採択7,684件を分析 今日から募集開始、中小企業省力化投資補助金は、どのような会社が何に使っているのか

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中小企業省力化投資補助金(一般型)の第8回公募が、2026年9月18日に始まりました。

この補助金は「工場にロボットを入れるための制度」と思われがちですが、実際の採択事例を見ると、建設、卸売、小売、農業、宿泊、飲食、医療・福祉、クリーニング、自動車整備など、幅広い業種で使われています。

では、実際にはどのような会社が、何を導入しているのでしょうか。

今回は、公表済みの第1回から第6回までについて、全7,684件の採択事業名と、公式資料に掲載された詳細事例47件を集計・分析しました。

まず押さえたい全体像

第1回から第6回までの申請件数は合計11,720件、採択件数は7,684件でした。単純計算した採択割合は65.6%です。

公募回申請件数採択件数採択割合
第1回1,809件1,240件68.5%
第2回1,160件707件60.9%
第3回2,775件1,854件66.8%
第4回2,100件1,456件69.3%
第5回2,035件1,251件61.5%
第6回1,841件1,176件63.9%
合計11,720件7,684件65.6%

公募回によって差はありますが、おおむね6割台で推移しています。ただし、これは全業種を合計した数字です。業種別の申請件数は公表されていないため、「製造業は何%採択される」といった業種別採択率は計算できません。

また、この数字は将来の採択を保証するものではありません。採択件数や申請内容は、公募回ごとに変わります。公式の採択結果

採択企業の半数は、従業員20人以下

公式資料の従業員規模別割合を、第1回から第6回まで合算すると、採択企業の規模はおおむね次のようになります。

従業員数採択件数の目安構成比
5人以下約1,115件約14.5%
6~20人約2,694件約35.1%
21~50人約1,985件約25.8%
51~100人約1,015件約13.2%
101人以上約880件約11.5%

従業員20人以下が約49.6%、50人以下まで広げると約75.4%です。

つまり、大きな設備投資ができる中堅企業だけの制度ではありません。「少人数だからこそ、1人分の作業を減らす効果が大きい」という会社が、採択の中心になっています。

資本金別では、すべての公募回で「1,000万円超~2,000万円」が最も多く、構成比は28.2~34.0%でした。

※従業員規模などは、公式資料で公表された小数第1位までの割合から計算しているため、件数は概算です。第1回集計第2回集計第3回集計第4回集計第5回集計第6回集計

補助金額は「2,000万円未満」が約4分の3

採択された事業者が申請した補助金額を合算すると、次の構成になります。

申請した補助金額構成比
750万円未満約17.9%
750万~1,500万円未満約32.6%
1,500万~2,000万円未満約23.2%
2,000万~5,000万円未満約20.8%
5,000万円以上約5.5%

2,000万円未満が約73.7%です。各回で最も多い単一区分は「1,500万~1,750万円未満」でした。

大規模な全社システムだけでなく、機械数台と関連システムを組み合わせる、中規模の投資が多いことが分かります。

なお、これは設備の総額ではなく、申請された「補助金額」の集計です。

採択の約68%は製造業と建設業。ただし他業種も拡大

業種別では製造業が最も多く、建設業が続きます。第1回から第6回の公表割合を加重平均すると、採択件数の構成は次のようになります。

主な業種採択件数の目安構成比第1回→第6回
製造業約4,085件約53.2%61.7%→51.4%
建設業約1,140件約14.8%11.3%→14.6%
卸売業約404件約5.3%5.9%→3.9%
学術研究、専門・技術サービス業約344件約4.5%2.7%→4.2%
小売業約233件約3.0%2.3%→4.0%
農業・林業約225件約2.9%1.9%→2.8%
その他のサービス業約212件約2.8%3.1%→2.5%
自動車整備・ビルメンテナンス約175件約2.3%1.3%→3.7%
医療・福祉約137件約1.8%1.0%→3.6%
飲食サービス業約132件約1.7%1.4%→1.4%
情報通信業約121件約1.6%1.6%→2.0%
理美容、クリーニング、冠婚葬祭等約110件約1.4%1.8%→1.6%
運輸業・郵便業約107件約1.4%0.9%→1.2%

