

昨日の夕方、ある数字を見て、しばらく手が止まりました。
今年の1月から6月までに、建設業から撤退した会社が、5,937社。
帝国データバンクが、令和8年7月14日に発表した調査です。
上半期としては、2000年に集計を始めて以来、いちばん多い数字だそうです。
リーマン・ショックの直後より、多いんです。
でも、私がほんとうに、ぞっとしたのは、その内訳のほうでした。
5,937社のうち、「倒産」は、1,043社しか、ありません。
残りの4,894社は、倒産じゃ、ないんです。
自分から、静かに、やめているんです。
今日は、その話をさせてください。
少し長くなりますが、どうか最後までお付き合いください。
倒産より、「自分でやめた会社」のほうが、4倍以上多い

数字を、もう少していねいに、見てみますね。
【建設業 令和8年1月〜6月】
倒産 … 1,043件(前年同期比 +5.8%)
休廃業・解散 … 4,894件(前年同期比 +27.8%)
合計(「撤退」)… 5,937件 = 上半期としては、2000年の集計開始以降で過去最多
(リーマン・ショック直後の平成21年上半期 5,811件を上回りました)
「倒産」と「休廃業・解散」は、まったく別のものです。
倒産は、お金が回らなくなって、行き詰まることです。
でも、休廃業・解散は、ちがいます。
まだ払えるうちに、まだ体力が残っているうちに、
社長さんが自分で「もう、ここまでにしよう」と決めているんです。
増え方を見てください。
倒産は5.8%増ですが、
自分でやめたほうは、27.8%も増えています。
倒産と休廃業・解散を合わせた「撤退」を業態ごとに見ると、
いちばん多いのは、木造建築工事の947件。
全体のおよそ16%です。
前の年の同じ時期からの増え方でいうと、
左官工事が67.7%増、金属製屋根工事が66.7%増、タイル工事が60.7%増。
どれも、実際に手を動かす、専門工事の会社ばかりなんです。
私が怖いのは、この4,894という数字です。
倒産は、防ぎようがないこともあります。
でも、廃業は、社長さんが「決める」ものなんです。
決めてしまったあとでは、私たちには、もう何もできません。
決める前なら、まだ、間に合うんです。
正直に書きます。私はずっと「求人を出しましょう」と言っていました

ここで私のしくじりを、白状させてください。
以前の私は、「人が足りない」というご相談に、
採用の話しか、していませんでした。
求人を出しましょう。待遇を見直しましょう。
採用に使える助成金が、ありますよ。
でも、社長さんはうつむいたまま、こう言われるんです。
「先生、出しとるよ。何回も出しとる。来んのんよ。」
「たまに来ても、すぐ続かんのんよ。」
それでも私は、しばらく、採用の話をやめられませんでした。
ほかに渡せるカードを、持っていなかったからです。
あるとき、はっと気づきました。
採用の話をしている限り、この社長さんは、救えない。
これは、私の実感だけの話じゃありません。
数字も、そう言っています。
建設業で働く人 … 478万人(令和7年平均)
ピークだった平成9年 … 685万人
= この約30年で、207万人が、いなくなりました。
55歳以上 … 約37% / 29歳以下 … 約12%
およそ3人に1人が、55歳以上です。
29歳以下の若い人は、8人に1人ほどしか、いません。
この人たちが引退するとき、
代わりは、どこにも用意されていないんです。
げんに、人手不足が原因の倒産は今年の上半期で227件。
過去最多を更新しました。
そのうち建設業が65件で、業種別の1位です(帝国データバンクの集計)。
人がいないことが、そのまま会社の終わりに直結しはじめています。
ここで、正直に、もうひとつ書いておきます。
「仕事はあるのに、人がいない」と言われることが、多いですよね。
でもいまの実態は、もう少しきびしいんです。
令和8年5月の建設業の新規求人は、
