
明日、今年の最低賃金が、事実上、決まるかもしれません。
国の審議会の話し合いが、いよいよ大詰めなんです。
決まれば、今年も、時給は上がる見通しです。
7月のはじめに、業務改善助成金のお話をしました。
賃上げに、設備の導入をセットにすると、
国から最大600万円が戻る制度でした。
受付開始は、9月1日。「まだ先の話」と思っていませんか。
じつは、この助成金、夏休みの宿題と、おなじなんです。
夏のうちに宿題を終えた会社だけが、9月1日にスタートを切れる。
今日は、その“宿題”の中身を、ひとつずつ、書いていきますね。
明日、最低賃金が、事実上決まるかもしれません
先週の7月17日、時事通信が、こんなニュースを伝えました。
最低賃金の目安を話し合う、国の小委員会の、3回目の会合。
労使の溝が埋まらず、金額の議論に入れないまま終わったそうです。
そして、次回の4回目の会合が、明日、7月23日。
7月中の決着を目指す、と報じられています。
つまり、早ければ今週にも、今年の引上げの目安が見えてくるんです。
昨年の引上げは、全国の平均で66円と、過去最高でした。
これで、全国の平均は、時給1,121円になっています。
私たちの広島県は、65円上がって、時給1,085円。
発効したのは、令和7年11月1日でした。
今年の金額は、まだ、決まっていません。
でも、今年も上がる見通しであることは、動かないでしょう。
一方で、気になる調査も、出ています。
日本政策金融公庫が、7月14日に発表したものです。
仕入の値上がりを感じる中小企業の半数近くが、
価格に転嫁できていないそうです。
転嫁できないまま、人件費だけが、また上がっていく。
正直、しんどい構図だと思います。
だからこそ、使える制度は、遠慮なく使ってほしいんです。
復習は手短に。問題は「締切」の場所です
まず、前回のおさらいを、手短に。
復習 ― 業務改善助成金って、こんな制度でした
① 事業場内でいちばん低い時給を、50円・70円・90円のどれか以上、上げる
② あわせて、生産性が上がる設備などを、入れる
③ その費用の、最大で5分の4 ・ 最大600万円が、戻ってくる
最大5分の4になるのは、いまの時給が1,050円未満の場合です。
1,050円以上の場合は、4分の3になります。
上限額は、引き上げる額と、人数で変わります。
最大600万円は、90円コースで10人以上、といった場合です。
細かい金額は、必ず、最新の交付要領でご確認くださいね。
さて、ここからが、今日の本題です。
この助成金の締切は、少し、変わった決まり方をします。
今年のカレンダー ― 締切は「発効日の前日」
・ 受付開始は、令和8年9月1日
・ 締切は「広島の最低賃金の発効日の前日」か「11月30日」の早いほう
・ 賃上げそのものも、発効日の“前日”までに完了(当日では対象外)
昨年の広島の発効日は、11月1日でした。
もし今年も同じなら、締切は10月31日になります。
そうなると、受付開始から、実質2か月しかありません。
しかも、国の予算がなくなれば、期間の途中でも受付が終わります。
これは、リーフレットにも、はっきり書いてあることです。
金額が決まってから考え始める会社は、まず、間に合いません。
夏休みのうちに宿題を終えた会社だけが、
9月1日の朝、スタートを切れるんです。3
松下幸之助は、大不況でも、給料を下げませんでした
とはいえ、賃上げはコストでしょう、
という声も聞こえてきそうです。
その気持ちに、ひとつだけ、
昔の話をぶつけさせてください。
昭和4年の暮れ、世界的な大不況のころの話です。
いまのパナソニック、松下電器製作所の販売は、
半分以下に落ち込みました。
倉庫は、売れない在庫の山だったそうです。
幹部たちは、従業員を半分に減らすしかない、と進言します。
病気で静養中だった創業者、松下幸之助さんの答えは逆でした。
生産は半分にして、工場は半日だけ動かす。
けれど、従業員はひとりも辞めさせず、給料も全額払い続ける。
その代わり、店員は休みを返上して、在庫の販売に全力をあげる。
従業員のみなさんは感激して、奮い立ったそうです。
わずか2か月後、在庫は売り切れ、工場はフル操業に戻りました。
パナソニックの公式の社史に、いまも残っているお話です。