製造業と建設業を合わせると約68%です。ただし、その比率は第1回の73.0%から、第6回には66.0%まで下がりました。

一方、第1回と第6回を比べると、医療・福祉は1.0%から3.6%、自動車整備・ビルメンテナンスは1.3%から3.7%、小売業は2.3%から4.0%へ増えています。

この補助金が、工場や建設現場以外にも広がっていることが分かります。

※業種別件数は、各回の公表割合を採択件数に掛けた概算です。割合が小数第1位に丸められているため、合計には若干の誤差があります。

7,684件の事業名には何が書かれていたか

採択された全7,684件の事業計画名について、代表的な言葉を機械的に検索しました。複数の言葉を含む事業は重複して数えています。

事業名に含まれる内容件数全体に占める割合
自動化・無人化1,857件24.2%
加工・成形・切断・溶接等1,783件23.2%
システム・ソフト・クラウド1,072件14.0%
DX・デジタル化657件8.6%
建設ICT・測量・現場機械514件6.7%
AI506件6.6%
検査・検品・測定・選別481件6.3%
包装・梱包・充填・計量400件5.2%
受発注・販売・顧客・予約管理324件4.2%
ロボット・自律搬送303件3.9%
ICT264件3.4%
医療・歯科・動物診療217件2.8%
搬送・仕分け・物流196件2.6%
CAD・CAM・BIM・3D187件2.4%
農業・林業・水産・畜産145件1.9%
受付・会計・接客110件1.4%
IoT76件1.0%
ドローン55件0.7%
RPA9件0.1%

「AIを入れる」「ロボットを買う」という目立つ事例ばかりではありません。

加工、検品、包装、搬送、受発注、予約、会計など、日々繰り返している普通の作業を省力化する事業が中心です。

機械加工や検品など、現場作業に関係する言葉を一つ以上含む事業は少なくとも4,116件、全体の53.6%でした。システム、DX、AI、ICTなどデジタル関係の言葉を含む事業は少なくとも2,367件、30.8%でした。両方を組み合わせた事業もあります。

なお、これは事業名に明記された言葉だけを検索した集計です。事業名に「AI」と書かれていなくてもAIを利用している場合があり、実際の導入件数はこれより多い可能性があります。

公式の詳細事例47件から分かる投資の形

第1回から第6回の公式資料には、合計47件の詳しい事例が掲載されています。その見出しを3種類に整理すると、次の結果になりました。

投資の形件数割合
一連の業務工程をまとめて自動化・効率化21件44.7%
複数の汎用設備を組み合わせる16件34.0%
自社用に設計したオーダーメイド設備10件21.3%

47件のうち37件、78.7%は「一連の工程をまとめて改善する」か「複数の設備を組み合わせる」事例です。

自社専用の高額なロボットを一から開発しなければならないわけではありません。市販の機械、POS、予約システム、検査装置などを組み合わせて、作業の流れ全体を変える事業も多く採択されています。

ただし、この47件は公式資料が選んだ紹介事例であり、採択7,684件全体の構成をそのまま表すものではありません。

実際にどのような省力化が採択されているのか

公式事例に記載された導入計画と効果見込みを、業種別に整理すると次のようになります。

製造業

  • 手縫い針の製造会社が、ワイヤ放電加工機と回転テーブルを導入。対象工程の作業時間を約80%減らし、生産量を約70%増やす計画
  • 金属加工会社が、曲げ加工ロボットを導入。手作業を1日6時間減らし、生産量を最大200%にする計画
  • 電気機器製造会社が、立体倉庫、自律搬送ロボット、パレタイズロボット、自動包装機を組み合わせ、月80時間の作業を20時間に短縮
  • 航空・半導体部品会社が、複数の材料を自動交換できる加工設備を導入し、夜間6~7時間の無人運転を計画

単に新しい機械に買い替えるのではなく、「材料を運ぶ」「機械に置く」「加工する」「検査する」「包装する」までをつなぐ事例が目立ちます。

建設業

  • 鉄筋工事会社が、CAD、QRコードによる加工指示、自動曲げ加工機を連携。二重入力や入力ミスを減らし、熟練者を人材育成に回す計画
  • 建設会社が、油圧ショベルとチルトローテータ等を組み合わせ、対象作業時間を約45%短縮
  • 見積作業にAIと社内資料検索システムを導入し、1件2時間以上かかっていた作業を約4分の1にする計画
  • 空調工事会社が、ファイバーレーザー加工機とAI配置システムを導入し、年間1,585時間を削減する計画