前年の同じ月とくらべて、10.3%も減っています(厚生労働省の調べ)。
つまり、仕事そのものも、減りはじめている。
いっぽうで、人件費は、上がり続けています。
国が決める公共工事設計労務単価は、
令和8年3月から、全国全職種の加重平均で25,834円。
はじめて25,000円を超えました。
単純平均でみると、前年度より4.5%高い水準です。
これで14年連続の上昇になります。
仕事は減る。人は、もっと減る。
コストだけが、上がる。
この三重苦のなかに、いま、建設業の社長さんは立っておられます。

「施工力が、希少資源になりつつある」― この一言が、すべてです

先週7月6日に、東京商工リサーチが、
こんな分析を出していました。
令和7年の建設業の倒産で、
職別工事業が814件、総合工事業が774件。
職別工事業が、総合工事業を件数で上回ったんです。
2000年以降で、はじめてのことでした。
職別工事業というのは、鉄筋、型枠、左官、塗装、内装 ――
つまり、実際に手を動かす会社のことです。
元請けより先に、現場で手を動かす会社が消えている。
東京商工リサーチは、この状況を、ひと言でこう表しました。
施工力が、「希少資源」に。
「人手不足に加え、技能者の高齢化が大きな問題になっており、
施工力が『希少資源』となりつつある」
(東京商工リサーチ 令和8年7月6日)
希少資源というのは、
お金を積んでも、手に入らないもののことです。
ここに、私が伝えたいことのすべてがあります。
人を採る競争は、もう、勝ち負けの話じゃないんです。
そもそも、市場に、いないんですから。
だとしたら、残された道は、ひとつしか、ありません。
一人あたりの施工量を、上げること。それだけです。
これは、「もっと頑張れ」という根性論じゃ、ありません。
むしろ、その逆です。
いま、現場に残ってくれている人の、体と時間には限りがあります。
しかも、働ける時間には、法律の上限もあります。
労働基準法(昭和22年法律第49号)の時間外労働の上限規制が、
建設業にも令和6年4月から、かかっているからです。
だから、頑張りで埋めるのではなく、
工程そのものを、組み替えるしかない。
ここが、私がいちばんお伝えしたいところです。
人手不足は、「人」の問題に見えて、
ほんとうは「工程」の問題なんです。
この補助金、もう「製造業のもの」じゃ、なくなっています

そのために、国が用意している制度が、あります。
中小企業省力化投資補助金の、一般型です。
こうお話しすると、建設業の社長さんから、決まってこう言われます。
「あれ、工場の補助金じゃろ。うちには関係ないわ。」
以前は、そのとおりでした。
でも、もうちがうんです。
公式に発表されている「採択結果の概要」を、
第1回から第5回まで、ぜんぶ並べてみました。
【採択された事業者の、業種別の割合】
建設業 製造業
第1回 … 11.3% 61.7%
第2回 … 12.4% 58.4%
第3回 … 15.5% 51.3%
第4回 … 15.9% 50.1%
第5回 … 17.7% 49.7%
第1回〜第5回で、採択されたのは、合計6,508件です。
建設業は、11.3%から17.7%へ。ずっと、上がり続けています。
いっぽうで製造業は、61.7%から49.7%へ。
はじめて、半分を割りました。
直近の第5回でいえば、
採択された6件に1件以上が、建設業だったということです。
つまり、こういうことなんだと思います。
建設業の社長さんは、もう、気づき始めているんです。
気づいた方から、使っておられる。
「工場の補助金じゃろ」と言って、
見送っている社長さんが、
いま、いちばん損をしています。
広島県の会社は、もう、使っています

【広島県で採択された会社(社名・事業計画名は、公表資料のまま)】
株式会社シガ設備工業(安芸高田市・第4回)
「少人数かつ若手中心の組織で効率的かつ高精度な施工体制の構築」
