怒りの原因
2日前、
「生まれてこの方、こんなに人を憎んで文章を書いたことはありません。
いかなる理由があっても許せない。熊本の地震について思うこと。」
というブログを書きました。
https://office-takasugi.com/archives/3117
【概要】
地震直後、無事に生存を確認出来た社員に、
非常に危険の伴う店内に戻るよう指示し、
結果として社員の命が、失われました。
それにとどまらずこの会社は、
この件に対する取材を、拒否しました。
この対応に対する激しい怒りを、
ブログの記事にしました。

顛末

激しい怒りを感じたのは、
私だけではなかったようです。
インターネットで、会社の特定作業が行われ、
すぐに会社が、株式会社ハビタ(同仁グループ)であることが明らかになりました。
そしてその情報は、瞬く間にネットに拡散し
Googleマップの口コミは、激しく炎上しています。
ネットスランクで、デジタルタトゥーという言葉があります。
これは一度ネットに刻まれた情報は、二度と消えないという意味です。
この会社は、人命より、金を重んずる会社である、
という印象を消すのは、容易なことではないと思います。
こうしたネット上の動きを見て、逃げられないと観念したのか。
ようやく謝罪会見をするに至りました。
会社の対応はどのようなものだったか

社長が表に出て謝罪をしたという段階で、
この問題について、一定の制裁を加えたと、
溜飲を飲まれた方も多いかもしれません。
しかし、私はそうは思いません。
マスコミの報道を見ると、
この会社の対応には、2つの不可解な点があります。
一つは、戻れるものなら戻ってほしいと、
戻る判断を、従業員の判断に委ねたような、発言があることです。
もう一つは、イオンの方の指示を仰いで店舗に戻るように指示したと、
その判断の是非を、イオンの方に委ねたかのような発言があることです。
これは事実かどうかは分かりません。
ただ私には、少しでも自社の責任を回避するために、
・ 強制的に会社が社員に戻れと命じたわけではない、
・ 本人やイオンにも、一定程度の責任がある、
という、言い逃れをしているように聞こえます。
また、ネット上の情報のため、真偽のほどは明らかにありませんが。
地震発生から謝罪会見までの間に、
社長個人の情報や会社の情報を、一定程度削除する動きがあったと言われています。
謝罪会見をしたものの、
会社の対応に好意的な印象を持つ者はほとんどなく、
火に油を注ぐ結果となっているのが現状です。
この会社の対応から私たちが学ぶこと

この会社の対応から私たちが学ぶことは、たった一つです。
言い訳をしないこと、ごまかさないこと、
ただ誠実に謝罪することです。
誰かのせいにしたりすることは、さらなる怒りを招きます。
ましてや責任転嫁の対象が、死人に口なしの死人であるとするならば、
謝罪は機弁であり、形式的なものであるとの疑いを招きかねません。
さらに、謝罪前に情報を隠蔽などと言う姑息な行為は、
本来は隠し通すつもりでいたが、
隠し通せなくなってしまったので、仕方なく謝った、という印象を与えかねません。
私が考える最善の対策は、
① 事故後、直ちに記者会見を開く。
➁ 判断が誤りであったことを、誠心誠意謝る。
③ ご家族の方に、できる限りの償いをすることを誓う。
の3つを、心を込めて行う事です。
ゆめゆめ、言い逃れやごまかしを行うなど、考えてはいけないと思います。
ビジネス史上、最も優れた危機対応ジョンソン・エンド・ジョンソン「タイレノール事件」
ビジネススクールで必ず学ぶ、
最も有名で優れた危機対応として、
ジョンソン・エンド・ジョンソン社の「タイレノール事件」があります。
タイレノール事件に学ぶ「危機対応」

■ 一言でいうと
「自社に不利な情報でも、いち早く正直に公開し、
お客様の安全を最優先した会社は、最後に信頼を取り戻した」 という話です。
■ 何が起きたのか
- 1982年9月30日、アメリカ・シカゴ周辺で、
タイレノール(ジョンソン・エンド・ジョンソン社の看板商品である頭痛薬)を飲んだ人が、次々と亡くなるという事件が発生しました。 - 原因は「誰かが毒物を混ぜたのか」「工場の製造過程に問題があったのか」も、
その時点ではまったく分かりませんでした。 - 会社は一気に社会からの信頼を失い、倒産寸前まで追い込まれます。
■ 会社はどう動いたか
① 経営トップが方針を即決した
当時の社長は、7人の緊急チームをつくり、こう指示しました。
まず「お客様を守る方法」を考える。
「商品をどう救うか」はその次だ。
順番を間違えなかったこと。ここが最大のポイントです。
② 隠さず、すぐに公表し、自主回収した
- 「うちに責任はない」という言い逃れを一切しませんでした。
- すぐにマスコミを通じて「タイレノールを絶対に飲まないでください」と、全米に警告しました。
- 自社の判断で、商品を回収しました(=自主回収)。
- 衛星放送での30都市同時放送、専用フリーダイヤルの設置(11日間で13万6千件の入電)、新聞の全面広告、テレビ放映など、当時考えられる手段をすべて使って情報を出し続けました。
- 記者から厳しく追及されても逃げず、誠実な対応を貫きました。
③ 二度と起こさない仕組みをつくった
異物を混入できないよう、「3層密封構造」という新しいパッケージを開発しました。これは今もアメリカの業界標準として使われ続けています。
■ 結果として
事件の本当の原因は、実は今でも明らかになっていません。
それでもこの一連の対応は「ビジネス史上最も優れた危機対応」と評価され、現在では世界中の経営者向けのお手本として学ばれています。
■ 私たちが持ち帰るべき3つの教訓

- 順番を間違えない — 守るべきは、まず「相手(お客様)」。自分たちの都合や体面は、その次です。
- 悪い情報ほど早く出す — 隠すと、後で必ずもっと大きな不信になって返ってきます。第一報は「分かっていないことは分かっていない」と正直に伝えて構いません。
- 謝って終わりにしない — 「同じことが起きない仕組み」まで作って、はじめて信頼は回復します。
危機管理の本当の難しさ
ただ難しいのは、頭で分かっていることと、
行動に移すのは別だということです。
この会社の社長上野景真氏は、ボストンコンサルティングの出身と言われています。
このような方が、タイレノール事件の危機管理のいろはを、ご存じないわけがありません。
つまり、この問題の本質は、
頭では分かっている。でも、危機管理が自分の事として降りかかってきたとき、
それを実行できるか、という点にあると思います。
これは、知識ではなく、覚悟の問題だと思います。
頭の問題ではなく、心の問題だと思います。
自分自身の覚悟が出来ているか、腹は据わっているか、
このことを、自らの問題として、自らに真剣に問いたいと思います。


