AIをよく使う人ほど、週の残業時間が長い傾向にある-「業務は効率化した」91.6%。なのに「残業が減った」は29.2% ―その差は、どこへ消えたのでしょうか。AIにより楽になるはずが、楽になっていないのはなぜ?(前半)

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先日、「AI活用するほど残業多い傾向、
労働負荷軽減は道半ば 経財白書が指摘
経財白書にみる成長の死角③」
という日経新聞の記事が出ました。

AIを使えば、仕事が楽になるはず。
それなのに、逆に残業が増えた?
どういうこと?

との疑問から、色々と調べました。

そうしますと、絶対に知っておいた方が良い、
とても大事な発見
がありました。

そのため、2日に分けて書きたいと思います。

「AIを使うほど、残業が長い」と、白書が書きました

記事のもとになったのは、白書です。

内閣府が7月24日に出しました。
令和8年度の、年次経済財政報告です。

その第2章の第2節に、こうあります。

AIをよく使う人ほど、週の残業時間が
長い傾向にある、というものです。

もとの調査も、確かめてみました。
パーソル総合研究所が、今年2月に
公表した、3,000人への調査です。

そこには、こんな数字がありました。

生成AIを使った仕事にかかる時間は、
平均で16.7%減っていました。
週にすると、26.4分の短縮です。

ところが、話はここからでした。
「業務時間を短縮できた」と答えた人。
それは、25.4%しかいませんでした。

4人のうち、3人は減っていない。

作業は、たしかに速くなっています。
でも、帰る時間は変わっていない。

同じことが、別の調査にも出ています。

「効率は、良くなった」「時間は、減っていない」
作業の負担が軽くなった
作業の効率が良くなった 91 厚生労働省の調査(効果があった事業所)
労働時間が短くなった
休暇・休日が増えた 25 同じ調査・同じ事業所に聞いた答えです

※厚生労働省「労働経済動向調査」(令和8年2月1日現在)より。
AIを導入している事業所は全体の31%で、そのうち78%が「効果があった」と答えています。
上の91%・25%は、その「効果があった」事業所への複数回答です。
なお、この調査の対象は常用労働者30人以上の事業所です。



業の負担は、9割が軽くなった。
でも、時間が減ったのは4分の1。

情報処理推進機構の調査も同じです。
先月16日に公表されたものです。

「業務が効率化した」 91.6%「残業時間の削減につながった」 29.2%

効率化した会社の、およそ7割で、
残業は減っていない、ということです。

ここで、ひとつ大事なことを書きます。

白書は、AIのせいで残業が増えると
書いているわけではありません。

そういう傾向がある、というだけです。
原因までは、書かれていないんです。

では、消えた時間は、どこへ行ったのか。
そこを、今日は考えてみます。

「速くなった」という感覚が、当てになりませんでした

海外に、おもしろい実験があります。

METRという研究機関のものです。
去年の7月に、公表されています。

腕のいい技術者、16人を集めました。

自分の担当してきた仕事について、
平均5年の経験がある人たちです。
246個の作業をやってもらいます。

AIを使ってよい作業と、だめな作業。
それを、くじ引きで割りふりました。
そして、実際の時間を測りました。

やる前の予想やったあとの体感実際に測った結果
24%
速くなるはず
20%
速くなった
19%
遅くなっていた

※METR「Measuring the Impact of Early-2025 AI on Experienced Open-Source Developer Productivity」(令和7年7月10日)より。
ただしMETRは令和8年2月24日に続報を出し、この実験の設計を見直しています。「AIを使えば遅くなる」という話ではなく、「速くなったかどうかを、本人は正しく測れなかった」という話として読んでください。

やる前は、24%速くなると思っていた。
終わったあとも、20%速くなったと。

ところが、実際に測ってみたら、
19%、遅くなっていたんです。

腕のいい人たちが、そろってです。

研究機関は、こう言っています。
人は、AIが自分に与えた効果を、
平均で40ポイント高く見ていた、と。

私は、この数字にどきりとしました。

速くなった気がする、というのは、
速くなった、という意味ではない。
実際に早くなってはいない。

誰かの1分が、隣の人の1時間56分になっていました

もうひとつ、別の角度の調査です。

アメリカの研究所と、スタンフォード大学が、
去年の9月に発表しました。
働く人1,150人に聞いたものです。

調べたのは、こういう成果物です。

見た目は、きれいに整っています。
でも、中身が薄くて、仕事が進まない。
AIが書いた、体裁だけの資料です。

この1か月で受け取った人が、約4割。
そして、ここからが問題なんです。

受け取った人は、その1件を直すのに、
平均で1時間56分を使っていました。

送った人は、10分で作ったはずです。
受け取った人が、2時間かけている。

会社全体で見れば、増えていますよね。



調査には、こんな声がありました。

質の低い成果物を受け取ったせいで、私は多くの時間を無駄にしました。
しかも、それを渡してきたのが上司だったので、
「品質が低いので作り直してください」とは、言い出せませんでした。
― 調査に答えたプロジェクトマネージャーの声(研究所の公表資料より・私なりに訳しました)


この一言が、いちばんこたえました。
日本でも、同じ声が出ています。

帝国データバンクの調査に、こうあります。

「上長の確認と検証に手間がかかるようになった」
という企業の声です。

作る時間は、たしかに減りました。
でも、確かめる時間が増えたんです。

明日に続きます

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