株式会社ニシカイチ(広島市佐伯区・第4回)
「ICT施工管理×自動ロッド着脱で防災・減災工事を省力化・高度化」
株式会社ミヤケン(広島市南区・第5回)
「ウォータージェットロボット増設によるはつり工事の省人省力化」
後藤鉄筋工業有限会社(福山市・第5回)
「オーダーメイド自動切断機導入による鉄筋加工省力化事業」
有限会社重常建設(東広島市・第5回)
「省力化技術による生産性向上がもたらす地域密着型受注の拡大」
イシハラ株式会社(呉市・第4回)
「解体業者による小割・選別工程の省力化に向けた設備導入計画」
株式会社エムシス(広島市佐伯区・第4回) 「最新穿孔機導入により下水道管きょ更生工事の効率化を実現」
いちばん上を、もう一度、見てください。
所在地は、広島県安芸高田市です。
三次から、車で30分ほどの、お隣の町です。
同じ中山間地で、同じように人手が足りなくて、
同じような現場をやっている会社が、
もう、この制度を使っているんです。
そして、ここからが私が、今日いちばん悔しい話です。
第5回の広島県の採択は、29件でした。
その一覧を、私は2度頭から読み返しました。
三次市の会社は、1件もありませんでした。
三次に、がんばっている建設会社がないからじゃありません。
ないわけが、ないんです。
私は、その社長さんたちを知っています。
ただ、この制度を、ご存じないだけなんです。
それは、社長さんのせいではありません。
伝えていない、私のような人間の責任です。
だから、今日、こうして書いています。
※広島県の会社の一覧は、公式PDFの記載と、国税庁の法人番号公表サイトの登記情報を、1社ずつ突き合わせて確認しました。
ただし、業種は公表されていないため、建設業かどうかは、社名と事業計画名からの私の判断です。
何が採択されているのか ― 建設業の「10の型」

では、いったい何を書いて出せば、通るのか。
いちばん確かなのは、実際に通った会社の、事業計画の名前を見ることです。
そこで、直近の第5回の採択者1,251件を、47都道府県分、全て開きました。
社名と事業計画名から、建設に関わると読めるものを拾ったところ、281件ありました。
それを、10の型に分けてみます。
ご自分の会社がどこに当てはまるか、探しながら読んでみてください。
【第5回で、私が拾えた建設関連 281件の内訳】
① ICT建機・マシンコントロール 44件
② 鉄筋・鉄骨・型枠・プレカットの加工 40件
③ 専門工事の自動化(配管・板金・塗装ほか)36件
④ 建材・砕石・生コン・資材ヤード 35件
⑤ 積算・見積・施工管理のDX/AI 28件
⑥ 解体・破砕・資源循環 23件
⑦ 3D測量・ドローン・点群・BIM/CIM 20件
⑧ 検査・維持管理・補修 13件
⑨ チルトローテータ・多機能アタッチメント 11件
⑩ 高所・足場・搬送・揚重 11件
(ほかに、杭・地盤調査・さく井・港湾など 20件)

この表を見て、驚かれませんでしたか。
いちばん多いのは、たしかにICT建機です。
でも、44件。281件のうちの、6分の1にすぎません。
鉄筋・鉄骨・型枠が40件。専門工事が36件。積算やDXが28件。
採択されているのは、ICT建機ばかりじゃ、ないんです。
ここからは、型ごとに、実際に通った会社の計画名を並べます。
すべて、公式の一覧に載っているままの言葉です。
【型①】ICT建機・マシンコントロール 44件
土工・造成・舗装・河川。丁張りや検測を、機械に任せる型です。
「建設DXによる丁張り廃止とシングルオペレーション体制の確立」(株式会社太虎/大分県)
「栃木県民の暮らしを守る!ICT建機による丁張り作業の省人化」(株式会社小林興業/栃木県)
「ICT建機導入によるワンマン施工体制の確立と高付加価値化」(髙山建設株式会社/奈良県)
「深さ自動測定機能活用による狭小現場の省力化施工モデル構築事業」(平沢土建株式会社/長野県)