建設業では、重機だけでなく、測量、図面、見積、材料加工までが省力化の対象になっています。

食品製造・小売

  • 精肉・鮮魚部門に、自動計量、包装、値付け、ラベル貼付設備を導入。1日70人時を超える作業を省力化
  • セントラルキッチンに、加熱釜、ミキサー、皮むき、充填、真空包装設備を連携させ、約10人で行っていた準備作業を1人で担当する計画
  • 小売会社が、タブレット付きピッキングカートを導入。年間約5,000時間、移動距離約2万キロを削減し、誤出荷率を1%未満にする計画
  • 製麺・飲食会社が、製麺から冷却、真空包装までを一体化。週2,000食から6,000食へ増産し、1日600分の作業を150分に短縮する計画

食品関係では、生産能力の増加だけでなく、計量間違い、異物、衛生管理、表示ミスの削減も重要なテーマです。

物流・卸売

  • 倉庫会社が、3D仕分けロボットと管理システムを導入し、1日200件だった出荷を600件に増やす計画
  • 出荷工程に、封函機、画像検査、倉庫制御システムを導入し、9~12人の作業を1~3人に削減
  • タオル卸売会社が、コンテナから荷物を降ろす自律型ロボットを導入し、作業者を5人から2人に減らす計画
  • QRコードによる荷物の測定・個数確認・仕分けを導入し、入荷確認を自動化

倉庫内の移動、積み降ろし、数量確認、検品、梱包、出荷まで、物流工程全体が対象になっています。

宿泊・温浴施設

  • ホテルが、セルフチェックイン機とICカード錠を導入し、フロント業務を1日6時間削減
  • 宿泊施設が、予約、フロント、顧客管理、会計を一つのシステムに統合
  • ホテルが、専用清掃ロボットを導入し、対象清掃時間を約90%減らす計画
  • 温浴施設が、POS、リストバンドキー、セルフ精算、入退場ゲート、飲食管理を統合し、関連作業を64%減らす計画

宿泊業では、受付を無人化するだけでなく、予約情報、客室、会計、清掃を連携させることがポイントになっています。

飲食業

  • 自動フライヤー、生地成形機、商品読み取り、油のろ過装置などを組み合わせる
  • 自走式配膳ロボット、高速食器洗浄機、AI画像選別を組み合わせる
  • コンビオーブン、ブラストチラー、食器洗浄機、セルフオーダー、POSを連携させる

「配膳ロボット1台」ではなく、調理、提供、会計、片付けを一つの流れとして改善する事例が中心です。

クリーニング・自動車整備

  • リネンサプライ会社が、布を広げる設備、アイロン、折り畳み機を導入し、1日20時間分を削減、処理速度を4倍にする計画
  • クリーニング会社が、無人受取ロッカー、洗浄、薬剤投入、仕上げ、包装設備を連携し、年間2,600時間を削減
  • 自動車整備会社が、塗装ブースとAI調色システムを導入し、1台30時間の作業を15時間に短縮
  • 車体整備会社が、溶接・計測設備を導入し、1台30時間を23.3時間に短縮。技能習得期間も3年から2年に短くする計画

省力化だけでなく、身体的負担、技能習得、品質のばらつきへの対応も重視されています。

医療・歯科・動物病院

採択事業名には、次のような例があります。

  • 電子カルテと自動精算機の連携
  • 予約管理と会計業務の自動化
  • 調剤包装機や調剤ロボットの導入
  • AIを利用した超音波検査の時間短縮
  • CTと麻酔システムを組み合わせた動物診療
  • 歯科技工物を製作するデジタル設備
  • 動物病院の画像診断、整形外科手術システム

医療行為そのものだけでなく、受付、予約、会計、調剤、画像診断、技工物製作が省力化の対象になっています。

農業・水産業

  • 田植機と自動操舵システムの導入
  • 収穫用コンベヤーとデジタル監視の連携
  • AIカメラを利用した色彩選別機
  • 魚の給餌と死魚回収を連携したシステム
  • 農産物の選別、計量、包装の自動化

