
今年の1月、こんな発表がありました。

去年一年で、介護の事業者が176件も倒産したそうです。
過去最多です。
人手不足が、いよいよ待ったなしのところまで来ています。
だから今、国も県も「介護テクノロジーを入れましょう」と、後押ししています。

ところが、です。
機械を入れた現場の、ちょうど半分は、
「楽になった」と感じていないんです。
せっかく補助金で入れた機械が、倉庫で眠っている。
そんな話も、よく聞きます。
今日は、その「なぜ」の話を書きたいと思います。
機械を入れても、半分は「楽にならない」
公表されているデータでは、
見守りセンサーや記録ソフトを入れて、
「負担が軽くなった」と実感できたのは、全体でおよそ半分でした。
家を訪ねる在宅の介護では、4割ほど。
半数以上が、効果を感じられていません。

介護テクノロジーを入れて、「負担が軽くなった」と実感できた現場
全体で … およそ半分(49.4%)
在宅で介護をするサービスでは … 4割ほど(41.9%)
介護ロボットを“毎日”使っている事業所 … わずか2%台
(令和6年度公表 介護労働実態調査ほか)
労働省ですら、「買ったのに、うまく使えていない例が多い」と、認めています。
広島・尾道の、ある特別養護老人ホームの責任者は、正直に、話していました。
「視察で、いいと思って入れた機器が、倉庫行きになったことがある」と。
機械は、入れただけでは、何も変えてくれない。まずは、ここが出発点です。
でも、ちゃんと変わった現場はあります。
では、うまくいった現場は何が違ったのか。
具体的に見てみます。

【神戸・特養 六甲の館】
夜の訪室 1人あたり 6.3回 → 3.7回
夜勤の“手が空く時間” 99分 → 204分
入浴の介助 8人 → 4人
【沖縄・特養 千尋会】
夜の訪室 1日 260回 → 230回
残業 月に2〜3時間 減
【東京・特養 砧ホーム】
3年連続で、辞めた職員ゼロ
介護の事故 約6割 減
神戸の六甲の館では、夜勤の駆け回る時間が減って、2倍の余裕が生まれました。
沖縄の千尋会の事務長さんの言葉が、鍵となります。
「『何かあってからでは遅い』という不安から、決められた回数以上に見回っていた」と。
機械は、その夜どおしの不安を、肩代わりしてくれました。
東京の砧ホームでは、3年続けて辞める人がゼロになりました。
施設長の言葉も、鍵となります。
「効果は、あるものではなく、出すもの」。
明暗を分けたのは、機械じゃない
うまくいった現場と、倉庫で眠らせてしまう現場。
その差は、機械の性能ではありませんでした。
さきほどの、広島・尾道の特養です。
ここは、9つもの機器を、一度に入れました。
そして、わずか2か月たらずで、
夜の決まった見回りをゼロにしています。

何をしたと思いますか?
役職のないふつうの介護職員さんを、「DX委員長」に抜てきしたんです。
そして、週に1回たった15分。
現場の小さな困りごとを、ひとつずつ片づけていきました。
派手な最新機器より、地道な対話。
「誰の、どの時間を、どう楽にするのか」を、
現場のみんなで決めていったんです。
機械は、きっかけにすぎません。
最後に現場を変えるのは、やっぱり、人です。
補助金で機械を購入するだけではダメ!
こうした、人による取組が必要だと思います。
これは、私の反省の話です
私も以前は、機械さえ導入すれば、問題解決出来ると思っていました。
「補助金が出ますよ。いい機械を、入れましょう」と。
でも、入れたあと、その機械が現場でどう使われているか。
私は、ちゃんと見ていませんでした。
倉庫で眠る機械の話を聞くたびに、自分の浅さを思い知らされます。
補助金を、取って終わり。機械を、入れて終わり。
それでは、せっかく補助金で機械を導入した意味がありません。
広島県のこの補助金は、その点が非常によく考えられています。

補助金を受け取るためには、以下を行う必要があります。
・どのように設備投資を活かすか、研修で学ばないといけません。
・そして、運用後に設備が活かせるよう、コンサルティングを受けられます。
・そして、どれだけ楽になったかを、県に定期的に報告するように義務づけています。


私は、このやり方は他の業界の方にも使えると思います。
上述の広島・尾道の特養の事例も含めると、以下の通りです。

・現場の「いちばんつらい時間」を、職員さんみんなで書き出す
・「人を減らす」でなく「空いた時間で何をするか」を、先に決める
・職員さんをDXリーダに据え、巻きこむ
・大きく構えず、小さな事から、一つ一つ進める
・「使われているか」「楽になったか」を、数字で確かめる
・設備の使い方を、まずよく学ぶ
・導入後も使い方を、学び続ける
当たり前かもしれませんが、せっかくの投資を上手くいかせるには、
こうした地道な取組が、何よりも大切と思います。
そして、導入の支援を行う私は、常に覚えておこうと思います。
出典 参照したURL
・介護事業者の倒産176件(東京商工リサーチ): https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202283_1527.html
・訪問介護の倒産91件(東京商工リサーチ): https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202280_1527.html
・日本経済新聞「介護事業者の倒産、2025年は176件で過去最多」: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA091U70Z00C26A1000000/
・介護労働実態調査(公益財団法人 介護労働安定センター): https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
・同調査の解説(介護ニュースJoint): https://www.joint-kaigo.com/articles/39833/
・介護ロボットの効果的な導入支援に関する調査研究事業(厚生労働省): https://www.nttdata-strategy.com/services/lifevalue/docs/r05_105_01jigyohokokusho.pdf
・神戸・六甲の館の事例(福祉新聞): https://fukushishimbun.com/jinzai/38038
・沖縄・千尋会の事例(ResorTech Okinawa/介護ロボットONLINE): https://www.resortech.okinawa/news/case-study/chihirokai/
・東京・砧ホームの事例(江戸川区DX応援隊): https://www.city-edogawa-dx.jp/interview/page04.html
・広島・尾道 星の里の事例(介護ニュースJOINT): https://www.joint-kaigo.com/articles/46360/
・広島県「介護テクノロジー定着支援事業」実施要綱PDF: https://www.fukushiyogu-hiroshima.jp/wp-content/uploads/2026/05/00-youkou_2026.pdf
・同 申請窓口(日本福祉用具供給協会 中国支部 広島県ブロック): https://www.fukushiyogu-hiroshima.jp/tec_support_2026/
・同 広島県公式ページ: https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/64/kaigotechnology2026.html