「TRMGバックホー省人化と配置転換による社員の笑顔創造事業」(株式会社大豊実業/福岡県)
【型②】鉄筋・鉄骨・型枠・プレカットの加工 40件
切る・曲げる・溶接する。加工場の中の仕事を、機械に任せる型です。
「鉄筋自動切断及び曲げ機械導入による省力化と高付加価値化計画」(株式会社中信鉄筋/長野県)
「型枠工事の工程省力化を通じて戸建住宅基礎工事へ新規参入」(株式会社fusamaru/長野県)
「自動加工設備導入による型枠工事の省力化と元請け営業体制の構築」(株式会社王工務店/埼玉県)
「加工で止まらない現場をつくる鉄筋省力化転換事業」(株式会社照屋鉄筋工業/沖縄県)
「可搬型溶接ロボット導入による仕口溶接省人化計画」(株式会社矢翔/埼玉県)
【型③】専門工事の自動化 36件
配管、ダクト、板金、塗装、防水、電気、水道。重機を持たない会社の、主戦場です。
「屋根板金工事の省力化と高度化を実現する」(株式会社ケイズメタル/茨城県)
「板金加工設備の導入による内製化・省力化と職人技術の継承」(株式会社岸本工務店/神奈川県)
「省力化設備導入による防水工事の全体工期短縮と生産性向上事業」(株式会社和泉工業/福岡県)
「電気通信工事における融着作業の省力化による生産性向上事業」(株式会社エム・ディー・ブレイズ/神奈川県)
「大口径水道管の不断水による施工効率向上事業」(栄進建設株式会社/香川県)
「アナログ業務DXによる消防設備業の省力化・高付加価値投資」(株式会社山下防災システム/福岡県)
なお、④の建材・砕石・生コンは、ここでは個別の計画名を挙げていません。
国の分類では、建設業ではなく、
製造業や鉱業として数えられている可能性が高いからです。
ただ、これは裏を返せば、朗報でもあります。
この補助金は、そもそも業種で線を引く制度ではありません。
だから、建設業に数えられるかどうかを、気にする必要はないんです。
【型⑤】積算・見積・施工管理のDX/AI 28件
機械を1台も買わずに、システムだけで通っている型です。
「AI活用型建築見積もり自動化システム導入による業務省力化事業」(株式会社アタッチメント/京都府)
「熟練の「暗黙知」をAIで「形式知」化する「次世代型・建設DX統合プラットフォーム」構築事業」(株式会社リサイドワン/北海道)
「生活インフラを鳶工事で支える!統合基幹DXによる省力化計画」(株式会社まちだ/福岡県)
「AI見積による省力化と自律的人材育成による生産性向上」(有限会社オケヨシ住設/三重県)
「補償及び積算業務のDX化による省力化及び地域インフラの活性化」(JRE補償コンサルタント株式会社/東京都)
【型⑥】解体・破砕・資源循環 23件
「高所解体への重機導入と宅地造成へ新規参入、福島の復興を加速!」(株式会社一建/福島県)
「狭小地解体を重機化する省力化体制構築事業」(有限会社英進建設/大阪府)
【型⑦】3D測量・ドローン・点群・BIM/CIM 20件
「ドローン・AUVと最新レーザー測量機器で海中測量業務を抜本改善!」(三国屋建設株式会社/茨城県)
「陸・空ハイブリッド3D計測による測量プロセスの省力化と高度化」(株式会社鈴木測量設計/岩手県)
【型⑧】検査・維持管理・補修 13件
「検査ロボットとドローンによるコンクリート構造物調査の省力化」(有限会社アックス/北海道)
「軌陸車及び電動締結機の導入による線路保守作業の省力化計画」(北友工業有限会社/東京都)
【型⑨】チルトローテータ・多機能アタッチメント 11件
「3Dマシンガイダンス×チルトローテーターによる省人化施工事業」(株式会社ハタナカ/長野県)
「ICT建機×チルトローテータによる現場施工の省力化で売上拡大」(株式会社樹山工業/京都府)
【型⑩】高所・足場・搬送・揚重 11件
「次世代足場×QR資材トレーサビリティで足場業界DXに挑戦!」(株式会社大井建設工業/千葉県)