ここからは、私なりの解釈です。
人と賃金を守る決断が、人を奮い立たせ、会社を強くした。
賃上げは、守りのコストではなく、人への投資なんです。
今年の賃上げを、やらされコストと嘆いて、終わるか。
人への投資に変えて、国から最大600万円をもらうか。
同じ賃上げをするなら、どちらの社長でありたいでしょうか。
記録が3時間から1時間に。実例は、こんなに身近です
設備で生産性なんて、うちには大げさな話だ。
そう感じた社長さんにこそ、実例を見てほしいんです。
どれも、労働局などが公表している、実際の事例です。
実例 ― 設備で、時間がこんなに浮きました
・ 介護記録のAIアプリ → 記録業務が、1日3時間から1時間に
・ 介護支援ソフト → 請求業務が、月16時間から8時間に
・ デジタルレントゲン → 現像作業が、10分から1分に
(埼玉労働局「医療、福祉の生産性向上の事例」より)
宿泊や飲食の現場でも、おなじことが起きています。
島根労働局の事例集には、こんな会社が載っています。
・スチームコンベクションオーブンで、仕込みが速くなり、作れる量が増えた。
・食器洗浄機で、洗い物の時間を、大きく減らせた。
・POSレジと自動釣銭機で、お客様の回転が良くなった。
厚生労働省のヒント集には、飲食業のA社の例もあります。
・設備の導入と、仕事の流れの見直しを、セットで進めた会社です。
・浮いた時間と利益で、時給100円の引上げを実現しました。
お気づきでしょうか。流れは、どの会社もおなじです。
設備で人がラクになり、浮いた時間が生産性になる。
その生産性が、時給を上げる原資になる。
この流れを自分の言葉で語れたら、それがそのまま計画書の背骨になります。
夏休みの宿題は、この6つです
では、具体的に、なにを用意しておくか。
当事務所版の、夏休みの宿題チェックリストです。
夏休みの宿題チェックリスト ― 業務改善助成金・準備編
宿題① 賃金台帳・労働者名簿・就業規則を、そろえる
→ うちの“いちばん低い時給”と、対象になる人を確定します(引上げで追い抜かれる人も含めて)
宿題② コース(50円・70円・90円)と、人数を決める
→ 賃上げは、ずっと続く人件費です。上限額とのバランスを試算します
宿題③ 設備を選んで、相見積をとる(最優先)
→ 見積は相見積が原則。いちばん時間がかかるので、いちばん先に
宿題④ 順番を守る ― 交付決定前の発注・購入・支払は、全額対象外
宿題⑤ 直近の決算書類を、手元に(特例を使う場合の申出書用)
宿題⑥ 社労士さん・商工会に、相談の予約を入れる
とくに急いでほしいのは、宿題③の相見積です。
機種選びと合わせると、これがいちばん時間を食います。
この設備で、どう時間が浮いて、どう賃上げの原資になるのか。
その説明を考えることが、宿題③のほんとうの中身です。
宿題④は、前回もお話しした、いちばんもったいない落とし穴でしたね。
よかれと思って先に買うと、ぜんぶ対象外になります。
そして最後に、前回白状したことを、もう一度だけ。
この助成金の申請書づくりと提出代行は、社労士さんの独占業務です。
行政書士の私は、お引き受けできません。
私の役目は、制度を知らせ、準備を手伝い、社労士さんへつなぐこと。
入口の交通整理が、私の持ち場です。
宿題の段取りや、資金繰りの全体の絵なら、いっしょに描けます。
9月が近づくと、社労士さんの予定も、混み合ってきます。
宿題⑥の相談予約だけでも、この夏のうちに、どうぞ。
受付開始は、9月1日。
宿題を終えた会社から、スタートを切れます。
だから、夏休みのうちに。
おわりに ―― 最終日に、泣かないために
夏休みの宿題を、最終日に泣きながら片づけた思い出は、誰にでもあると思います。
子どもの宿題なら、それも笑い話で済みますよね。
でも、この宿題には、最大600万円がかかっています。
目安が見えてくるのは、早ければ明日。
広島の金額が決まるのは、おそらく、夏の終わりごろです。
決まってから動くのでは、正直、間に合いません。
どうせ上がる最低賃金なら、人への投資に変える。
そして、“もらえる形”にしてから、上げる。
その段取りこそが、この夏の宿題です。
まずは、宿題⑥の、相談の予約から。
ひとつ終わるたび、気持ちも軽くなりますから!

