
本日、悲しいお知らせが、流れてきました。
セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の、鈴木敏文さんが、ご逝去されました。
享年93歳。日本にコンビニという業態を、根づかせてくださった、
まさに、生みの親でいらっしゃいました。
心から、ご冥福を、お祈り申し上げます。
訃報に接しまして、私は、ふと、大学時代の、ある授業を、思い出していました。
今日は、その思い出と、そこから感じたことを、書かせてください。
ふと、大学の授業を、思い出しました

それは、たしか、経営学の授業だったと思います。
先生が、教室の前に立って、私たちにこう問いかけられました。
「セブン-イレブンは、なぜ、こんなに強いんでしょうか」
ある学生は、「食べ物が、美味しいから」と答えました。
別の学生は、「便利な場所に、お店があるから」。
私も、心の中で、それらしい答えを、いくつか思い浮かべました。
ところが、先生のお答えは、まったく、ちがいました。
セブンが強い、ほんとうの理由は——
情報を、徹底的に、活用しているからです。
これには、正直、ハッとさせられました。
「商品」でも、「立地」でも、「ブランド」でもない。
答えは、「情報」でした。
教室のだれもが、不正解でした。
鈴木さんが、世界に先駆けて、はじめられたこと
そのカラクリをお作りになったのが、ほかでもない、鈴木敏文さんでした。
昭和49年、東京・豊洲に、わずか25坪の小さなコンビニ第1号店を、開かれました。
そして昭和57年。
鈴木さんは、世界に先駆けて、POSのデータをマーケティングに活かす、
いわゆる「単品管理」という発想を、はじめられました。

「POSって、なんですか」と思われた方も、いらっしゃるかもしれません。
ざっくり申し上げると、
レジで「いつ・どんなお客さまが・なにを・いくつ」買われたかを、ぜんぶ記録する仕組みです。
それを、ただ集めるだけでは、ありません。
「次は、なにを、どれくらい、棚に並べるか」を、仮説を立てて、検証していく。
売れない商品は、思い切って、棚から外す。
売れる商品は、もっと深く、もっと細かく、磨き込んでいく。
情報の使い方ひとつで、
商売は、ここまで、変わる。
それをご証明になったのが、鈴木さんなのです。
そして、現在のセブンは、さらに先を、行っています。
国内コンビニ業界では初めて、店舗のシステムをまるごと、クラウドに移されました。
令和7年の春から、国内およそ2万1千店舗に、順次導入。
年内には、すべての店舗で、稼働する見込みだそうです。
なにが、すごいのか。
およそ2,800品目について、
「この時間帯には、これが、これくらい売れる」を、AIが予測してくれるそうです。
食品ロスは減り、売り切れも減る。
鈴木さんが播かれた「情報を、徹底活用する」という小さな種は、いま、
AIという、大きな実を、結ぼうとしています。
ところが、日本全体は——
ここから少し、耳の痛い話を、書かせてください。
私は、事業経営にとって、もっとも大切なものは、情報だと思っています。
ところが、日本は、なぜか、情報を、あまり大切にしてこなかった国なんです。
たとえば、です。
アメリカのCIA、イギリスのMI6、イスラエルのモサド、ドイツのBND——。
主要国はみな、国家直轄の本格的な対外情報機関を、持っています。
でも、日本には、ありません。
そして、目を、ご自分の会社に、移してみてください。
中小企業で、データを本気で活かしていらっしゃる社長さま、
どれくらい、いらっしゃるでしょうか。

たしかに、昔は、人材も、ハードも、ソフトも、ありませんでした。
数十万円する分析を、頼める余裕も、なかった。
でも、いまは、ちがいます。
安価で、高性能なAIが、すでに、私たちの手の中にあります。
以前なら何十万円もしたような分析が、いまは、AIで、誰にでも、できる。
だとしたら、データ活用は、もう、技術や予算の問題ではないと思うんです。
データ活用は、もう——
「やるか、やらないか」、それだけの問題。
お客様の数が、大企業よりずっと少ない、私たち中小企業だからこそ。
お一人お一人が、なにを望んでいらっしゃるかを、
もっと深く、考えなくては、いけないのではないでしょうか。
では、自分は、どうなのか
ここで、立ち止まって、自分自身に、問いかけてみました。
「えらそうに、語ってきたけれど、お前は、ちゃんと、できているのか」。
正直に、申し上げます。
十分に活用できて、いません。
データ活用が大事です、と、
申し上げながら——
私自身、十分には、
自分の経営に活用できていません。
お客様お一人お一人が、本当はなにを望んでいらっしゃるか。
私は、もっと深く、データから読み取れるはずなのに。
まだまだ、勘や経験に、頼っている自分がいます。
だから、決めました。
まず、私が、自分自身を、実験台にします。
AIを使って、どんな分析が、どんなふうにできるのか。
どう使えば、お客様にとって、ほんとうに役立つのか。
徹底的に、試してみます。
失敗も、たくさんすると思います。
でも、そこで得た知見を、ご縁をいただいた社長さまに、
惜しまずに、お伝えしていきたい。

それが、鈴木さんが教えてくださった
「情報を、徹底活用する」という教えに対する、
私なりの、お返しだと思っています。
鈴木敏文さま、本当に、ありがとうございました。
コンビニエンスストアを、日本を代表する産業に育てていただき、
商売において、情報がどんなに大切かを教えていただきました。
改めて、心から、ご冥福を、お祈り申し上げます。

