
今年の5月に、帝国データバンクが、こんな調査を発表していました。
去年1年間に、新しく生まれた会社は、15万6,525社。
3年連続で増えていて、2000年以降で、いちばん多い数だったそうです。
そして、起業した人の平均年齢は、48.9歳。
元気のいい若者だけの話じゃ、ないんですね。
会社勤めで経験を積んだ人が、
満を持して独立する時代になっています。
この記事を読んでくださっているあなたも、その一人かもしれません。
今日はこれから創業する方に、
知っておいてほしいお金の話をします。
創業融資、国の補助金、自治体の補助金、
そして、それらぜんぶの入口になる制度。
ここでひとつ、ヒヤッとするお話をします。
補助金は、待ってくれませんでした

広島県に、中山間地域で起業する人を応援する支援金があります。
「中山間地域課題解決型起業支援金」という、長い名前の制度です。
最大200万円、経費の2分の1まで。三次市を含む地域が対象です。
私は今週、この支援金をご紹介する記事を、書きかけていました。
「第2回の締切は7月29日です。もう2週間を切っています、お急ぎください」と。
公開する前に、念のため、もう一度だけ事務局のサイトを確認しました。
そこに、こう書いてあったんです。
「第1回の受付分で予算額に達したため、
第2回の公募は、実施しません」
広島県中山間地域課題解決型起業支援金・
事務局サイトの告知の趣旨(令和8年7月17日確認)
6月26日の第1回締切の時点で、今年のお金は、もう尽きていました。
7月29日に向けて準備していた人は、どうなるんでしょうか。
制度は、たしかにありました。予算も、たしかにありました。
でも、先に動いた人のところで、静かに終わっていたんです。
私がそのまま記事を出していたら、読者を空振りさせるところでした。
ぞっとすると同時に、これこそ伝えなきゃいけない、と思いました。
創業の支援策は、内容を知っているだけでは、足りません。
「どの順番で、いつ動くか」で、もらえる額がまるごと変わるんです。
創業準備の第一歩は、貯金でも物件でもありません

創業準備というと、何から始めるイメージがあるでしょうか。
自己資金を貯める。物件を探す。事業計画を練る。
どれも大事です。でも、それより先にやってほしいことがあります。
市役所と商工会議所に、電話をすることです。
「特定創業支援等事業を受けたいのですが」と、聞いてみてください。
特定創業支援等事業。これまた、お役所らしい長い名前ですよね。
かんたんに言うと、市区町村が認めた「創業の学校」です。
経営・財務・人材育成・販路開拓の4つを、1か月以上かけて4回以上学びます。
創業塾やセミナー、個別相談といった形で、商工会議所などが開いています。

修了すると、市区町村から「証明書」が1枚もらえます。
この紙、ただの修了証では、ありません。
創業支援の世界を歩くための、パスポートなんです。
【証明書1枚で、こう変わります】
1.会社設立の登録免許税が半額に
株式会社なら税率0.7%が0.35%へ。最低額でみると15万円が7万5,000円になります。
2.信用保証つき融資の申込みが、開業6か月前から
創業向けの信用保証は、ふつう開業2か月前から。それが6か月前に前倒しされます。
3.日本政策金融公庫の融資が「特別利率」に
創業融資の金利が、証明書の取得者向けの優遇利率になります。
4.最大250万円の補助金の「申請資格」がつく
持続化補助金〈創業型〉は、この証明書がないと申請自体ができません(次で詳しく)。
5.自治体独自の補助金・優遇の対象になることも 加点や対象化など、扱いは自治体によって変わります。
受講そのものは、無料か、ごく安い会費で受けられるところが多いです。
1か月ちょっとの学びで、この5つがまとめてついてくる。
私は、これほど割のいい「創業準備」を、ほかに知りません。
国の200万円 ― ただし申請できるのは「創業1年以内」だけ

さて、証明書のいちばん大きな使い道が、この補助金です。
小規模事業者持続化補助金〈創業型〉。国の、創業者向けの本命です。
チラシやホームページ、看板、機械。
売上をつくるための経費を補助してくれます。
【持続化補助金〈創業型〉第4回の要点】
補助上限200万円(インボイス特例+50万円で最大250万円)/補助率3分の2
申請受付:令和8年11月5日(木)〜12月15日(火)17時
商工会議所・商工会の「事業支援計画書(様式4)」の発行依頼は12月4日(金)まで
申請は電子申請(Jグランツ)のみ。GビズIDの取得も、お早めに
200万円の3分の2補助ですから、
300万円の販促投資が実質100万円になる計算です。
ここで、気をつけていただきたいことが、2つあります。
1つ目。さきほどの証明書がないと、そもそも申請できません。
「創業しました」という事実だけでは、入口にすら立てないんです。
2つ目。申請できる期間が、今年の公募から大きく縮みました。
以前は「創業3年以内」まで申請できました。今は「1年以内」です。
正確には、講座の支援を受けた日と開業日の両方が、公募締切から過去1年以内であること。
ネットには「3年以内」と書いた古い記事が、いまもたくさん残っています。
開業届を出した日から、時計は、もう回り始めているわけです。
なお、狭き門であることも、正直にお伝えしておきます。
第2回の公募では、3,220件の申請に対して、採択は1,225件でした。
3件に1件と少し。事業計画書の中身で、はっきり差がつく世界です。
だからこそ、商工会議所や専門家と、早めに組んだ人が強いんです。
創業融資 ―「自己資金ゼロでも借りられる」は半分ほんとう