農業でも、単なる大型機械化だけでなく、選別や監視、包装など、収穫後の工程まで対象が広がっています。

※上記の時間削減、生産量増加等は、申請時に示された「計画上の見込み」です。事業完了後の実績値ではありません。第2回事例第3回事例第4回事例第5回事例第6回事例

広島県では230件、全国10位

第1回から第6回までの広島県の採択は合計230件でした。全体の約3.0%で、都道府県別では全国10位です。

公募回広島県の採択件数
第1回28件
第2回17件
第3回57件
第4回56件
第5回29件
第6回43件

県内の採択事業には、次のような例があります。

  • ICT油圧ショベルとチルトローテータを使った建設作業
  • 3Dデータを使った建材の自動切断
  • ウォータージェットロボットによるコンクリート除去
  • 粉体塗装工程の自動搬送
  • 工場内の自動ハンドリングロボット
  • AIによる資源ごみ選別ライン
  • RFIDを利用した出荷間違い防止
  • 薬局の調剤ロボット
  • 動物病院の画像診断・整形外科手術システム
  • 広告、求人、請求業務をまとめたAIシステム

製造業だけでなく、建設、医療、動物病院、リサイクル、物流、事務処理にも広がっています。第5回採択者一覧第6回採択者一覧

どのような会社が検討しやすいのか

採択事例を横断して見ると、業種よりも「会社が抱えている問題」に共通点があります。

1.注文はあるのに、人手不足で処理できない会社

受注を断っている、納期が延びている、夜間や休日に作業している会社です。省力化によって処理能力を増やす説明がしやすくなります。

2.毎日、同じ手作業を繰り返している会社

計量、投入、加工、検品、包装、運搬、入力、予約受付、会計など、回数と時間を数えられる作業がある会社です。

3.熟練者しかできない仕事がある会社

溶接、塗装、加工、見積、検査、調色などが特定の人に集中している会社です。機械やシステムによって作業を標準化し、熟練者を難しい仕事や人材育成に回す事例が多く見られます。

4.工程の間に「運ぶ・待つ・入力し直す」が多い会社

省力化の対象は、中心となる加工だけではありません。材料を運ぶ、紙の内容を入力し直す、完成品を次の工程へ移す、担当者の確認を待つ、といった周辺作業に大きな改善余地があります。

5.機械とシステムを連携させられる会社

採択事例では、設備を1台だけ導入するより、前後の工程を含めて連携させる計画が多く見られます。

例えば、単に包装機を買うのではなく、計量、包装、ラベル発行、検品、出荷管理までをつなげる形です。

採択事例から見える説明のポイント

採択事例には、次のような流れがあります。

  1. 現在、何人が何時間かけているかを示す
  2. どの作業が人手不足や残業の原因かを特定する
  3. 設備やシステムで、どの工程を変えるかを示す
  4. 導入後に何時間、何人分を減らせるかを示す
  5. 空いた人員を営業、品質管理、顧客対応、人材育成などへ移す
  6. 生産量、売上、付加価値、賃金の向上につなげる

「最新のAIを導入する」という説明よりも、「毎日5人で行っている作業を2人にし、3人を別工程へ移す」という説明の方が、省力化の効果は伝わりやすくなります。

逆に、単なる老朽設備の更新、時間削減が曖昧な投資、売上増加だけを目的とした投資では、省力化との関係を十分に説明しにくいと考えられます。

まとめ

中小企業省力化投資補助金の採択事例を分析すると、次のことが分かります。

  • 第1~6回は11,720件の申請に対し7,684件が採択され、採択割合は65.6%
  • 採択企業の約半数が従業員20人以下、約4分の3が50人以下
  • 製造業と建設業で約68%を占めるが、医療、小売、サービス業なども増加
  • 申請された補助金額は、2,000万円未満が約73.7%
  • AIやロボットだけでなく、加工、検品、包装、運搬、受発注、予約、会計などが主要テーマ
  • 公式詳細事例の78.7%は、工程全体の改善または複数設備の組み合わせ
  • 重要なのは設備の新しさではなく、「何人・何時間を減らし、その人材をどこへ移すか」を具体的に示すこと

第8回は、2026年9月18日10時に申請受付が始まり、締切は10月16日17時、採択発表は2027年2月上旬の予定です。

第8回の採択事例はまだ存在しないため、検討に当たっては、第1回から第6回の事例を参考に、自社の仕事を「加工」「運搬」「検査」「包装」「受付」「入力」などの工程に分けて考えることが第一歩になります。第8回公募スケジュール

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