山田五郎さん、心よりご冥福をお祈りいたします。

先日、山田五郎さんがお亡くなりになりました。
心よりご冥福をお祈りいたします。
思えば、昔の日本は幸せでした。
なぜなら、お手本となる大人がいたからです。
私が小さな頃は、粋を大切にする大人が沢山いました。
尊敬できる大人が、沢山いました。
大人だから知りうる、知識・教養・文化を、
笑いとユーモアという、上品なコーティングで包み
届けてくれる素敵な大人がいました。
その筆頭格は、山田五郎さんでした。
現代のテレビでは、昨今の不景気による低予算化のためか、
このような知識・教養・文化を大切にするテレビ番組が、
ほとんど失われてしまいました。
そのような中、山田五郎さんがYouTubeにて、
山田五郎 オトナの教養講座をはじめて下さいました。

この番組は、最高の知的エンターテイメントでした。
私はこの番組が大好きで、いつも最新話を心から楽しみにしていました。
何気なく目にしていた名画に、
このような背景やストーリーがあるのか!など、
目から鱗がおちる体験を、幾度となくさせていただきました。

山田さんの最後の授業「メメントモリ」

大変残念ではありますが、山田さんの最後の授業となってしまいました。
そしてその題材は、山田さんらしい「メメントモリ」です。
メメントモリ、とは「死を忘れるな」、
「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」という警鐘です。
古来幾度となく、芸術作品のモチーフとして広く使われてきました。
右の絵画には、以下の様な意味が込められています。
天秤の先に描かれた、二つの服。
左の服は、金持ちの衣服を意味します。
右の服は、貧しい服の衣服を意味します。
その両方がドクロの前で釣り合う。
これは、富める者にも、貧しい者にとっても
死の前では、平等であり、
死の前では、無力であることを意味します。
そして、財を追い求めることのむなしさや、
財を誇ることを戒めることを伝えようとしています。


さらに山田さんは、花瓶に活けられた花を、こう解説してくださいました。
絵は、ぱっと見ると、美しい花々の絵にしか見えません。
しかしよく見ると、花や葉は虫に食われ、
花瓶の下には、朽ちた花や葉が散らばっています。
これは、ヴァニタス:「人生の空しさの寓意」を表す静物画であり、
美しいものもいつかは朽ちていく、
絵画を通じて虚栄のはかなさを喚起する意図を持っていました。

山田さんは、このような死生観は西洋だけでなく、日本にもあること。
例えば以下の、九相図をその代表例として挙げられました。
九相図は、仏教絵画です。
美しい女性が、死と共に段階的に腐敗し、最期は塵となる。
この過程を、9段階に図解化し、
肉体への執著や、美なる対象に対する貪りの念を、
除こうとする教訓的な絵画です。


山田五郎さん、ありがとうございます。

私は、このような人生哲学を、美術史や世界史とともに、
ときにユーモアと交えて、軽快に教えてくださる、
山田五郎さんが、心から大好きでした。
今後、山田さんの動画の最新作が見ることが出来ないのが、
悲しくて悲しくてたまりません。
山田さんは最後の授業で、このようにおっしゃっていました。
まず、講義のテーマである、「メメントモリ:死を忘れるな」の意味。
死を前にしては、貧しいものも、富めるものも等しく無力であること。
そして、健康を大切にすること。
さらに、5年間の動画を通じて、伝えたかったこと。
「少しでもね、みんなが絵を見ることを楽しんだり、
なんて言うのかな、世の中、本当にお金じゃねえよ、
ということを学んでいただけたら嬉しいなと思います。」
冒頭にも述べましたが、最近は、お手本となる大人が少なくなりました。
お金、家、車などの、目に見えるものだけに重きをおき、
文化、芸術、文学など、
目に見えない精神性の価値を教えてくれる大人が、
極めて少なくなりました。
食べる、寝る、異性との交流など、
動物でも出来る快楽を追求し、
絵画を鑑賞する、音楽を愛でる、文学を味わう、などの
人間しか出来ない知的娯楽。
これらの楽しさを教えてくれる大人が、
ほとんどいなくなりました。
私は、とても山田五郎さんほどのことが出来るとは、
到底思いません。
しかし、職業訓練的な学びだけではなく、
絵画・音楽・文学へ関わり続けることで、
子どもたちに、それらの面白さや、
メメントモリのように、いつの時代でも変わらない人生哲学を、
楽しく、ユーモアを込めて伝えることができる、
素敵な大人になりたい、と強く思います。
山田五郎さん、本当にありがとうございました。
あなたのおかげで、私ははじめて、絵画や芸術の面白さを知りました。
そして、芸術家が時に命をかけて、
何を伝えたかったのか、
その真意を初めて知ることが出来ました。
私は、あなたが命をかけて教えてくださったこと。
「メメントモリ:死をわすれるな、決して驕り高ぶるな」を、
決して忘れません。生涯の教訓として胸に刻んでいきます。
重ね重ね、本当にありがとうございました。
https://www.youtube.com/watch?v=DMe_hWiAp50&t=590s