「スパイダークレーンと電動深礎掘削機を組合わせた省力化工法の開発」(有限会社総合建設業ナルミ/山口県)
この中に、ご自分の会社と重なるものが、ひとつくらい、ありませんでしたか。
※事業計画名と社名は、中小機構が公表している第5回の採択者一覧から、そのまま書き写したものです。
この一覧に、業種の欄はありません。
建設業かどうか、どの型に当てはまるかは、社名と計画名からの私の判断であり、公式の分類ではありません。
公式に公表されている建設業の割合は、第5回で17.7%(採択1,251件のうち、およそ221件)です。
私の集計281件(およそ22.5%)がこれを上回るのは、建材製造や砕石など、公式には製造業・鉱業に分類され得る事業者まで拾っているためと考えられます。
また、読み取りの取りこぼしも避けられませんので、各型の件数は「最低でも、これだけはある」という下限としてお読みください。
なお、この一覧には、削減時間などの数字は、いっさい載っていません。
重機がなくても、一人親方でも、通っています

いま並べた計画名を見て、気づいていただきたいことが、2つあります。
ひとつめ。重機が、1台も出てこない計画が、たくさんあります。
鉄筋の切断機。型枠の加工機。板金の折曲機。配管の溶接機。AIの見積システム。
「うちは重機を持っとらんけぇ、関係ないわ」
そう言って見送っておられる社長さんが、いちばん多いんです。でも、ちがうんです。
この補助金が求めているのは、重機じゃありません。
「いま人がやっている作業時間を、どれだけ減らせるか」。それだけなんです。
だから、事務所の中の見積作業でも、加工場の中の切断作業でも、対象になります。
ふたつめ。法人でなくても、通っています。
採択者の一覧には、会社名にまじって、個人のお名前が並んでいます。
【個人事業主として採択された方の、事業計画名】
「高効率法面工事実現へ!特注スプリングドリル導入計画」(小椋高義さん/岐阜県)
「鉄筋の曲げ加工自動化による省力化!生産性向上と賃上げを実現」(西野二郎さん/新潟県)
「3Dスキャナー導入による現場作業の省人化と労働環境の劇的改善」(河野隆弘さん/香川県)
「鉄筋ユニット化による省力化施工体制構築事業」(辺土名将一さん/沖縄県)
※第2回・第5回の採択者一覧より。個人事業主かどうかは、一覧の表記からの判断です。
一人親方でも、通っているんです。
「うちみたいな小さいところは、どうせ無理じゃろう」
その思い込みだけで、見送っておられるとしたら。ほんとうに、もったいない。
むしろ、小規模な事業者さんのほうが、補助率は3分の2と、手厚いんです。
で、どれくらい、ラクになるのか

計画の名前だけでは、実際どれだけ効くのかが、見えませんよね。
じつは、中小機構は、効果の数字も公表しています。
ただし、そちらは会社名を伏せた形です。
建設業のものを、3つ、拾ってみました。
以下は、公表資料の中身を、私なりの言葉でまとめ直したものです。
原文そのままの引用では、ありません。
【事例1】重機と設備を、組み合わせて入れた会社
課題 … 非効率な作業のせいで、年間およそ1,200時間が発生し、約1,500万円のコスト増になっていた。
結果 … 省力化に役立つ重機・設備を組み合わせて導入し、作業時間を約45%削減。
【事例2】積算に、AIを入れた会社
課題 … 見積もりを1件つくるのに、2時間以上。
しかも工事部門が営業も兼ねていて、営業の時間が取れない。
結果 … AIに自社のデータを学ばせ、積算から見積までの時間を、約4分の1に短縮。
【事例3】ICT測量とICT建機を、つないだ会社
結果 … 施工工程ぜんたいの作業時間が、7.5時間から4.8時間へ。
ほかの工程も含めると、1日あたり3.1時間の削減。
その先 … 現場あたりの必要人数が最適になり、
余った人を他の現場へ配置できるので、受注機会が広がり収益が上がる。
