
9月に、講座をすることになりました。
経営者団体さんからの、ご依頼です。
テーマは、AIの使い方についてです。
そこで何をお話ししようか、考えています。
便利な使い方のお話は、たぶん、
どこででも聞けると思います。
だからこそ、私は逆をお話しします。
AIの、いちばん怖いところ。
今日は、その話を書きます。
AIで楽をした分は、「思考の借金」になります

AIには、弱点がひとつだけあります。
それは、「認知的負債」と呼ばれています。
かたい言葉なので、平易な言葉に言いかえます。
ひとことで言うと、思考の借金です。
思考を楽した分だけ、思考の借金が増えます。
といっても、よく分からないと思いますので、
たとえ話をします。
カーナビを思い出してみてください。
はじめての場所へ行った、あの日・あの時です。
ナビに言われたとおりに曲がって、着いた。
では、その道を覚えていますか。
たぶん、覚えていないと思います。
これが、思考の借金の正体です。

同じことを調べた研究があります。
マサチューセッツ工科大学の研究です。
54人を、3つの組に分けました。
1 ChatGPTを使って書く組。
2 つぎに、検索だけで書く組です。
3 そして、何も使わずに書く組です。
頭に電極をつけて、脳を測ります。
小論文を、4回書いてもらいました。
1回目のあと、こう聞きました。
「いま書いた文章から、一行思い出してください」と。
数分前に、自分で書いた文章です。
ところが、ChatGPTを使って書いた組は、
自分で書いた文章なのに、
83.3%の人が、一行も文章を思い出せませんでした。
検索だけの組・何も使わなかった組は、
反対に約90%の人が、自分の書いた文章を思い出せました。
脳のはたらきも、計測しました。
いちばん活発に働いていたのは、
何も使わずに書いた組でした。
脳の働きがいちばん弱かったのは、AIの組です。
「自分が書いた」という感覚も、
AIの組が、いちばん低いです。
ただし、大事なことを書いておきます。
この研究は、まだ査読を受けていません。
また、たった54人の限られた実験です。
研究した人たち自身が、こう書いています。
この論文は、まだ査読を受けていません。
ですから、ここに書いた結論は、すべて暫定的なものとして、
慎重に受け取ってください。
参加者の人数も限られていますし、
小論文を書くという場面に限った話です。
では、どんな借金を返すことになるのでしょうか

借金ですから、返す日が来ます。
返すものは、私は3つあると思います。
返す日が近い順に、書いてみます。
①その日のうちに
覚えていない
自分の名前で出した書類の中身を、
自分で説明できません。
商談の席、銀行の窓口、お客様の前で、
いきなり請求が来ます
② 2〜3年かけて
マイクロソフトと、アメリカの大学が、
働く人319人に聞いたものです。
AIを信じている人ほど、自分の頭で
考える量が、減っていたそうです。
AIに依存すればするほど、
徐々に思考力が、失われていきます。
③ 10年後に、まとめて
みっつめが、いちばん怖くて恐ろしい。
返す日が来るのは、10年後です。
会社の中で、人が育たなくなる。
かつては、若い人はこう育ちました。
下手な文章を書いて、上司に赤ペンでチェックされて。
面倒な工程が、少しずつ人を育てていました。
ところが、AIは最初から80点です。
新人は、80点を上司のところに持って行き、
訓練を積んだ上司が、100点に引き上げます。
今日の仕事は、たしかに速くなります。
でも、10年たったらどうでしょう。
80点を100点にできる人が、
既に退職して、社内にいなくなっています。
AIへの思考の借金のおそろしさ
AIに考えてもらった分は、あとで利息をつけて返す必要があります。
しかも、恐ろしいことに、返す日は自分では選べません。
それに、いくら借金が貯まっているのか目に見えません。
でも、じわじわと借金の額が増えていきます。
なにより、いちばん返済したくない場面で、借金の請求が来ます。
私は、AIによる仕事の効率化を推進しています。
反面、AIによる効率化の副作用も、十分熟知する必要がある、
そう考えます。
だからこそ、小学生・中学生への
AIの無条件の導入は、反対です。
責任を負えない子どもたちに、
認知的負債・思考の借金を負わせるべきではありません。
小学生・中学生のうちは、
時間がかかっても、思考し言語化することで、
言語化能力を高める必要があります。
子供だけではありません。
仕事に対して、十分な理解のない、新入社員に対してもそうです。
AIは、確かに便利な道具です。
ただ、その副作用や反作用を、十分に理解して使わないと、
取り返しのつかない大きなツケを、払わされることになります。
私が講師を務めさせていただくセミナーでは、
是非こうしたAIの危険性についても、
警鐘を鳴らしていきたいと思っています。