次は、借りるお金の話です。開業資金の借入れの本命は、日本政策金融公庫です。
【日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」】
融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
創業者は、原則として無担保・無保証人
金利は、創業者なら原則0.65%引下げ 女性・35歳未満・55歳以上・特定創業支援の証明書取得者などは、さらに優遇の特別利率
昔あった「自己資金は10分の1以上」という決まりは、令和6年3月に廃止されました。
ですから制度の上では、自己資金ゼロでも申し込めます。
でも、審査の現場でいちばん見られているのは、いまも自己資金なんです。
正しくは、金額そのものより、通帳に刻まれた「貯め方」です。
毎月コツコツ積んできた履歴は、あなたの計画性と本気度の、何よりの証拠になります。
逆に、申込み直前にポンと振り込まれた「見せ金」は、すぐに見抜かれます。
貯金が要らなくなったのではなく、貯金の「過程」が審査されるようになった。
「自己資金ゼロでもOK」の正しい読み方は、これだと私は思っています。

それから、広島県と三次市にも、創業者向けの低利の融資があります。
【広島県・三次市の創業融資(制度融資)】
広島県 創業支援資金:限度額3,500万円・固定金利 年0.8〜1.7%(期間・資金使途による)
三次市 創業支援資金融資:限度額3,000万円(市内で創業後1年未満の方)
三次市は、これらの融資の信用保証料を全額補助(上限50万円)
保証料の全額補助は、地味に見えて、じつにありがたい制度です。
数十万円かかることもある保証料が、上限50万円まで戻ってくるんですから。
そして、ここでも②の証明書が効いてきます。
信用保証の申込みが開業6か月前からできると、
物件契約や内装工事の資金繰りに、余裕が生まれます。
開業したら、地元の補助金も忘れずに
開業したら、地元の補助金も忘れずに
国と県だけじゃなく、市町村にも創業者向けの補助金があります。
地元・三次市には、たとえばこんな制度が用意されています。
【三次市の創業関連補助金(例)】
起業支援事業補助金:事務所の整備費・広告料の2分の1以内、上限100万円
空店舗出店支援事業補助金:改修費等の2分の1以内、上限100万円+家賃の2分の1(月5万円まで)×12か月
新規開業支援事業補助金:開業90日以内の広告宣伝費の2分の1以内、上限20万円
ここでも、注意していただきたいことが2つ。
ひとつ。どの制度も、市の交付決定より前に契約や工事を始めると、対象外になります。
「先にやってしまった分もください」は、補助金の世界では通りません。
もうひとつ。今年度の募集状況が、ページから読み取れない制度があります。
①の支援金のように、予算には限りがあります。
申請前に、必ず商工観光課へお電話を。
三次市以外にお住まいの方も、考え方は同じです。
お住まいの町の商工窓口に「創業者向けの補助金はありますか」と、
一度聞いてみてください。
家賃補助や改装費の補助は、意外なほど、あちこちの町にあるんです。
動く順番は、こうです

最後に、今日の話を「動く順番」に並べ直しておきます。
【これから創業する人の、5つの順番】
1.開業の半年〜1年前:市役所・商工会議所に電話
特定創業支援等事業(創業塾など)に申し込みます。1か月以上かかるので、ここが起点です。
2.講座と並行して:自己資金をコツコツ積む
毎月同じ日に、同じ額を。通帳の履歴そのものが、融資審査の味方になります。
3.開業3〜6か月前:創業計画書を作り、融資を申し込む
公庫と、県・市の制度融資。証明書があれば、保証の申込みは6か月前から動けます。
4.会社をつくるなら:証明書を添えて設立
登録免許税が半額になります(登記の手続きそのものは、司法書士の出番です)。
5.開業から1年以内:持続化補助金〈創業型〉へ
次の受付は11月5日から。あわせて、市町村の補助金も窓口で確認します。
お気づきでしょうか。5つのうち4つまでが、開業「前」の話なんです。
開業してから調べたのでは、間に合わないものが、こんなにあります。
おわりに

起業する人が過去最多と聞くと、追い風の時代に思えます。
でも、支援のお金は、起業する人の数に合わせて増えてはくれません。
前述の支援金のように、先に動いた人のところで、静かに終わっていきます。
創業準備は、貯金からじゃ、ありません。
市役所と商工会議所への、電話からです。
お金はかかりません。失うものも、何もありません。
その1本の電話が、7万5,000円の節税と、金利の優遇と、
最大250万円の申請資格につながっています。
……と、さんざん「早く、早く」と急かしてきましたけれど。
急いでいただきたいのは、手続きの段取りだけです。
商売の中身のほうは、どうか、じっくり育ててください。
焦って開けた店より、仕込みに時間をかけた店のほうが、長持ちしますから。
何かのお役に立てたら、うれしいです。