この3つ、共通点に、お気づきでしょうか。
どれも、「時間が減りました」で、終わっていないんです。
空いた時間を、営業に回す。
余った人を、別の現場に回す。
そして、受注を増やして、利益を出す。
ここまで、ちゃんと書いてあるんですね。
じつは、さきほど並べた計画名にも、同じ匂いがします。
「配置転換による社員の笑顔創造事業」。
「元請け営業体制の構築」。
「戸建住宅基礎工事へ新規参入」。
どれも、省力化の「その先」が、タイトルに入っているんです。
※【事例1〜3】の数字は、会社名を伏せた「採択結果の概要」に載っているものです。
⑤⑥で挙げた社名・計画名とは、別の資料です。結びつけて読まないでください。
で、いくら、出るのか

では、お金の話を、させてください。
補助してもらえる上限は、従業員の数で、変わります。
【補助の上限額】 通常 →(大幅賃上げ特例のとき)
従業員 5人以下 … 750万円 →(1,000万円)
6〜20人 … 1,500万円 →(2,000万円)
21〜50人 … 3,000万円 →(4,000万円)
51〜100人 … 5,000万円 →(6,500万円)
101人以上 … 8,000万円 →(1億円)
補助率は、中小企業なら、かかったお金の2分の1です。
小規模な事業者さんは、3分の2まで見てもらえます。
それから、中小企業でも、最低賃金引上げ特例にあてはまれば、3分の2に上がります。
ここ、まちがえやすいので、はっきり分けて書いておきますね。
大幅賃上げ特例 … 「上限額」が、上がります。
条件は、一人あたりの給与支給総額を年平均6.0%以上のペースで増やし、
かつ事業場内の最低賃金を地域別最低賃金より50円以上、高くする計画にすること。
最低賃金引上げ特例 … 「補助率」が、上がります(中小企業が2分の1 → 3分の2)。
条件は、地域別最低賃金の引上げの影響を受ける従業員が、全従業員の30%以上を占める月が、3か月以上あること。
小規模事業者や再生事業者は、もともと3分の2なので対象外です。
名前は似ていますが、効くところが、まったく別です。
どちらも、判定の対象期間が細かく決まっています。
必ず、最新の公募要領でご確認ください。
対象になるのは、機械装置・システム構築費です。
ここは、1つあたり50万円(税抜)以上のものが必要で、しかも必ず入れなければいけません。
運搬費や外注費、専門家に払うお金なども対象ですが、
機械装置・システム構築費以外は、合計で500万円(税抜)までです。
そして、条件です。ここは、ていねいに読んでください。
① 労働生産性を、年平均4.0%以上のペースで、伸ばす。
② 一人あたりの給与支給総額を、年平均3.5%以上のペースで、増やす。
③ 事業場内の最低賃金を、地域別最低賃金より30円以上、高くする。
(従業員が21名以上なら、一般事業主行動計画 ―― 仕事と子育ての両立を支える計画のことです ―― を、公表していることも要ります。
くわしい数字は、必ず最新の公募要領で、ご確認くださいね。)
ここで、よくあるまちがいを、2つ。
①は「付加価値額」ではなく、「労働生産性」です。ものづくり補助金と、混ざりやすいところです。
②は「総額」ではなく、「一人あたり」の総額です。ここを読みちがえると、計画の数字が、ぜんぶ狂います。
その労働生産性というのは、会社が生み出した付加価値額を、働いた量(従業員の数、あるいは従業員数×一人あたりの年間就業時間)で割ったものです。
つまり、儲けの総額ではなく、「一人が、どれだけ生み出したか」を見ています。
これは、③でお話しした「一人あたりの施工量」と、まったく同じことを言っています。
だからこの制度は、人を増やせない建設業と、相性がいいんです。
落ちる申請には、はっきりした共通点があります
この補助金の審査は、4つの目で見られます。適格性、技術面、計画面、政策面です。
