約・活性化支援資金」という融資制度を設けています。融資限度額は別枠7,200万円(うち運転資金4,800万円)となっています。
事業承継関連保証制度
信用保証協会では、事業承継に関連するさまざまな保証制度を用意しています。例えば、事業承継特別保証、事業承継サポート保証、経営承継関連保証、特定経営承継関連保証、経営承継準備関連保証、特定経営承継準備関連保証、経営承継借換関連保証などがあります。保証限度額は2億8,000万円以内となっています。
まとめ
以上が、広島県の三次市、庄原市、安芸高田市における事業承継支援のための主な補助金制度です。各市によって制度の詳細や対象者が異なりますので、実際に利用を検討する際は、各市の担当窓口に直接相談することをおすすめします。
事業承継は企業の存続に関わる重要な問題であり、これらの支援制度を有効に活用することで、円滑な事業承継を実現することができるでしょう。特に、三次市の事業承継支援事業補助金は、事業所の増改築等施設整備にも使えるため、事業承継を機に店舗や工場のリノベーションを考えている事業者にとっては魅力的な制度といえます。
また、庄原市の経営継承促進事業補助金は、農業経営の承継に特化した制度であり、地域の基幹産業である農業の持続的発展を支援する重要な役割を果たしています。
安芸高田市の事業承継ネットワーク会議による支援は、専門家による無料相談や派遣など、きめ細かなサポートを提供しており、事業承継の計画段階から実行段階まで一貫したサポートを受けることができます。
さらに、国の事業承継・M&A補助金の拡充により、より大規模な事業承継やM&Aにも対応できるようになりました。特に、PMI推進枠の新設は、M&A後の統合プロセスをスムーズに進めるための支援として注目されています。
事業承継税制や融資制度、保証制度などの金融面での支援も充実しており、これらを組み合わせて活用することで、より効果的な事業承継が可能となります。
事業承継は単なる経営権の移転ではなく、企業の持続的発展のためのチャンスでもあります。これらの支援制度を活用し、新たな事業展開や経営革新にも取り組むことで、地域経済の活性化にもつながることが期待されます。
中小企業経営者の皆様は、これらの支援制度を積極的に活用し、円滑な事業承継を実現するとともに、次世代に向けた新たな事業価値の創造にも挑戦していただきたいと思います。そのためにも、早い段階から事業承継の準備を始め、専門家や支援機関のアドバイスを受けながら、計画的に進めていくことが重要です。