なかでも技術面では、省力化指数というものが見られます。
難しそうな名前ですが、中身は、単純です。
省力化指数
=(その作業に、いまかかっている時間 − 入れたあとに、かかる時間)÷ その作業に、いまかかっている時間
※公募要領の言葉では、「設備導入により削減される業務に要していた時間」から「設備導入後に発生する業務に要する時間」を引き、前者で割ります。
ここに、大事なことが隠れています。
この式は、「いま何時間かかっているか」を測っていないと、そもそも書けないんです。
ここから、落ちる申請の共通点が、見えてきます。
1.「人手不足だから、機械を買います」で終わっている
どの工程の、何人が、何時間、何回やっているのかが、測られていない。
2.建機の、ただの入れ替えになっている
旧型から新型へ。施工の方法も、前後の工程も、人の配置も、何も変わらない。
3.空いた時間の、行き先が書かれていない
「楽になります」で止まっている。公式の事例は、必ずその先まで書いてあります。
4.「売上が増えます」で止まっている
現場が何件増え、粗利がいくら増えるのか。そこまで、数字にする。
5.カタログの製品を、そのまま買うだけになっている
一般型は、自社に合わせたオーダーメイドかどうかを、見られます。
では、逆に。通っている計画には、何が書いてあるのか。
⑥で並べた計画名を、もう一度、思い出してみてください。
じつは、あの短いタイトルの中に、答えが入っているんです。
【通る計画名に、共通して入っているもの】
1.何を入れるかが、はっきり書いてある
「オーダーメイド自動切断機」「可搬型溶接ロボット」「無線装置付きICT建機」。「省力化設備」では、ぼんやりしています。
2.どの作業が消えるかが、書いてある
「丁張り廃止」「検測作業の省力化」「アタッチメント交換」。工程の名前が、はっきり出ています。
3.そのあと何をするかが、書いてある
「元請け営業体制の構築」「戸建住宅基礎工事へ新規参入」「配置転換による社員の笑顔創造」「人材再配置」。ここが、いちばん大事です。
4.組み合わせている
「3Dマシンガイダンス×チルトローテーター」「ICT測量とICT建機の連携」。1台を新しくするのではなく、前後の工程ごと、つないでいます。
そして、公式の事例が示していた数字の型はこうでした。
いまの非効率を「年間およそ1,200時間・約1,500万円」と測る。
そのうえで「約45%削減」と示す。
測ってから、減らす。この順番なんです。
ここまでを、ひと言で、まとめますね。
事業計画書は、買い物リストじゃ、ないんです。
どの工程の、誰の、何時間を、どこへ移すのか。
その設計図を、言葉にする仕事なんです。
そして、これは、現場でずっと感じてきたことなんですが。
建設業の社長さんに足りないのは、機械を買うお金じゃ、ありません。
機械を選んで、工程を組み直して、それを書類にする時間なんです。
だって、朝から晩まで、ご自分が現場に出ておられるんですから。
そこは、私たちのような専門家を、遠慮なく使ってください。
おわりに ―― 決める前に、一度だけ
最初の数字に、戻らせてください。
4,894社。
今年の前半だけで、自分から会社をたたんだ建設会社の数です。
そのなかには、腕のいい職人さんを抱えて、
お客さんにも信頼されていた会社が、たくさんあったはずです。
帝国データバンクは、「持つ者」と「持たざる者」の差が、
はっきりしてきたと書いていました。
でも私は、その差の正体は、体力の差じゃないと思っています。
知っているか、知らないか。ただ、それだけのことが、多いんです。
ちがったのは、たったひとつだけです。
この制度を、知っていたか。それだけです。
倒産は、向こうからやって来ます。
でも、廃業は、社長さんが決めるものです。
だから、決める前に、一度だけ、声をかけてください。
まだ打てる手があるうちに、いっしょに、工程の絵を描きましょう!


